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クラス全員異世界転移したのに俺だけ遅刻した〜腹黒王女からクラスメイトを取り戻せ!〜  作者: 大橋 仰
スイマー 水野操(ミズノ ミサオ) 編

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レーザービーム

 ミサオマイが、カケルたちの元へ駆けつけた。


 遅れて、倉庫地区の周りにいた男たちもやって来た。


「ウミボーズをやったのはアンタたちなのか!?」

 ひとりの男が興奮気味に叫んだ。そして——


「あれはスキル『水成すいせい』じゃないのか? 昔、水の聖女様が使ってるのを見たことあるんだ…… あれ? そこで寝ている人、聖女様じゃないのか」


 そう言って、聖女セイレーンの元に駆け寄ったその男がひと言。


「…………酒クサ」


 まあ…… 聖女サマは、結構呑んでたみたいだし……


「おい、この呑んだくれが聖女様なのか!? なんだか今にもゲロ吐きそうな顔してるぞ?」


 本当だ。さっきまで気持ちよさそうに眠っていた聖女サマ。

 今は青白い顔をして、苦しそうだ。


「委員長、非常事態だ! 直ちに退避を!」

 カケルが叫んだ。


 カケルの言葉を聞いた委員長は——

「皆さん、あの…… この子は私の友人で、聖女様によく似た、どこにでもいる普通の…… ああ、ダメだ、何も思いつかない! 私にはお笑いのセンスがないわ! と、とにかく、私たちは用事がありますので!」

 そう言って、委員長は聖女サマを背負って走り去った。

 どうやら委員長は、ボロモーケの街にいたオモシロ神官コゼニスキーから、悪い影響を受けてしまったようだ。


 とにかく…… 今は委員長の背中が大惨事に見舞われないことを祈るばかりだ。




 おっと。倉庫地区にいた男たちが、まだ何やら話を続けているようだ。


「あれ、絶対、聖女様だよな」

「聖女様以外、あんな攻撃できっこないぞ」

「おい…… 聖職者があんなに呑んだくれていいのか?」


 別に聖女サマだって、酒ぐらい飲むだろうに。


 男たちの会話はまだ続く。

「なんだよ。教会の連中は、いっつも俺たちに、禁欲だとか清廉だとか求めて来るくせに」

「まったくだ。ひょっとして、神官の連中は俺たちが寄付した金で、ヘベレケになるまで酒を飲んでるのか?」

「まったく…… 何を信じていいのやら」


 これはマズイぞ。聖女サマのちょっとした冒険心のために、真面目な神官のみなさんまで、誤解を受けてしまうではないか。


 さて、どうしたものかとカケルが頭を悩ませていたところ——

 一人の男が口を開いた。

「聖女様以外にあんな攻撃が出来る人間なんて、もしいるとしたら勇者様ぐらいだろうな」


 その言葉を聞いた操。

「仕方ない」

 と、ひと言つぶやいた。

 そして——


「あっはっはー、私はー、異世界から来たー、勇者だー」

 なんだコレ? スッゲー棒読みで、操が自己紹介を始めた。


「え? ミサちゃん、なに言ってんの?」

「舞はちょっと黙って」

「わかった! ちょっと黙る!」


「私のスキル『水操すいそう』でー、あのモンスターをー、やっつけたのだー」


「ひ、ひょっとして、カンソーンの村におられるという、あの勇者様ですか?」

 ひとりの男が驚いた顔で声を上げた。


「そーだー」


 どうやら、操は聖女サマのために、一芝居打ってくれたようだ。

 ただ、芝居については壊滅的に下手くそだったが……


「やっぱり、あんな呑んだくれが聖女様なわけないよな」

「まったくだ。聖女様は神聖にして高潔なお方なんだから」

「俺、本物の聖女様に会ってみたいな!」

 いや、さっき会ってたんですけど。


 とにかく——


「「「「「 勇者様、バンザーイ! 」」」」」

 男たちが声を上げた。


 どうやら丸く収まったようだ。


「水野さん、ありがとう」

 カケルが小声で礼を言う。


「カケル君と聖女様はここまで頑張ってくれてたみたいだから、そのお礼なの」

 そう言って、操はニッコリ笑った。



 ♢♢♢♢♢



 感謝の言葉を浴びせまくってくる街の人々の渦の中から、ようやく抜け出せたカケルたち。

 レストランに戻り、セイレーン、委員長の二人と合流した。


 肉を食べるという本来の目的も果たしたことなので、サッサとここから立ち去ろうと思ったカケルたちであったが……


「頭が痛いです。絶対に透明ボードには乗りません」

 聖女サマが、子どものようなことを言い出した。


「そんなこと言ってると、一生家に帰れないよ」

 舞がお気楽口調でたしなめるが——


「なら、私はここで余生を過ごします」


「セイレーンさん、まだちょっと酔ってるのね…… 帝国をぶっ潰すんだって、勢いよく言ってたくせに」

 またまたあきれ顔の委員長。


「あっ、ボロモーケ温泉の素を飲んだらどうですか? 万病に効くんでしょ?」


「おお、流石はカケル様です。ナイスアイデアです」

 そう言うと、聖女サマはスキルを使って、温泉成分配合のお湯——別名、酔い覚ましを作りあげた。


「いただきます」

 そう言って、聖女様がお湯を一口飲んだ途端——


「ゲホッ、ゲホゲホッ、……ウッ…… ぎ、ぎぼじわるい…………」


「マズイ! 委員長、撤収だ、撤収!!!」


 慌てた様子で、委員長と操が、聖女様を抱えてレストランから脱出。


 間一髪セーフ。


 レストラン横の荒地にて、セイレーンの口元から、なにやらいろんなものが勢いよく噴き出した。


「スッゲエ!セイレーンは、口からもレーザービームを出せるんだね!」

 おい舞、女の子にそういうこと言うの、止めてあげろよ……



 結局、今日はみんなで、マドロースの街に泊まることになった……

 明日の朝、北を目指して出発だ。

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