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クラス全員異世界転移したのに俺だけ遅刻した〜腹黒王女からクラスメイトを取り戻せ!〜  作者: 大橋 仰
ハイジャンパー 高嶺舞(タカミネ マイ) 編

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幕間 王女と宰相のじいさん③

じい! 爺はまだ来ないのですか!」


 ここは王宮にある王女の部屋。

 王女がイライラした様子で叫び声を上げる。


「はっ! ただ今参りましたぞ!」

 慌てた様子で宰相のじいさんが、王女の部屋に駆け込んで来た。



「聞きましたわよ! あの変態転移者が、ボロモーケの街に現れたそうではありませんか! 」


 変態転移者とはもうお馴染み、王女のパンティをくすねたカケルのことである。



「まったく…… 西ではなく南に行くなんて、きっと誰も想像出来なかったでしょうね」


「この爺めは、あの街にいる勇者のスキル『飛翔』を欲して、南に行くのではと申し——」


「なんですの!? 爺はこのわたくしの責任だと言うのですか?」


「い、いえ! 滅相もない! あの変態転移者が南へ行くなど、神でも想像出来ますまいて!」


 じいさん大変だな。

 確かにこのじいさんは、カケルが北の離宮から南にあるボロモーケの街を目指すのではないかと言っていたのだ。


「とにかく! スキル『飛翔』を手に入れた変態転移者は、こちらの想定より早く西の国境地帯に到着するかも知れなくてよ! もう、これ以上待てませんわ! あの変態が西にいる仲間と合流して、変なちょっかいを出す前に、一刻も早くニッシーノ国と開戦なさい!」

 王女は早く戦争を始めたいようだ。


「姫様のお考え、誠にその通りであると存じますわい。ただ……」

「ただ、なんですの?」


「勇者たちはワイバーンを使って、およそ1週間で西の国境地帯に運びましたが、一般の兵士たちは、まだ国境に到着しておりませんのですわい」

 ほう、この世界にはワイバーンがいるんだな。

 異世界ものラノベマニアのカケルが聞いたら、泣いて喜びそうだ。

 なんてことは置いといて……



「なら、勇者たちだけ先に戦わせればいいではありませんか?」


「もちろん、勇者たちが戦えば、戦闘には勝利することは間違いないでしょう。しかし、それだけではニッシーノ国の土地を占領することが出来ませんのじゃ。これは侵略してくる魔王を撃退すればいいだけの、防衛戦ではないのです。占領地を支配するためには、多くの兵が必要なのですわい」


「なら、一般の兵士たちの移動を急がせなさい!!! それから引き続き、あの変態転移者の捜索に当たりなさい! 今度こそ西へ向かったはずですわ! 絶対にあの変態を捕らえるのです!」


 このとき、カケル一行はボロモーケの街から更に南にいる、水野ミズノミサオの元へ向かっていた。

 今回も王女サマのおかげで、カケルたちの旅は容易になったようだ。



 なにやら考えごとをしている素振りの王女が、おもむろに口を開いた。

「それにしても、どうしてあの変態転移者は、南へ行ったのでしょう……」


「それは、ボロモーケの街にいる勇者のスキル『飛翔』を手に入れようと——」


「ああ、もう! そういうことを言っているのではありません! あの変態たちは、ボロモーケにいる女の転移者が持っているスキルの効果を知らないはずだと、わたくし申しましたでしょ!」


「さ、左様でした。申し訳ありません」


 そう、王女は知らないのだ。

 仲間思いで頭の良い委員長が、わずかな時間のうちにクラスメイト全員のスキルとその効果を記憶していたということを。


 委員長は、舞が持っているスキル『飛翔』が、人や物を乗せて空を飛べるスキルであることを、ちゃんと知っていたのだ。


「あっ! わかりましたわ!」

「ほう? 何かおわかりになられたのですか?」


「ええ、わかりました。そりゃもう、はっきりとわかってしまいましたわ!」

「そ、それはいったい……」


「この王宮の中に、内通者がいるに違いありませんわ!!!」

「え! いや、しかしそれはどうでしょうか……」


「……なんですの、爺。わたくしの考えがおかしいとでも言うのですか?」

「い、いえ、そのようなことは決して……」


「……わかりました。爺もこれまで共に王家に仕えてきた者たちを捕らえるのは辛いでしょう。いいですわ、わたくしがやって差し上げましょう! この皇太子…… にはまだなっていませんが、もうすぐ皇太子になるこのわたくし自ら、王宮に巣食う裏切り者どもを捕らえてやりますわ!」


「ひ、姫さま、それは少しなんと言いますか、その……」

「あら? ひょっとして、爺が裏切り者だなんて、言いませんわよね?」


「……………………わかりましたわい。この際です、姫様に忠誠を尽くさない不逞ふていやからを、すべて捕らえてしまいましょう」


「流石です、爺。やはり爺は見所があります」

「ははあー! ありがき幸せ!」



 こうしてこののち、王女は有能な家臣を失うことになる。

 王女サマ、ザマァ!

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