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クラス全員異世界転移したのに俺だけ遅刻した〜腹黒王女からクラスメイトを取り戻せ!〜  作者: 大橋 仰
第2章 クラスメイトを救い出せ! 委員長 真締聖羅(マジメ セイラ) 編

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次の街へ

 カケルとセイレーン、委員長の3人は、いよいよ今後の方針について話し合うようだ。


「帝国が俺たちの仲間を戦争の道具にしようとしてることは、さっきセイレーンさんが説明してくれたよな」


「ええ、ニッシーノ国との国境に、9人が配置させられているって話よね」

 カケルの問いに答える委員長。

 委員長はこの世界に来て3日目に、クラスメイトとは別の場所に隔離されたため、その後の友人たちの動向については何も知らない。



「俺とセイレーンさんは、みんなを助け出し、そして帝国の野望をブッ潰すつもりだ。そこで、委員長にも協力して——」


「みなまで言わなくてもいいわ。私はクラス委員なのよ。協力して当然でしょ? それに今、私は二人に対して申し訳ない気持ちでいっぱいなの。せっかく、一番最初に私を助けに来てくれたのに、私ったら、みんなの情報、全然知らなくて……」


「なに言ってんだよ! 委員長のおかげで、アイツらがどんなスキルを持ってるかとか、いろいろわかったじゃないか!」


「そうですよ! 委員長様のおかげで、なんかこう…… いろいろ…… そりゃあもう、うわぁって感じになりましたから!」


「ふふふ、今日何回目のお礼になるかわからないけど、もう一度言わせてもらうわ、ありがとう! じゃあ、みんなで協力して仲間を助け出し、帝国をブッ潰してやりましょう!」


「「 おおーーー!!! 」」

 やっぱり、委員長にはリーダーシップがあるようだ。

 委員長は『申し訳ない気持ちでいっぱい』と言っていたが、委員長を最初に助け出したのは正解だったようだ。


「それじゃあ、次の目標だけど——」

 早速、進行役を務める委員長。

 カケルのクラスでは、いつも委員長がホームルームを取り仕切っていた。

 カケルにとっては見慣れた光景だ。


「この地図を見る限り、西の国境へ行くには相当日数がかかりそうね」


「そうなんだよ…… 流石に、俺のスキル『疾風』を使っても、ちょっと大変かなって思ってたんだ」


「覚えてる? さっき私が説明したクラスメイトのスキルの中に、面白そうなのがあったんだけど」


「それって、スキル『飛翔』のことですか?」

「流石、セイレーンさん。その通りよ」


「お、おう、そうだよな。やっぱりヒショーだよな」

「……早瀬君は、わかってなかったみたいね」


「……見栄を張りました、すみません」

いさぎよいカケル様も、カッコいいです!」


「……セイレーンさん、俺の心は今、あなたのことでいっぱいで——」

「ハイハイ、長くなりそうだから、以下、省略」

 …………今後、省略係は委員長に任せることにしよう。


 スキル『飛翔』を持っているのは、カケルと同じ陸上部に所属する、高嶺タカミネマイ。走り高跳びを専門にする選手だ。


「スキルの効果は空を飛べること。ちゃんと高嶺さんのステータス画面を確認したから間違いないわ。どのぐらいのスピードで飛べるのかはわからないけど、移動が楽になることは確かだと思うの」


「スキル『飛翔』については、私も聞いたことがあります。委員長様同様、スピードに関しては私もよく知らないのですが、透明なボードのようなものを使い、人や物を運ぶことが出来るスキルだと聞いています」


「それじゃあやっぱり、次に仲間に加えるのなら、高嶺さんがいいわね」


 委員長とセイレーンはそう言っているのだが、カケルだけは難しい顔をしている。


「どうしたのですか、カケル様?」

「早瀬君は反対なの?」


「いや、そういう訳じゃないんだけど…… 俺はアイツと同じ陸上部なんで、よく知ってるんだよ……」


「どういうことですか、カケル様?」


「…………アイツ、すっげえバカなんです」

「もう、カケル様! お友だちのことをバカだなんて——」


「いいのよ、セイレーンさん——」

 セイレーンの話をさえぎる委員長。

「——だって、セイレーンさんの目の前にいる人も、高嶺さんからバカって言われてるから」


「え?」


「早瀬君と高嶺さんは、クラスで一番のバカはどっちかって、いつも競い合ってたの」


「はい?」


「アイツがいると、俺のおバカキャラポジションが奪われる危険性があるんです」

 カケルは深刻そうな顔で、そうつぶやいた。


「と言いますと?」


「ほら、クラスいちのバカって、なんかカッコいいじゃないですか」

 よくわからないことを、さも当たり前のように言うカケル。


「うーん…… そう言われると、なんとなく破天荒で傾奇者かぶきもので、それでいて唯我独尊的なイメージがしますね」

 セイレーンも、よくわからないことを言い出した……


 それを聞いた委員長は——

「えっ!!! セイレーンさん、バカのカッコ良さが理解出来るの!? クラスのみんなは面倒くさがって、『じゃあ、もうバカ1号と2号ってことにしとけよ』って言ってるのに……」


「じゃあ、私はバカ3号になりたいです!」


「セイレーンさん…… ひょっとして、あなた天使なの? それとも大バカなの? あれ? ひょっとして、私の考え方がおかしいの? 実はバカって素敵なの? 嗚呼ああ、私、よくわからなくなってきた……」


 委員長の嘆きは置いておくとして、とにかく3人は、ハイジャンパー高嶺タカミネマイの元へ向かうことにした。



 高嶺舞、通称マイは、北の離宮から南の方角に進んだ地にある『商業都市ボロモーケ』にいるようだ。


 セイレーンとカケルが出会った場所からから北の離宮まで、大森林の近道を通って約1日かかった。

 地図を見る限り、北の離宮からボロモーケの街までは、その7倍ほどの距離があるので、単純に考えても約7日かかると思われる。

 その計算でいくと、北の離宮からニッシーノ国との国境までは、およそ1ヶ月半もかかってしまう。

 舞のスキル『飛翔』が高速で、かつ3人を乗せて移動出来るスキルであることを祈るばかりである。



 さて、次の目的地が決まった3人だったが、なにやら委員長が思いつめた顔をしていた。


「私は絶対、バカ4号にはならないからね。嗚呼ああ、このままでは私、バカな人たちに飲み込まれてしまいそう……」

 委員長は、自分の意志を強く持つことにした。

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