場を和ませようと思って……
委員長こと真締聖羅は話を続ける。
話題は、敵——国王や王女、宰相のじいさんたち帝国のヤツら——と、味方——クラスメイトたち——が持つ、スキルの話へと移っていた。
「国王にはスキルがなかったわ。王女のスキルは『召喚』だった。たぶん王女が私たちをこの世界に召還したんでしょうね。それから黒いローブ? で良いのかしら、魔法使いみたいな格好をしたお爺さんのスキルは『国威』だったと思う。時間がなくて、説明まで見ることは出来なかったんだけど、変わった名前だったからよく覚えてるわ」
「セイレーンさん、『国威』って、どんなスキルなんですか?」
カケルがセイレーンに尋ねるが……
「申し訳ありません。スキルには一般的なものとそうでないものがありまして…… 『国威』というスキルは聞いたことがありません……」
心から申し訳なさそうにつぶやくセイレーン。
「い、いえ、とんでもない! 俺の方こそ、なんでもセイレーンさんにばっかり頼っちゃって、なんだか申し訳ないです! きっとそのうち、どこからか情報が入って来ますよ! ええ、きっとそうなりますとも!」
「……必死だね、早瀬君。あなたを見てると、なんだか涙が出そうよ」
「悪かったな! どうせ俺は女子にモテた経験なんてないよ! ああ、もう、早く次の話に移ってくれよ!」
ふふふ、と笑いながら委員長は、次の話に移るため口を開く。
「謁見の間にいた残りの家臣の中で、スキル持ちは6人いたわ。『回復』が一人に…… それから『微速』が3人『軽速』が2人だったかしら」
「『微速』と『軽速』って、どっちが速いんだ?」
「知らないわ」
「あれ? 『小吉』と『末吉』はどっちが縁起いいんだっけ?」
「どうでもいいわ」
「『中盛り』のご飯少なめと、『並盛り』だと——」
「うるさいわ。黙って」
「なんだよ…… 場を和ませようと思って頑張ったのに……」
「カケル様、ドンマイです!」
「セイレーンさん…… ありがとうございます!」
「いえ、私は当然のことを言ったまでです!」
「いえいえ。セイレーンさんの励ましのおかげで——」
カケルの話を遮り、委員長が口をはさんだ。
「……長くなりそうだから、以下、省略。次の話に行くよ」
…………委員長に『以下、省略』の台詞を取られた……
次に、委員長はクラスメイト全員のスキルを教えてくれた。
謁見の間で全員のスキルが表示されたとき、みんなのスキルを確認したそうだ。
流石、委員長。やっぱり仲間思いの頼れるリーダーだ。
委員長の話を聞いたカケルは——
「ほとんどのヤツが持ってるスキルは、部活に関係するみたいだな。剣道部の鶴木心立のスキル『剣豪』なんて、いかにもって感じだし。あれ? でも委員長は薙刀部じゃなかったけ? 薙刀って試合中に相手を『説教』するのか?」
むむむっ? と変な声を出しながら、カケルが委員長に尋ねた。
「私は生徒会にも所属してたから、たぶんそっちがスキルに影響したと思うの。自分で言うのもなんだけど、ウチの高校の生徒会って、ちょっとエラそうな態度の人が多いでしょ? そういう人はみんな、他人にお説教するのが大好きなのよ。先生にでもなった気分なんでしょうね」
「え? 委員長って、生徒会にも入ってたの?」
「…………ウチの学校は、学級委員が自動的に生徒会役員になることになってるんですけど」
少しムッとした表情の委員長。
「思い出した…… みんな生徒会役員になるの嫌がったんで、仕方なく委員長がやってくれたんだった。その節は誠にお世話になりました」
ペコリと頭を下げるカケル。
「まったく、調子いいんだから。それから、みんな私のこと『委員長』って呼んでるけど、本当はただの学級委員なんだからね」
委員長がそう言うと——
「委員長様は良い人なんですね!」
満面の笑みを浮かべたセイレーンが声を上げた。
「ちょ、ちょっとなんですか急に。べ、別に私はそんな……」
委員長は照れ屋さんなのだ。
さて、今度は委員長がカケルへの質問を始めるようだ。
「早瀬君のスキルは『潜伏』なのよね?」
本当は姑息だけどな。
「『潜伏(本当は姑息)』はプライベートスキルなんだ。一般的なスキルの方は『疾風』って言って、速度が3倍になるトンデモスキルなんだぜ。そう言えば、委員長のプライベートスキルは何なんだ?」
「プライベートスキル? なにそれ、 聞いたことないんだけど?」
驚いた表情の委員長。
「カケル様! プライベートスキルを無理やり聞き出そうとするのはマナー違反ですよ!」
セイレーンから、待ったがかかった。
「えっ? そうなんですか? ごめん委員長、俺この世界に来たばっかりなもんで知らなくて——」
「違うの! 秘密にしたいんじゃなくて、本当に知らないの!」
委員長はプライベートスキルを持っていないのだろうか?
「本当よ! 信じて!」
真剣な表情の委員長。
「信じるよ。委員長は嘘をつくようなヤツじゃないからな」
真面目な表情で応えるカケル。
「……ありがとう」
委員長は再び頬を染めた。
やっぱり委員長は照れ屋さんだ。
いや、ひょっとするとツンデレなのか?
「あの…… 詳しいことは私も知らないのですが——」
と、前置きをしたうえで、セイレーンが口を開いた。
「——この世界で、プライベートスキルを持っている人はほとんどいません。一般的なスキルを持っている人自体が少ないのですから。もちろん私もプライベートスキルは持っていませんよ。だから委員長様が持っていなくても、別に不思議ではないと思います。委員長様とは今日お会いしたばかりですけど、私も委員長様が嘘をつくような方だとは思えません。ですからきっと、委員長様はプライベートスキルを持っておられないと思います」
「ありがとう、セイレーンさん」
委員長は、今日何度目になるかわからないが、またお礼の言葉を口にした。




