働いたら負け、当たったら勝ち
私、倉敷 都伊奈は、黒杉商事に入社してもう3年になる。
就活は気合を入れて頑張ってたはずなのに、あらゆる面接に落ちに落ち、ようやく内定をもらえたのがこの会社。
黒杉商事がその名の通りブラック過ぎることが分かったのは入社してから時間はかからなかった。
就活先がなくて途方に暮れていた私を拾ってもらった恩を忘れることが出来ず、辞めることも出来ずに3年も経ってしまった。
今日で二十三連勤目。今は21:00。今日は日が変わる前に帰れそうだなぁ。
そんなことを考えていると上司がドスドスとこっちに向かってくる。
「さっきお願いした資料、今日中に作れって言ったよね?」
「明日の始業時間までに作らないと、減給だから」
「これだから最近のやつは使えねぇんだよな」
上司(ハゲデブ息臭)の無理難題やパワハラ、セクハラにも、三年もいれば慣れるてくる。何を言われてももはや心も動かなくなる。
日が変わるまで資料作りが確定したけど、大したショックもない。ただただやり過ごすだけだ。
でも、それって心が死んだってことじゃないか。
辛くても涙は出ない。枯れたのかもなぁ。
私は「はい。」と生返事をし、仕事を再開した。
結局仕事が終わったのは25時を少し過ぎたころだった。終電は無くなっているが、仕事場で朝を迎えたくはなかったので、オフィスを出ることにした。
オフィスを出ると街はいつものように暗く静かで東京とは思えないよなと毎度思う。
流石に道や公園で寝るわけにもいかないし、ネカフェにでも泊まろうかな。
近くのネカフェまでトボトボと歩いていると、ぼんやりと店が光っているのが見えた。
それは宝くじ屋さんだった。え?24時間営業?
こんなお店あったっけ?と思いながらなんとなく近づいてみると、ギラギラした装飾に
「一等 20億円!」とデカデカと書いてある。
20億円か。私の月収が20万だから一万月分の金だな。
年に換算すると大体830年ぐらいか。
とてつもない金額に乾いた笑いが込み上げる。
これが当たれば、人生変わるんだろうなぁ。
なかば現実逃避も込めて一口買ってみることにした。
数字を選ぶタイプらしい。
そうだな。
社畜ご苦労さんで「3295963」とかどうだろう?
はははは。冗談にしては趣味が悪い。
200円を支払って、人生を変えるかもしれない紙切れを持ってネカフェに泊まることにした。
横になりながら
働いたら負け、だよなぁ…
なんでこんなに働かなきゃいけないんだろ…
と考える。
枯れたと思ってたけど涙が出てきた。
むしろ安心したよ。私はまだ人間なんだ。
宝くじを買ってから一週間が経った頃には買ったことすら忘れていた。
思い出したのは25時まで働いてネカフェに泊まることを決めたからだ。同じシチュエーションになってようやく思い出した。
どうせ当たってないだろうけど、確認しないのももったいないよな。
そう思いながら当選番号を確認する。
一等は…?
どれどれ
3295963
か。
やっぱりそんな人生甘くないね
はぁ…………
ん?
私が選んだのはなんだっけ?
社畜ご苦労さん 3295963 だったよね?
んんん?
当たってる?
一等と数字、同じ???
何度も見直す。
動悸が止まらない。
夢か現実かも分からなくなってくる。
ところがどっこい現実です。これが現実。
え?20億円もらえるの?
私の人生10周分ぐらいのお金もらえるの?
ヤバ。会社辞めれるじゃん!!!!!!
ネカフェのソファの上で必死に叫び出したい欲望を抑え込む。
間違いなく言える。
働いたら負けだけど、宝くじが当たったら人生勝ちだ!!




