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陰陽師世界に転生した俺だけ、レベル制RPG仕様 ~努力で霊力を999にした結果~  作者: 妙原奇天


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7/10

第7話 努力の敵、怠惰の貴族

 朝。

 支援科の講堂に、黒塗りの馬車が停まった。

 車輪の紋章は金の双蛇――貴族、天条家。

 陰陽寮でも最古の血筋を誇る一族だ。


 重い靴音とともに、一人の青年が入ってくる。

 白衣をまとい、口元に冷たい笑みを浮かべていた。


「ここが“支援科”か。……面白い遊び場だな」


 周囲の空気が凍りつく。

 彼の名は――天条玲示てんじょうれいじ

 安倍晴臣に次ぐ陰陽師筆頭候補であり、努力を最も嫌う男だった。


「桜庭陽真、君が“努力制度”を作った張本人だな」

「そうだが、用件は?」

「単純なことだ。“廃止”だよ。努力値制度も、支援科もな」


 言い切った瞬間、教室がざわつく。

 玲示は指を鳴らした。

 壁際の木札が勝手に燃え、俺たちが築いた結界が崩れていく。


「……何してやがる」

「これは君の“数字”が無意味である証明だ。努力など、血統の前では塵だ」


 周囲の弟子たちがひざまずく。

 彼の霊力は桁違い――確かに天才だ。

 だが、その瞳の奥には傲慢しかなかった。


「努力でしか上がらない数字が、君の誇りか?

 なら、見せてみろ。俺の“生まれつきの霊力”を超えてみせろ」


 挑発だ。

 だが――逃げる理由はない。

 俺は静かにステータスウィンドウを開いた。


[Status Window]


 レベル:13

 MP:145/145

 特性:努力値共鳴(Lv2)

 スキル:努力分配・数値再生


「小狐丸、共鳴モードだ」

「了解っ!」


 光が走る。

 支援科の仲間たちの霊力が糸のように繋がり、俺の身体に流れ込む。

 ――努力は、連鎖する。


 数値が跳ね上がる。

 MP:145 → 180 → 220。


「っ……これは!?」

 玲示の瞳が揺れる。


「お前が否定した“凡人の努力”が、これだ!」


 印を結ぶ。

 五芒星が輝き、空気が震える。


「支援術――《全域結界展開フィールド・リンク》!」


 講堂全体が光の網に包まれた。

 支援科全員の努力が、俺に集約される。


 轟音。

 玲示の足元の床が割れ、壁が吹き飛ぶ。

 彼は霊力の暴風を受けながらも笑った。


「はは……なるほど。努力の力、か。だが――それは“数”だ。

 俺は“質”で上を行く」


 白衣が揺れ、彼の背後から黒い式神が立ち上がる。

 六つの瞳、四本の腕。異形の鬼。


「神格式神・《惰鬼だき》召喚」


 闇が講堂を呑み込む。

 空気が重い。息ができない。

 支援科の仲間たちが膝をつく。


 俺のウィンドウに、赤文字が走った。


 【警告:共鳴霊力、限界値超過】


「……まだだ」


 指先が震える。

 視界が霞む。

 でも――あの日の言葉が頭をよぎった。


 〈努力は、孤独ではない〉


「ミナト、佐久間!」

「はい!」

「リンク維持、最大まで引き上げろ!」


 仲間の光が、再び俺の背中を押した。

 MP:220 → 300 → 400。

 数字が燃え上がる。


「支援科の努力は、止まらないッ!」


 光と闇が衝突する。

 轟音。閃光。世界が揺れる。


 気づけば、惰鬼の姿は消えていた。

 玲示は膝をつき、震える手で俺を見上げていた。


「……そんな馬鹿な。血筋を……努力が……超えただと?」


 俺は静かに答えた。


「努力は、才能の上位互換だ」


 沈黙。

 そして――爆発的な歓声。


 講堂の外で見ていた見習いたちが、次々に拳を突き上げた。

 「努力だ!」「俺もやる!」

 支援科の名が、陰陽寮全体に響き渡った。


 その夜。

 空を見上げると、満月が浮かんでいた。

 光の中に、一瞬だけ神の影が見えた気がする。


 〈努力は伝染し、世界を変える〉


 俺は微笑んだ。

 ――そして次の戦いが始まることを、直感していた。


次回 第8話「神々の介入、努力の終着点」

――努力が世界法則を塗り替える時。

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