表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰陽師世界に転生した俺だけ、レベル制RPG仕様 ~努力で霊力を999にした結果~  作者: 妙原奇天


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/10

第4話 努力の代償、神々の声

 戦いのあと、世界は静まり返っていた。

 神獣・白澤は姿を消し、空には裂け目だけが残る。

 その裂け目の奥で、誰かがこちらを見ている――そんな気配があった。


 努力で神を超えた。

 ……その代わりに、何かを失った気がする。


「主サマ、大丈夫?」

 小狐丸の声が震える。

 見下ろすと、自分の手が淡く透けていた。


「……霊力、抜けてる?」

「ううん、違う。神サマに“認識”されちゃった」


 ――ピコン。


 視界に赤いウィンドウが浮かぶ。


[Warning]


 神域覚醒(β)を発動した代償により、

 霊的座標が“神界”へ登録されました。

 一定時間後、強制転移の可能性があります。


「……はあ!? 強制転移ってどういうことだよ!」

「神サマ、きっと“呼んでる”んだよ。主サマの努力、気に入ったんだね」


 小狐丸は笑うが、その尾は震えていた。

 努力が、神に届いた。

 だが、届いたがゆえに“向こう側”に引きずられる。

 皮肉だ。報われた瞬間に、終わりが訪れるなんて。


「……陽真!」


 振り返ると、陰陽師の少女――藤原蘭華が立っていた。

 試験の時、俺を嘲っていたあの天才だ。

 彼女の式神〈雪鬼〉が氷の粒を撒き散らしながら、俺に道を作る。


「さっきの戦い、見てた。あんた、本気で神を……」

「……超えた、かもしれない」

「バカね。そんなこと、誰もできないのに」


 蘭華が泣きそうな顔をした。

 あの冷たい目が、今はまるで人間らしい。


「霊力が暴走してる! 止めないと!」

「無理だ。これは……俺の“努力の結果”だ」


「結果が死ぬことなら、努力なんて要らない!」


 その一言が、胸に突き刺さった。

 努力は、誰かの涙を呼ぶのか。

 そんなこと、考えたこともなかった。


 ――ピコン。


 ウィンドウに、初めて“声”が混じった。


 〈人間、桜庭陽真。汝の努力を見届けた〉

 〈神々は問う。努力とは、誰のためのものか〉


 空が鳴る。風が凍る。

 裂け目の奥から、白い手が伸びてくる。

 俺を――引きずり上げようとしていた。


「主サマ、行っちゃダメ!」

 小狐丸が飛びつく。霊光が散る。

 その小さな身体が、俺と神の腕の間に挟まった。


 ――霧散。


「……小狐丸!」


 声が出なかった。

 光の粒となって消えていく小さな姿。

 最後に残ったのは、温もりだけ。


「神様が、連れていくなら――俺も行く」


 蘭華が叫ぶ。

 氷の翼が背から伸び、俺の手を掴んだ。


「そんな努力、私が引き戻す!」


 彼女の霊力が俺の体内に流れ込む。

 炎と氷が混ざり合い、光が爆ぜた。


 ――ピコン。


 【協働行為により特性変化】

 【努力値限界突破(共鳴)へ進化】


「っ……!」

 霊力が逆流し、光が世界を塗り替える。

 神の手が砕け、裂け目が閉じていく。


 視界が白に包まれる直前、誰かの声が響いた。


 〈人間。努力とは、孤独ではない〉


 気づくと、夜の神社に倒れていた。

 隣で、蘭華が眠っている。

 胸の上には、淡い光の珠――小狐丸の魂が宿っていた。


「……戻ってきた、のか」


 ウィンドウが静かに開く。


[Status Window]


 レベル:10

 MP:120/120

 新特性:努力値共鳴(蘭華・小狐丸)

 神域覚醒:封印状態


「努力は、誰かと重なることで意味を持つ」

 小狐丸の声が、心の奥で囁いた。


 空を見上げる。

 雲の切れ間に、月が光っていた。

 その月の上に、誰かが微笑んでいる気がした。


 神か、それとも――俺の未来か。


次回 第5話「陰陽寮の新星、そして再試験」

――努力は孤独から希望へ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ