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陰陽師世界に転生した俺だけ、レベル制RPG仕様 ~努力で霊力を999にした結果~  作者: 妙原奇天


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3/10

第3話 神に挑む努力値

 空が裂けた。

 光の柱が、陰陽寮の天井を突き抜けている。


 安倍晴臣――陰陽寮筆頭。

 “神の声を聴く男”と呼ばれる存在。


 その彼が、俺を見て笑った。


「努力値、ね。ならば証明してみろ。

 ――努力が、天を越えるのかを」


 次の瞬間、霊圧が爆ぜた。

 地が割れ、空気がねじれる。

 ただ息をするだけで肺が焼けるようだ。


 俺は拳を握る。

 ステータスウィンドウが、まるで鼓動のように脈打っていた。


[Status Window]


 レベル:7

 MP:38/38

 新特性:努力値限界突破(LV1)


「小狐丸、行くぞ!」

「うん、主サマ!」


 五芒星が光を放つ。

 小狐丸の体が分裂し、三つの幻影が走った。

 けれど――その全てを、晴臣は指先ひとつで霧散させる。


「子供の遊戯だ」


 風が唸る。

 目に見えない刃が頬を裂いた。

 そのたびに、MPが削られていく。


 MP:20/38 → 14/38 → 9/38。


 視界が揺れる。

 俺は歯を食いしばった。


「まだ……終わってない!」


 努力は裏切らない。

 それを信じて、俺は訓練を続けてきた。

 座禅も、祈りも、呼吸も。

 一つ一つが無駄じゃなかったと証明したい。


 そして、脳裏に浮かぶのは――あの通知音。


 ――ピコン。


 【条件達成:努力値限界突破LV2】


「……っ!」


 身体の内側が、爆発するように熱くなった。

 目の前の世界がスローモーションになる。

 晴臣の攻撃軌道が、すべて見える。


 俺は地面を蹴った。

 霊力が脚を走る。

 風を切り裂く音。


 掌に光が集まり、文字が刻まれる。


「陰陽術――《極点結界リミット・フィールド》!」


 轟音。

 結界が展開し、衝突する霊波をすべて吸収した。


「ほう……今のを防いだか」

 晴臣の声が、ほんの僅かに楽しげだった。


 しかし、その目は鋭く、冷たい。

 まるで、神が人間の努力を観察しているかのようだ。


「ならば、これはどうだ」


 晴臣の指が動く。

 周囲の霊脈が爆ぜ、天井が消えた。

 空に浮かぶ巨大な陣が輝く。


「神域召喚・白澤はくたく


 白い獣が降りてくる。

 六つの角を持つ神獣――霊界の守護。

 地が震え、観客の陰陽師たちが逃げ出した。


 俺の中で、何かが切れた。

 怖い? 違う。

 悔しいんだ。

 努力してきた時間が、たった一瞬で打ち砕かれるのが。


 ――ピコン。


 【感情高揚:潜在値+5】

 【神域適正:発動条件達成】


「……きたか」


 視界が白く染まる。

 風が止み、音が消える。


 俺の中で、誰かが囁いた。


 〈努力は神をも超える。〉


 ステータスウィンドウが変形し、新たな項目が現れる。


[Status Window]


 特性:努力値限界突破(LV3)

 新特性:神域覚醒(β)


「小狐丸――リンク!」

「了解、主サマ!」


 小狐丸が俺の影に溶ける。

 次の瞬間、身体中に狐火が走った。

 霊力が、燃える。

 皮膚の下で光が流れ、数字が跳ね上がる。


 MP:999/999。


「なっ……!」

 晴臣の瞳がわずかに見開かれた。


「努力値、上限突破だと……!?」


 俺は笑った。

 口角が勝手に上がる。

 血の味がするのに、心は軽い。


「俺の努力は、ここで終わらない」


 掌を突き出す。

 式神と俺の霊力が重なり、白澤の巨体を直撃した。

 閃光。轟音。空間がねじれる。


 ――静寂。


 光が消えたとき、神獣は跪いていた。

 白い毛並みが風に揺れ、瞳が俺を見つめる。


 その瞳の奥に、確かに“敬意”が宿っていた。


「……降参、だな」


 安倍晴臣が、初めて微笑んだ。

 そして静かに言った。


「お前の努力は、神の理を超えた」


 歓声が上がる。

 陰陽寮の庭が揺れる。

 小狐丸が尻尾を振りながら、俺の肩に飛び乗った。


「主サマ、勝ったね!」

「……ああ。でもまだ道の途中だ」


 俺は空を見上げた。

 青空の向こうに、誰かの視線を感じる。


 ――神は、微笑んでいた。


次回 第4話「神々の試練、そして“努力”の意味」

――努力は奇跡か、運命か。

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