りんごは誰のもの?
あるところにりんごが1つなっていました。
それをじっと見ていた女の子はりんごの木にこう尋ねました。
「このりんごは誰のもの?」
りんごの木はこう答えました。
「これはね、お日様のものですよ。なにせ私はお日様なしには生きていられないからね。だからこのりんごはお日様のものです」
女の子は感心したように眩しいお日様を見上げました。
そして女の子はお日様にこう尋ねました。
「このりんごはお日様のもの?」
お日様はこう答えました。
「違うぞ、お嬢さん。私の力なんてほんの些細なものじゃ。りんごがなっているのは、りんごの木を地面がしっかりと支えておるからじゃ。だからこのりんごは地面のものじゃ」
女の子は驚いたように今立っている地面を見つめました。
そして女の子は地面にこう尋ねました。
「このりんごは地面のもの?」
地面は答えませんでした。
女の子は答えが返ってくるまで辛抱強く待ちました。
すると足元からミミズが穴から顔を出してこちらを呼んでいるのに気づきました。
「こんにちは。ミミズさん。」
「こんにちは。お嬢さん。地面からの伝言を預かってきましたわ」
「まあ」
「地面はこう言っていたわ。『私のものではない。私はただ支えておるだけに。りんごがなっているのは、雲のおかげだ。雲が雨を降らせその雨がりんごの木を潤わせる』と。急に聞かれるものだから大層慌てていらしたわ。ではまた」
「どうもありがとう」
女の子はそれを聞くと雨の降る日が待ち遠しくなりました。
しとしとと雨が降り続く中女の子は雲にこう尋ねました。
「このりんごは雲のもの?」
雲はこう答えました。
「いえいえ。滅相もない。りんごがなっているのは、お月様のおかげでございましょう。お月様が優しく見守っているからりんごは大きくなるのです。」
女の子はそれを聞くと月明かりに照らされる夜が待ち遠しくなりました。
十五夜に女の子はお月様にこう尋ねました。
「このりんごはお月様のもの?」
お月様はこう答えました。
「いいえ。私はただ眺めているだけです。りんごが育つのはりんごの木のおかげです。・・・りんごはね、本当は誰のものでもないのよ。でも、誰のものでもあるのよ。」
「どういうこと?」
「あと十年したらきっとわかるわ。そしたらまた、皆のもとを訪ねてごらんなさい。」
「・・・はい」
「ささ、夜も遅いことだし、帰りましょう。行く手を照らすわ」
帰り際、りんごの木に声をかけられました。
「お嬢さん、このりんご食べてみなよ」
「いいの?」
「いいよ。もちろん」
「でも、誰のものでもないって」
「あははは、このりんごはお嬢さんのために作ったんだよ」
「そうなの?」
「そうさ」
「じゃあ、いただきます」
女の子はりんごにかぶりつきました。
そのりんごのなんと美味しいこと美味しいこと。
ほっぺが落ちそうになるほどでした。
女の子は目を輝かせてりんごの木に言いました。
「美味しい!」
「それはよかった」
「ありがとう」
「どういたしまして」
女の子はその晩眠りにつくとみんなでいっしょにりんごを食べる夢をみましたとさ。
おしまい




