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童話

春を呼べなくなってしまったフクロウ

作者: 本羽 香那

イラストは幻邏様が製作されたテーマ(3)を使用させていただきました。



「やあーい、間抜けフクロウ。お前今年も春を呼ぶどころか、花1つも咲かせられなかったって?」

「うるさいな。来年は盛大に咲かせるために力を溜めているだけだ」

「去年も同じこと言ってなかったっけ?」

「いや、一昨年も同じこと言っていたぞ」

「いやいや、その前も同じこと言っていたよな」


 3羽のフクロウは、大きなフクロウをからかって大笑いをしました。

 大きなフクロウは、何も言い返せなくてただ黙り込むばかり。

 そんな大きなフクロウを見て、3羽のフクロウは更に大笑いをして帰っていきました。 

 大きなフクロウはただその様子を見つめることしか出来ませんでした。



 大きなフクロウは、体はどのフクロウよりも負けないぐらいの立派な体格です。

 しかし、フクロウの役割である春を呼ぶことは、ある年を境に出来なくなってしまったのです。

 みんなは毎年花を咲かせたり、気温を温めたりして春をもう呼んでいるというのに、自分には春を呼ぶことが出来なくて、いつも落ち込んでおりました。

 

「僕だって、春を呼びたくなくて呼ばないわけじゃないのに」


 大きなフクロウが春を呼べなくなったのは、春を呼ばなければならない時期に大きな病で倒れてしまい、役割を果たせることが出来なくなった時からでした。

 その病が完治するまでには約3年と長い年月を要してしまい、それからどうやって春を呼ぶべきなのか忘れてしまったのです。

 そのため、大きなフクロウは思い出せないながらも、毎年何とか春を呼ぼうと頑張っているのですが、それももう10年も続いてしまいました。


 来年こそは絶対に春を呼ぶ。


 そう固い決意をして、春を呼べるように1年間念入りにイメージトレーニングをして次の冬の終わりを待ちました。 


◇◇◇◇◇


 次の冬の終わりがやって来て、とうとう春を迎える時。

 大きなフクロウは春を呼ぼうと懸命に空を舞って、必死に祈りました。

 しかし、今年も春は呼べません。


「あんなに綺麗に舞ったのに、あんなに必死に念じたのに……どうして……どうして僕は春を呼べないんだ!」


 大きなフクロウは悲しくて辛くて思わず、心の叫びが実際に大きな叫びとなってしまいます。


「うるさいわね、静かにしてちょうだい」


 大きなフクロウの叫び声に目を覚まし、とある小さな蕾が怒り始めました。


「そんなに怒らなくてもいいだろう。そもそも君達が咲かないから俺はこんなに馬鹿にされるんだ。馬鹿にされなければこんな悲痛な叫びなんかしないよ」

「そんなのだからみんな咲かないのよ。貴方が春を呼べない理由は貴方にあるわ。昔の自分を見つめ直してみたら」


 大きなフクロウは小さな蕾にそんな風に言われて、頭にカチンときましたが、昔の自分を見つめるべきだと言われて、その言葉に従い、昔のことを振り返ることにしました。


 昔は他のフクロウ達の力を借りなくても、この当たりの地域を自分で春を呼べるほどの立派な春を呼ぶフクロウでした。

 なのに、今では他のフクロウに春を呼んでもらわないと、この当たり一面ですら春を呼べないフクロウへと成り下がってしまったのです。

 一体何がここまで変えてしまったのだろうと思い悩んでしまいます。

 

「昔は良かったな。植物や動物達といつも仲良く話して、一緒に春を呼んで……」


 大きなフクロウは昔のことに思い馳せていると、とても大切なことを思い出しました。

 そのため、大きなフクロウは今度は自ら小さな蕾に話しかけます。


「大事なことを今ようやく気付いたよ。春は僕だけで呼ぶものじゃない。君達と一緒に春を呼ぶんだね」


 病気が中々治らなくて、大きなフクロウはもうこのままずっと1人なのかもしれないと塞ぎ込むようになりました。

 そして、病気が治ってからもその気持ちが晴れることもなく、植物や動物達と関ろうとはしませんでした。

 そのため、1人で春を呼ばなければならないと思い込んでしまい、ただ1人で向き合ってばかりいたのです。

 しかし、春はここにいるみんなで呼ぶもの。

 1人で向き合っていては、永遠に春を呼ぶことが出来ません。


「やっと気づいてくれたのね。その日を待っていたのよ」


 小さな蕾は嬉しそうに揺らしておりました。


「本当にごめん。僕と一緒に春を呼んでくれる?」

「勿論」


 その蕾が元気な返事をしてくれると、その近くにいる植物や動物達も、自分達もやるぞと元気よく声をかけてくれます。

 そしてその掛け声は一つの束となり、みんなが一丸となりました。


「それじゃあ今から一緒に春を呼ぶよ」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 大きなフクロウは懸命に舞いながら、みんなと声を掛け合って春を呼びます。

 すると、植物は一斉に花開きまた成長し、動物は冬眠から目覚めて外に出てきます。


 挿絵(By みてみん)


 そのことにより、大気は暖かいものに変わり、ようやく春を呼ぶことが出来ました。

 そしてそれは次々と広がり、とうとうこの町全てに春を呼ぶことが出来ました。


「みんなありがとう」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「こちらこそ」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 大きなフクロウは、みんなが笑顔になってくれて、今まで1番の大きな笑みを浮かべました。

 そして、あの小さな蕾だった花にお礼を言います。


「本当にありがとう。素敵な花さん」

「こちらこそありがとう。素敵な花にしてくれて」


 そういうと共に微笑み合いました。


◇◇◇◇◇


 大きなフクロウは毎年素敵な春を呼び起こすようになったため、みんなに愛されるようになり、そして春を呼ぶ神様として祭り上げられるようになりました。

 こうして大きなフクロウはいつの時代でも愛されるようになりました。

 


 おしまい 


ご覧いただきありがとうございます。

もし良ければ評価やコメント、誤字脱字報告をお願いします。


 挿絵(By みてみん)

幻邏様から素敵なファンアートをいただきました。

本当にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 梟さんが素直に蕾の話に耳を傾けて、考えて答えを出したところ。 [気になる点] 個人的に気になるだけなのですが、文体っていうのでしょうか?全体の雰囲気の中で言えば『ここら』ではなく『この辺り…
[良い点] とてもあたたかな気持ちになれました。 みんなで春を呼べて良かったですね(*´꒳`*) 素敵なFAもおめでとうございます! 読ませていただきありがとうございました(✿ᴗ͈ˬᴗ͈)
2024/04/29 19:40 退会済み
管理
[良い点] 大きなふくろうさん。 春を呼べてよかったですね。 自分を見失って自信をすっかり失くしていた大きなふくろうが、とても大切なことに気づいて本来の自分をとりもどしてゆく。そしてそこには大切な仲間…
感想一覧
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