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木星の陰陽師 ~遠い先祖に命を狙われていますが、俺の中に秘められた神の力で成り上がる~  作者: たつべえ
第一章 上杉龍穂 国學館二年 前編 第三幕 国學館の変
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第七十一話 髑髏の騎士

竜次先生と別れて平と相対する。

徳川さんとの戦いよりか人数は少ないがやるしかない。


「あれだけ人数がいたのに残ったのは四人か。舐められたものだな。」


竜次先生の攻撃を軽く躱した平は余裕の表情で俺達を見てくる。

奴を包むガシャドクロは非常に硬く突破するのは非常に困難だろう。


今の所遠距離攻撃を仕掛けてこないが

その硬い体を生かした攻撃はかなり厄介であり竜次先生も攻めあぐねていた。


「今の所奴に有効なのは龍穂の風の魔術だけや。

私達が守るからしっかり呪文唱えてや。」


ガシャドクロが先ほどと同じように腕を振るい俺達をなぎ倒そうとして来る。


「出し惜しみはアカン・・・!楓、援護は頼むで・・!」


桃子が体に神力を込めると鎧を身にまとう。

体に封印された魔王と呼ばれる者との神融和だ。


「はあぁぁぁ!!!!!」


不完全ながらも強化された体で刀を振るい、飛んできた手のひらに向けて叩きつける。


「ぐっ・・・!!!」


短い期間だが毛利先生の指導により以前よりも強い神融和を行えるようにはなったものの

ガシャドクロの強烈な一撃に耐えきれずにのけぞりそうになってしまう。


「ほんの少しでいいですからそのままでお願いしますよ・・!」


二枚の札を口に咥えて両手から大量の糸を出した楓は

桃子が受け止めている腕の関節に巻き付けそのまま飛び跳ねる。


着地したのは肘が向いている方向。

そして口を開くと式神である鎧ムカデの謙さんと大きな蛙であるぴょん吉が現れた。


「さあいくよ・・・!!」


糸を放し両手で持つと二体の式神も糸を加えて引っ張り始める。

バカ力の楓と式神達が力の限り肘を引っ張るが

腕は少しばかり動くだけで巨体を動かすまでには至らない。


「私は魔王や。こんな手なんて叩ききったる!」


神力をさらに高めると禍々しいオーラを身にまとい手と腕を繋ぐ関節に刃を入れるが

歪な音と共に刀だった鉄の棒が宙を舞った。


「なっ・・・・!?」


「宝の持ち腐れだな。どれだけ強い力を持っていたとしても

それを扱う者や道具がそれに見合っていない。


自らの実力を計れていない証拠だ。」


桃子を掴もうと引っ張れている腕がゆっくりと動き出す。


楓達も負けじと力を込めるが簡単に力負けをしてしまい

足とコンクリートが擦れる音とともに引っ張られていった。


「この姿じゃうまく使いこなせんけど・・。」


刃が折れた刀を放り投げ一枚の札を取り出しさらに長い大太刀を取り出す桃子。

鞘から出された刀身は太陽の光を反射し輝いており、特殊な鋼が使われていることが見て取れた。


「ほお・・珍しい刀を持っているな。大戦で焼失したと聞いていたが・・・・。」


取り出した刀を見て目を丸くする平。

神力を込めると刀が青く光り出し近づいてきている手のひらに向けて振り下ろした。


先程刀を真っ二つに割った硬度を持つ骨だったが

刀はコンクリートに叩きつけられており力なく落ちた骨の断面が見えた。


「流石は蛍丸ほたるまる

妖刀に名前負けしない切れ味だな。」


体の一部を失ったガシャドクロはこれ以上失うわけにはいかないと腕を引っ込める。

妖刀とは特別な鋼を使って作られた刀の事でありその種類は複数ある。


神力を込めた際に効果を発揮するものや鋼に妖怪や式神を封じその力を発揮させるものなど

一つ一つに特徴があるが桃子が持っている刀は勢い余って叩きつけられ刃こぼれをしてしまっているが

欠けた刃が青く光り出し刀身に集まるとみるみる内に再生してしまった。


「大切に使われていた刀を見た妖精が中に入り壊れないようにと再生させる妖刀。


刃こぼれどころか一番切れ味の良い状態を保ってくれる

事から手入れのいらない優れた刀と評された妖刀だがまさかここでお目にかかるとは思わなかったぞ。」


「これは主人の祖父からいただいたもんや。

何でも切ってまうからアンタの固い骸骨相手にはぴったりな刀やな。」


平に向けて蛍丸を構える桃子だが身にまとっている鎧は所々綻びが見え始めている。


「そうか、だが見たところそいつを使えば神融和にズレが生じるみたいだな。


脆い、全てが脆い未熟な奴だ。

主人はとっくに封じ込めた化け狐を支配下に置いているというのに。」


煽る平の言葉は桃子には効いていないようで姿勢は乱れない。


「あの子と私はちゃう。

物事を人より広い歩幅で歩める純恋の才能は私は持ってない。

私は私の歩幅で一歩一歩進むだけや。」


「悠長だな。それだから置いていかれる。」


煽るのを止めない平に対し桃子は苛立ちを募らせてしまっている。

精神の乱れは神力に大きな影響を及ぼす。鎧の綻びは増す一方だ。


相手の口車に乗ってしまっているこの状況は非常にまずいが俺の詠唱も時期終わる。


六連星スバル!!」


魔術を放つ前に桃子に声をかけ一度下がらせると仙蔵さんを打ち破った六連の魔術を

平とガシャドクロに向けて撃ち放った。


「来たか。流石にこのままでは防げんな。」


高威力の風の砲弾を見た平は何かを呟いた後両手を重ねる。

するとガシャドクロの体から禍々しい神力が溢れ出てきていつの間にか漆黒の鎧を身にまとっていた。


全身を覆っている事から西洋の鎧であり手には刃が両方についている剣を持っている。


「我は賀茂忠行様を守る騎士。

賀茂龍穂、主君の命により貴様を殺す。」


六連の砲弾に向かって血管が浮いたような装飾が付けられたまるで悪魔が使うような剣を振り下ろす。

六連星に少し手こずったものの剣は振り下ろされ風の砲弾は真っ二つに割られてしまった。


「なっ・・・!!!」


自慢の魔術を一撃で葬られてしまい俺は動揺してしまう。


「こいつを引き出してくるとはさすが”木星”。

だが・・・かたをつけさせてもらおうか。」


鎧を守ったガシャドクロが天に向かって剣を掲げると

配下達の小さな骸骨たちも鎧を身にまとい手には同じように禍々しい得物が握られる。


善戦していたと人形達は押されるどころかすぐに圧倒されてしまい千夏さん達に向かって進み始める。


「奥の手を隠していたね・・・。」


「どうする?あれを使う?」


「ああ、龍穂に千夏を守ると言ったのは私達だ。約束を守るよ。」


重なる骸骨の群れに三人の姿は見えなくなってしまった。


「さあ、全滅が近いぞ?どうする木星よ。」


一気に劣勢に立たされてしまった。

千夏さん達を助けに行こうにも目の前にいる平がそれを許すはずがなくすぐに倒せる相手ではない。


(クソッ・・・・!!)


焦って突っ込むのは愚策中の愚策。だが相手の出方を伺っている暇はない。


どうする・・・?いい考えが頭に浮かばない。


「俺を忘れてもらっちゃ困るな。」


こちらに向かって腕を振り上げようとしてきた

髑髏の騎士のわき腹を炎に包まれた人物の槍が刺さる。


意識外からの攻撃に耐性を崩してしまう平。

強力な一撃を不意を突かれた形になったが鎧が阻み致命傷には至っていないようだ。


「竜次先生!」


強烈な一撃を喰らわせたのは竜次先生。

奴が怯んだうちに炎をまとったままこちらに飛んできて合流する。


「本性を現したな。ここから厳しい戦いになるぞ。」


よく見ると竜次先生の皮膚が所々赤い鱗に覆われていた。

神融和をしたのだろうかと思ったが神力の変化は見られない。


「龍穂さん!!」


楓が式神をしまい合流して来る。近くにいた桃子もこちらにやってきた。


「時間がありません。早く平を倒さなければ千夏さん達が・・・。」


「焦るな。その考えに陥った時点で奴の手のひらの上だ。」


「ですが、千夏さん達が——————」


先生は楓の口の前で指を立てる。


「あいつらはそんなに軟じゃないよ。それに・・・援軍が来てる。」


そう言うと俺達の上に無数の影が出来る。

ここは屋上。太陽の光を隠す物など何もないはず。


「殺す?殺していい?」


「いいよ!アル言ってた!」


緊張感のある戦場と化した屋上に似つかないほど陽気で幼い声が聞こえたかと思うと

無数の魔術が雨のように平や骸骨たちに降り注いだ。


「・・”古き英雄”の援護か。」


髑髏の騎士は両腕で魔術の弾を防ぐがあまりの量に反撃が出来ない。

同じ様に骸骨たちにも降り注いだがガシャドクロより耐久力が低いため

すぐにバラバラになってしまった。


「ひどいじゃない。屋上にいるのなら呼んでもらわないと。」


空からひと際大きな妖精に抱かれてやってきた人物。


「よく来てくれた。」


「当然よ。私も暴れ足りないの。」


まるでガラスを扱うようにゆっくりと降ろされ足を付けたのはエプロン姿の女性。


「助けに来たわ。」


先程まで寮を守ってくれていた寮母であるアルさんの姿がそこにはあった。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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