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第七話 見定め

毛利先生と楓と共に廊下を歩いていると前から制服を着た二人組がやってくる。


「あっ!!春先生~!!!」


紺のブレザーにチェックのスカートを履いた女子生徒達。

慣れ親しんだ感じで毛利先生を呼ぶところを見るとこれから体育館を使う三年生なのだろう。


「あら、ちーさん、ゆーさん。これから武道の授業ですね?」


「はい。上泉先生に稽古をつけてもらいます。」


「いつも通り春先生が良かったんだけどな~。」


黒髪短髪の真面目そうな人と金髪でくせっけのボリュームのある長髪をなびかせた

お揃いのペンダントを身に着けた二人組。


俺達を案内するためにいつもとは違う先生と武道の授業を受けているようで

金髪の生徒は頭の後ろで手を組んで文句を言っている。


「丁度いい。お二人に転校生を紹介します。」


毛利先生俺たちの姿を二人に見せる。


「二年生の上杉龍穂君と一年生の加藤楓さん。

三年生のお二人とは国學館高校で共に過ごす時間は短いでしょうがこの先の人生で

深く関わるかもしれません。ご挨拶をお願いします。」


「う、上杉龍穂です。」


俺は緊張気味で挨拶をしてしまう。


「・・加藤楓です。」


その姿を見た楓は少し遅れて挨拶をした。


「三年の三条千歳さんじょうちとせです。」


「同じく佐渡由美さわたりゆみ!!ゆーって呼んでね!!!」


冷静な千歳さんと元気な由美さん。

見る限り真反対の性格でデコボココンビのようだがうるさいと突っ込む千歳さんと

痛がる由美さんを見る限り仲はよさそうだった。


「んも~!!痛いよ~!!!」


「転校生が来たからってはしゃぎすぎだ。」


突っ込みを入れた後、千歳さんが俺の方をじっと見つめる。


「・・何か飼っているね。」


何かぼそりとつぶやくと俺の頭に手を伸ばしてくる。

いきなりの事で身構えるのが遅れ防御も出来ずに手を受け入れそうになるが

楓が素早く俺の前に立ち千歳さんの手首を優しく受け止める。


「・・何をするつもりですか?」


「おっと。ごめんごめん。気になっちゃってさ。」


千歳さんは謝りながら手を引っ込める。


「従者つきか~。いいとこの坊ちゃんみたいだね。」


「八海上杉家の出身ですよ。確かに位は高いですが、

実力は折り紙付きです。お二人と戦ってもいい勝負をするでしょう。」


「ふ~ん。」


由美さんが再度頭に手を組みながら俺の方を見つめる。


「そんな風には見えないけどね~。」


どうやら機嫌を損ねてしまったようだ。

毛利先生から高い評価を受けているのが気に障ったのだろうか?


「じゃあさ。何か見せてよ。」


そして無茶ぶりを振ってくる。


「ゆー。」


「いいじゃん。手っ取り早く実力がある所を見たいな~。」


一目で実力があると分かるもの・・・・。

考える間もなく一つの方法を思いつく。


(青さん。お願いできますか?)


龍である青さんを使役していると見せることが出来れば納得してくれると思うが

こういった時に出てきてくれた覚えがない。


(・・わかった。)


無理なお願いだと思っていたがなんとあっさり承諾してくれた。

面倒な状況を察してくれたのだろうか?


人の姿の青さんさんが俺の隣に出てきてくれる。

腕を組んで二人を睨みつけているが楓と同じような背丈で童顔なので威圧感はあまりない。


「・・・・これが君の実力?ただの小さい女の子じゃん。」


由美さんがそう言いながら青さんの頭に向かって手を伸ばし

頭を撫でようとするが上から飛んできた手刀が金髪の頭を捕える。


「いっ・・・・!!!」


先程の突っ込みより威力が高くもろに食らってしまった由美さんが頭を押さえながら蹲ってしまった。


「何すんのさ!!」


「・・・龍だ。」


由美さんは青さんの見た目だけで弱い式神と判断したようだが

千歳さんはその中身に気付いたようで青さんをじっと見つめている。


「すごいな。日ノ本中を探しても龍を使役している

奴なんて十人いるかどうかだぞ・・・・・。」


「言ったでしょう?実力は折り紙付きだと。」


青さんを龍と認識し、その希少を理解している

千歳さんの神道の実力の高さがうかがえる。


悔しいのか由美さんが何とか青さんに触れようと涙目で屈みながらゆっくりと手を伸ばすが

それを見た青さんが太い尻尾を生やし由美さんの体を縛るように巻き付ける。


「へ・・?」


いきなりの事に対応できなかった由美さんは何もできずに体を固定された。


「ふん・・・。」


それを見た青さんはバカにするように鼻を鳴らしながら笑う。そして・・・・・。


「なっ・・!?」


口から水を吐き出し由美さんの顔に噴き出した。


「・・・・・・ふふっ。」


驚いた由美さんは俯きながら笑い始める。

それが本心からの笑いなのか、それとも苛立ちから来るものなのか。

分からなかったが答えはすぐにやってきた。


「・・殺す。」


どこから取り出したナイフを目にも見えない速さで青さんに向けて突き出す。

千歳さんに痛めつけられ青さんに煽りともとれる水鉄砲を浴びせられ怒りが頂点に達したのだろう。

だが青さんに到達する前に前にいた楓のクナイがナイフの一撃を阻んだ。


「ゆー、やめな。相手が悪いよ。」


「こいつ私とやりたいって言ってんだよ?そんなら受けるしかないじゃん?」


怒りが頂点に達した由美さんの一撃は楓をドンドンと押し込んでいく。


小さい体だが俺をしのぐほどの力自慢である楓を押し込むほど剛腕。

国學館で三道を鍛え抜かれた実力がこれだけも分かる。


「・・龍穂。」


青さんが由美さんの方を向きながら俺の名前を呼ぶ。

応戦してこの二人に実力を示せという事なのだろう。


俺は答えることなく札から刀を取り出す。

室内での大太刀は壁や天井にぶつかる可能性があり振るうだけでも神経を使うだろう。

それに由美さんが使っているのはナイフだ。得

物を振るいにくい中、間合いを詰められてしまえばやられてしまうだろう。


「いいねぇ・・・。」


音を立てずに刀を出したつもりだが由美さんが既に気付いておりナイフを払って後ろに飛んでいる。

楓と距離を取り、ナイフを前に構えて俺へ殺気を放っていた。


鋭い殺気だ。

獣が息をひそめ、得物を狙っているような粛然たる殺気。


まるでここが由美さんの狩場だと感じてしまう。

ナイフを構えただけで辺りの空気を変えてしまうほどの異様な殺気は

歳が二つしか離れていないはずの由美さんが歴戦の戦士たる威圧感を感じさせた。


「・・・・・・。」


鞘に納めている刀を柄を握りしめるが体が構えようとしない。


本能で分かっているのだろう。

抜こうとした瞬間、距離を詰められやられる。

だが抜かなければただやられるだけ。由美さんが反応できないほどの刹那の抜刀が必要だ。


鞘を握っている手の親指をゆっくりと動かし鍔に指をかける。

狩場の中で大きな動きを見せればひとたまりもないだろう。

音を立てないよう、時間をかけていつでも鞘から刀を抜ける状態まで持っていくことが出来た。


抜刀すればやられる。だがしなければならない。

この矛盾したような状況を打開できる方法はただ一つ。


腰を屈め、居合の態勢を整える。

兄貴から教わった居合であれば間合い近いナイフでも対応ができるだろう。


俺がゆっくり構えをとったのに由美さんは気付き殺気がより鋭いものへと変わっていく。

緊張で埋め尽くされたこの空間の中、はち切れたように由美さんが俺の方向へ飛んできた。


縮地の勢いはすさまじく俺の懐へと飛び込んでこようとしている。

だが体は反応しており腰を最小限の動きで捻り刀身を鞘から取り出す。


通常の居合であればこれでナイフを受け止めるが俺が習った居合は少し違う。

足の裏側に魔力を込め、由美さんの体目掛けて刀を振るおうとしたその時。


「!?」


手で握っている柄の先を誰かに抑えられ刀身を由美さんに向けることを阻止される。

このままではナイフが俺の体を貫いてしまうが黒い影が目の前に現れ

その瞬間何かが地面に落ちたような音が廊下に響いた。


「ぐえっ!!!」


間の抜けた声と共に目の前の影の足元に金色の何かが落ちてきたのが見える。

何が起きたのか確認するため前を見るとそこには由美さんを地面に叩きつけたであろう

毛利先生の姿があった。


「なかなか見ない転校生に興味を示すのは分かります。

その式神に煽られかなりの手練れとなれば手を出したくなるでしょう。

ですが彼らの正式な転入は明日。ここで痛めつけて若き芽を摘んでしまうのはいただけませんよ?」


由美さんの縮地は相当な勢いであり目の前で構えていた俺でさえ反射で反応するのがやっとだった。

その向かってきた体を地面に叩きつけるのは相当な反応と技術が必要だろう。


あれだけの殺気を放つ人の授業を受け持てるほどの技量を目の前で見せつけられた。


「残念だったな。」


廊下にひっくり返っている由美さんに向かって千歳さんが声をかけながら手を差し伸べる。


まるで夏の地面にひっくり返っている蛙の様な姿になっている由美さんは

スカートが豪快に捲られ次の武道の授業に備えていたのだろう体操着の短パンが露わになっていた。


「もう!!散々だよ!!!」


差し伸べられた手を文句を吐きながら払うと頭の横の廊下に両手を付けて跳ね起きる。


そしてすぐさま青さんの方へ向くとまるで獣のように唸りながら威嚇していた。


「目を付けたからね!!次は逃がさないよ!!!」


刃を交えようとしていた俺ではなく青さんを獲物として認識したようで

宣戦布告をした後、ふてくされながら体育館に足を進める。


「はぁ・・・。」


振り回された千歳さんはため息をつきながら由美さんの後を追って歩いていくが、


「・・・・・・・・」


体育館に向かっているはずの二人の目線がこちらに向いている。

それは先ほど宣戦布告をした青さんに向けているものでは無く

明らかに俺を突き刺すような鋭い眼差しだった。


「厄介な奴らに目を付けられたの。」


「・・青さんのせいでね。」



誰もが怒ってしまうような大胆な煽り。

青さんもここまでになるとは思っていなかったかもしれないが、

どう考えてもやりすぎだ。


「・・青さんと言いましたね?」


由美さんの前に立っていた毛利先生が青さんの方へ向く。


「お弟子さんを鍛える名目であのような事をしたのかもしれませんが

ここにいる者全員が手練れとして入学しその上鍛え抜かれた者ばかりです。

あまり横暴が過ぎれば大切なお弟子さんが潰されてしまいますよ?」


説教と言うよりかは注意喚起と言ったところだろうか。

毛利先生は俺の身を案じてくれている様だった。


「その様じゃの。次からは気を付ける。」


もしナイフが俺の元へ届いていたとしても一撃目は居合でいなすことは出来ただろう。

だが俺の居合は自ら距離を詰める。

刀の間合いで戦う刀術は持っているが反射でした対応できないほど鋭いナイフを使える由美さんであれば

距離を詰める際の隙を突いて俺の間合いの内側へ踏み込んでくるだろう。


そうなれば流石に分が悪い。やられるのは時間の問題だ。


「龍穂君も肝に銘じておくように。

あなたが買った喧嘩ではないとはいえ無駄な争いはなるべく避けるようお願いします。」


「・・分かりました。」


毛利先生の言葉を肝に銘じる。

このまま入学すれば先輩となる二人に失礼なことをしてしまった。

次会った時はしっかりと謝らないといけない。


「では、向かいましょうか。」


色々あったが教室へ向けて歩みを進める。


「・・大きくなったもんじゃな。」


「・・?」


青さんが何かぼそりとつぶやいた気がしたが聞き取れなかった。



__________________________________________


校内を進み教室の扉の前に立つ。


「まずは龍穂君から行きましょうか。」


移動してきた階層は二階。ここが二年生の教室だ。


だが学年を現す数字しか書かれておらずクラスの表示はない。


「二年生の総数は二人となっています。

これから一年以上を過ごす仲間になりますので最初の挨拶は肝心ですよ?」


「・・二人?」


思っていた以上の少数であり思わず毛利先生に聞きなおしてしまう。


「ええ。元は十人以上のクラスでしたが実力が追いつかず

退学していった生徒が多く出てしまいましてね。残ったのは二人となってしまいました。」


「三道省からの推薦でもそれだけの人数しか残らなかったんですね。」


俺の素直な感想を聞いた毛利先生は黙ってしまう。

その姿は言葉を選ぶために考えているように見えた。


「・・実力を示す。それは我々教師だけに見せるだけはありません。」


毛利先生の言葉を俺を理解が出来ない。


「・・・・・?」


「すぐに分かりますよ。大変だとは思いますが頑張ってください。」


そう言いながら毛利先生は教室の扉を開ける

この教室に入ったらそのわけがすぐに分かるのだろうか。


「授業を始めます。ですがその前に・・・。」


教壇に立った毛利先生は扉の前に立っている俺を見て入ってこいと促す。

俺はその指示に従い静寂が流れる教室へと足を進めた。


整理整頓された教室に置かれた二つの机。

以前通っていた高校の教室と同じような大きさであり特別大きくは無いはずなのだが

それが不必要なほど使われていない部分が大きく違和感を感じてしまう。


二つの机には行儀ただしく座り見るからに優等生と思われる赤い髪でショートカットの女子生徒と

足を崩し怪我をしているのか頭に包帯を巻いて頬杖をつきながら俺を睨みつけている

見るからに不良と思わる男子生徒が座っていた。


「転校生です。自己紹介を。」


「上杉龍穂です。八海から転校してきました。」


二人に向かって自己紹介をするが男子生徒は表情一つ変えることなく俺を睨み続け

女子生徒は机の方を向きながら目を瞑っている。

片方からは敵意。もう片方は興味なし。どう見ても歓迎されてはいなかった。


「新しい仲間になります。”仲良く”お願いしますね?」


毛利先生は黒板に俺の名前を書き終えると、

座っている二人に向かって仲良くという言葉を強調するように言う。


「・・・そりゃ、そいつ次第ですよ。」


睨みつけてきた生徒は札から槍を取り出し石突で地面を叩く。

そして立ちあがり、強い殺気を放ちながらこちらへ歩いてきた。


先程受けた由美さんとは違い辺り全体にまき散らすような殺気は

この場にいる俺以外の二人を押さえつけ俺に逃げるなと言っている。


「転校生だがなんだが知らねえが・・・俺は弱い奴が嫌いだ。」


男は槍の先を俺の顔を向ける。

使い慣れた得物なのだろう。鼻に当たらないギリギリで止められた所を見ると

間合いを完璧に把握しており槍の刃はしっかりと砥がれ傷一つない。


「強いのか弱いのか・・どっちだ?」


顎を上げてこちらを見下してくる。毛利先生が意味がよく理解できた。


退学していった生徒達はこの男に実力を示すことが出来ず心を折られここから去って行ったのだろう。


そして生き残ったのが座っている女子生徒。

槍を持っているこの男からの殺気に反応していないが

薄目を開き、俺がどうするか様子を伺っていた。


「・・・・・・・・・・」


横にいる毛利先生は動く気配を見せない。

先程の頑張ってくださいと言う言葉は、ここを乗り越えてくれと言う意味なのだろう。


俺は言葉を発することなく札から刀を取りだし

刃を鞘から抜く勢いを利用し目の前の槍を叩いた。


「・・やるってことでいいんだな?」



わずかな腰と手首を動きを使い最短で対応したが男は驚く素振りすら見せず

当然と言わんばかりに俺に戦いの意志を確認する。


「ああ。」


こいつに実力を示さなければここでの生活を乗り越えることはできない。

そうなれば楓一人を東京に置いて俺は八海へ帰ることになってしまう。

他に立ち向かう理由はいくらでも思いついたがここで引き下がる理由は何一つ浮かんでこなかった。


俺の承諾を聞いた男は何もしゃべることなく日差しが差し込む窓へ向かって歩いていく。


そして窓を開き、窓枠へ足をかけると外へ向かい勢いよく飛び降りた。


「・・すみません。行ってきます。」


毛利先生へ振り返り謝罪の言葉を伝え窓へと歩いていく。

男と同じように窓に足をかけるがこのまま何もせずに飛び降りれば俺の両足の骨は

砕けてしまうだろう。


(魔術は・・・制御が怖いな。)


力が増幅した魔術で着地のアシストをすれば

力加減を間違え下手をすれば戦えないほどの怪我を負ってしまうかもしれない。


「・・木霊。」


あまり変化のなかった神力であれば問題ないだろうと木霊を呼び出し窓から飛び降りる。


固く舗装されたコンクリートに落ちていき下に行くにつれて勢いを増していくが

木霊が使った黒い風の神術により勢いが落ちていく。


「ちょっ・・・!?」


下から風で押し上ふわりと着地できると思ったが鬼との戦いで見せた黒い風の勢いは強く、

勢いを弱めるどころか宙へ浮かび上がってしまう。


急いで木霊の方を見ると分かりやすく焦っており

思っていた以上に神力が強くなっている事を示していた。


「落ち着け・・・。」


何とか体勢を立ちなおし近くで焦っている木霊の頭をゆっくりと撫でる。

念話による意思疎通で落ち着かせるように言葉をかけるのも有効な手段の一つだが

それは木霊の精神状態が安定していないと効果を発揮しない。


俺の焦りを感じさせないよう体温を分け与えるように

手のひら全体でゆっくりと触れ落ち着きを分け与える。

意識外の感触に驚いた動きを見せた木霊はすぐに俺の方を向くが何とか作り上げた

笑顔を見てすぐに風を何とかしようと冷静に制御を始めた。


黒い風が徐々に弱っていく。

その様子を眺めながら俺の頭にある疑問が浮かび上がってきた。


通常の風魔術では出てこない黒い風。特殊な木霊の体の色と同等の風だがこれは一体何なのだろう。

あの鬼を倒した時点で俺の封印は解けていたはず。

解けた封印で変わって俺の力によって木霊が使えるようになったのか。

それとも木霊自身の力が変化したものなのか。

それを暴かなければこの力強い風の力を信頼して使うことが出来ないだろう。


コンクリートの上に降り立ち校舎から見えていた運動場に向かって歩き出す。


「特殊な木霊みたいだが、力を操れていないみたいだな。」


先に降りた男は俺が降りる様子を見ていたようで

木霊が放つ風の神術の事もしっかりと確認されていた。


「期待外れだな。いくら特殊で力の強いと言っても木霊の体の中に入る神力や魔力には限度がある。

潜在能力を買われてスカウトされたみたいだが、そんな奴を操ることが出来ない奴は

この学校では生き残れねぇ。」


奴は槍を持ちながらため息をついている。

今までに自分が相手をして希望を持ってやってきた生徒達と同じく

こいつも自分との力の差に心が砕けてしまうだろうなんてことを思っているのだろう。


「・・・・・・・・・」


だが一つのアクションだけで俺の実力を見抜く観察眼は本物だ。

それに槍を手に持った時の雰囲気は強者そのもの。こいつを納得させるのかなり難しいだろう。

だが俺にはここに居なければならない理由がある。


歩きながら札から取り出したベルトを腰に巻く。

腰に刀を差すことが出来るベルトでありこれを使えば居合の初速を上げることが出来る。


「刀・・・居合使いか。

槍を持っている俺相手に抜刀すらせず前に立つなんて

なかなかの大馬鹿もんだが・・・心意気だけは褒めてやる。」


そう言うと奴は槍を構える。


「・・・実力、見せて見ろ。」


この国學館にふさわしいかの戦いが始まった。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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