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第四百八十八話 ルルイエの破壊

「負傷者は退け!!!」


二体の神。イソグサ、そしてゾス=オムモグの神を前にして徐々に後退を始める。

始めは押し込んでいた。圧倒的物量、そして粒ぞろいの強者達。

あらゆる面で圧倒していたはず。


「・・かなり少なくちゃったわね。」


だが蓋を開いてみれば前線に立つ人数は限られてしまっていた。

軽傷から重症。命を落とした者もいる。これ以上の消耗は致命傷だと判断した竜次。

厳しい現実を突きつけられている長達は次なる手を模索していた。


「どうする気ですか?数が少ないのにも関わらず、我々には打開する策が無い。」


「打つ手はいくらでもあるんだけどね・・・・・。」


欠けているのは勝負手。止めの一撃をいくら放とうとも立ち上がる神々に

打つ手がない。人数は欠けていてもまだ戦えるほどの戦力は有しているが、

このまま戦ってもじり貧になることは長達も理解している。


「・・龍穂君達に賭けるつもりですか?」


春の口から出たのは新たな戦力の加入。これまで明確に負傷者を下げなかった竜次が

動いたの理由がそこにはある。


「春。そんな言葉を彼らに掛けるな。この状況を変えるにふさわしい戦力だ。」


「それ分かっています。ですが、敵の術式を我々は把握していない。

そんな中で彼らに託すのはあまりに酷です。賭けという部分は彼らの実力に対して

疑問を抱いているのではなく、我々の不手際を彼らに押し付ける事に対してです。」


少しでも有益な情報を龍穂達に与えられていればもっと楽に進められた。

それは龍穂達の増援だけではなく、これまでの戦いも含まれている。

情報収集なんてしている暇があるのなら押し切った方が早い。


「春、そう言わないで?私達も同意したでしょう?」


「責めているわけではありません。ですが、目の前の現実を受け止めなければならない。

賭けであるのなら、我らもそれ相応のリスクを負う必要がある。

盤石な策であるのなら、彼らへの援護に全力を尽くさなければならない。」


「・・そうですね。敵が強大であればあるほど認識の差は大きな隙となる。

立ち回りの方針を固めましょう。そうしなければ全滅も見えます。」


竜次達をそこまでにさせたのは別の戦場にいる兼定と賀茂忠行の両名。

早く援軍として向かわなければならない状況は焦りを与えていた。


「・・・・・来たよ。」


後悔などしていられないと、竜次は方針を打ち出そうとしたその時。

影からちー達が姿を現す。


「良し・・・。龍穂はどこだ?」


「いないよ。龍穂にはやることがあるからね。」


ちーの報告を受けた竜次達はわずかな動揺を見せるが、すぐさま立て直し

その詳細について尋ねる。


「やる事ってのは・・・なんだ?それによって俺達は行動を変えなければならない。」


「ルルイエを破壊するつもりらしい。」


「ルルイエを・・・破壊?」


「・・龍穂は倒れない神達の謎がルルイエにあると思ってるみたいや。

それなりの根拠もあるからな。」


とある部屋で見た陣の詳細を同行していた純恋が竜次達に伝える。


「・・・・・なるほど。」


「効果が無ければこっちに来る。あれば・・・・・兼定さんと所に行く予定や。」


ルルイエがあの体に宿る神力の供給源になっていたとしたら筋が通る。

だが、竜次達の頭に一つの疑念が浮かび上がった。


「・・出来るのか?あの巨大な島を破壊するなんて事・・・・・。」


「まあ、大丈夫やろ。あいつが言って出来んかった事無いし。」


そんな事よりと、一人で戦う事にぶつくさ言う純恋を呆れながら見つめる。

勝敗どころではない。生死や国の存亡がかかっているにも関わらず、いつもの様に

文句を垂れる姿はここで苦戦を強いられてきた竜次達に余裕を与える。


「・・ったく、よくそれを許したな。」


いつもの様にツッコミを入れる竜次を見て、長達に笑みがこぼれる。

龍穂への絶対的な信頼。クトゥルフの神々と戦ってきた竜次達では出てこない信頼は、

縮こまっていた視野を生む。


「お前達の部隊の長が決めた事だ!それでいい!!」


その選択が正しいのか。または間違っているのかなどはどうでもいい。

混沌とした戦場で可能性を生むのは間違いなく若き芽である龍穂達。

その若き芽を支える役目として、自分達はここにいる。


「俺達は俺達の役目を果たそう!!!」


教師としての立場が自らの成長させた。そう実感した竜次達は得物を握り、

二体の神と相対する。


「別に龍穂が来る前にやっちまってもいい!!それが終われば後は・・・忠行だけだ!!!」


自らを、そして味方を奮起させる咆哮を上げると、残された部隊が鬨の声を上げる。

未来を担う生徒達のためにと、再び神々へと飛びかかった。


——————————————————————————————————————————————————————————————————————————————————


「・・・・・・・・・・・・。」


全員を見送った後。瓦礫をどかして遺跡の外へ出る。

見たことの無い植物。禍々しい神力。これが神代から海底に沈んでいたという事を

まざまざと見せつけられる。


『無様だな。』


その光景を俺と共に見たハスターが小さく呟く。


「無様?」


『この惑星を侵略すると息巻いた奴の行きつく所がこの小さな島だ。

遺跡を見るに、あれを星の王としての台座にするつもりだったのだろう。

形から入る奴らしい結末だ。』


こうして浮かんできたことを考えると、クトゥルフ自らが作り上げた人工島なのだろう。

地球に降り立ったクトゥルフが自ら立てた島だと考えると、

ハスターの言う通り少し物足りなく感じてしまう。


「まあ・・・言いたいことは分かるよ。だけど・・・・・。」


神力での空気操作を行った事で初めて分かる感覚。

この島には・・・・・とてつもない神力が蓄えられている。


「クトゥルフがこの島を重要な拠点として考えているのがよく分かるよ。

だからこそ、こうしてこんな無防備に放置しているのが気になるな。」


『どうだろうな。奴がそこまで考えているのか分らん。

重点を置いているのは同感だ。だが、そこに意図があるのかどうかはここまで来てしまえば

関係は無いだろう。』


向こうのみんなが苦戦している理由がルルイエにあるのなら、

何があろうと破壊しなければならない。例え賀茂忠行が俺達のルルイエの破壊をさせようと

目論んでいたとしても、これ以上この戦況を長引かせては勝負が決まってしまう。


「・・そうだな。」


『後手に回り続けることが悪い事だと思うな。お前達は全て対応してきている。

考えを変えろ。もし、ルルイエの破壊が奴の策であれば確実にここが肝だ。

それをいなせれば、我らの勝利はさらに近づく。』


居城、そして台座を捨てる意味を考えれば奴の行動の肝だと言うのは理解できる。

闇に踏み込む決断を決め、宙に浮かぼうと空気操作したその時。

俺の足首を誰かが掴んで来た。


「・・・・・!!!」


俺が一人になったタイミングを見計らっての奇襲かとすぐさま足元を確認すると、

そこには見慣れた顔が影から俺の方を見つめてきていた。


「・・私ですよぉ。」


偵察に行っていた知美の姿がそこにはあった。だが、いつもと変わらない姿ではなく、

酷く傷ついた状態で俺の足首を必死につかんでいる。


「知美!!!」


一体何が起きたのかと浮くのを止め、出てきた知美の体を支えようと手を伸ばす。


「どうした!向こうで何があった!?」


「大丈夫ですよぉ・・・。こう見えて、体は丈夫ですから・・・。」


知美は俺の手を払い、傷ついた体でフラフラと影から出てきて俺の前に立つ。


「ひとまず、兼定さんの状況をお伝えします。」


休めと言いたい気持ちを必死に抑え、知美の決意を無駄にはしないとじっと見つめる。

やはり・・・援護に向かわなければならないのは兼兄の方だったか・・・・・。


「私の体を見て劣勢だと思うでしょうが、あの人はかなり良くやってくれています。

前回コテンパンにされたのに比べればはるかに良い・・・。」


「・・それでも、劣勢には変わりないんだろ?」


悔しそうにうなずく知美。もしかすると、兼兄の力に少しでもなりたいと

行動を起こしたのかもしれない。


「・・・・・ええ。ですが、まだ耐えられるかと・・・。」


「耐えられる・・・か。」


そんな言葉を聞けば援護に向かうしかない。いち早くルルイエを破壊しなければならないと

知美に感謝を伝え、一度退かせるために影に潜らせる。


「安心しろ。後は俺に任せて治療に専念してくれ。」


「お断りしたい所ですが・・・このまま戦場に立っても足手まといなのは私でも分かる。

未熟な自分への罰として、ここは一度退く事にします。」


そんなことは無いと優しく頭を叩き、影に沈む知美を見送る。


『一度は敗北を喫したとはいえ、奴も旧支配者の一柱という事か。

龍穂、分かっているだろうが・・・早急に行くぞ。』


もう迷っている暇はない。知美が命懸けて取ってきてくれた情報を無駄にしてはならないと

体を浮かせ、ルルイエの上空へと飛び立つ。


『さて、どうやってルルイエを破壊する?小さいとはいえ、古に繫栄したクトゥルフの拠点を

粉々にする術を、お前はどう頭の中で練り上げる?』


生半端な攻撃では全てを壊す事など出来ない。島一つを破壊するほどの一撃を想像した時、

思い浮かぶのは地球の歴史上でも最大の悲劇と言っていい事件しかない。


「・・・・・・・・・・・・。」


紀元前。この時代に神が存在していたかは分からないが、人類が文明を発展させる遥か前。

この地球の支配者は巨大で、強大な力を持つ恐竜達だった。


「・・悪魔の尻尾チクシュルーブ。」


そんな彼らを絶滅まで追い込んだ悲劇。それは直径十~十五キロメートルに及ぶとされている

巨大な隕石。その一撃は辺りの環境を変化させ、対応できなかった恐竜達は全滅したと

言われている。それほどまでの一撃であるのならルルイエを破壊できると確信した俺は

頭の中でイメージを練り上げると、俺の遥か上空に空気で作り上げられた隕石が姿を現す。


「堕ちろ。」


全てを破壊する悪魔の一撃がルルイエに向かってゆっくりと動き出す。

その動きを移動しながらゆっくりと見つめながら、忠行との決戦に向けてのイメージを

練り上げ始めた。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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