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第四百四十話 重なり合う因果

『まずは我らの因果から話しましょうか。』


泰兄が命を落とした原因。その因果を語るために口を開く。


『我ら土御門家は代々・・・賀茂忠行への支援を送ってきました。

長きに渡り手を汚し続けた理。それは・・・安倍晴明の魂が奪われていたからなのです。』


土御門家は安倍晴明の血を引いた名家。

竜次先生達から聞いた白の過去。その過去で出てきた土御門家が手を染めていた理由が

ここで明かされる。


『偉大な先祖が日ノ本を脅かす者に魂を奪われている。

そんなことが神道省、当時の陰陽寮に知れれば地位を追われるのは確実。

それを世に出さないため・・・仕方がない事だったのです。』


泰兄はこちらをじっと見つめながら静かに語る。

まるで・・・俺に否定しろと眼で訴えてくるように。


「・・・・・それは違う。」


『ええ、そうです。そんなことはあってはならない。

ですが既に代々受け継がれてきた秘め事についてはもうどうしようもない。

長年受け継がれてきた罪は因果となり、子孫達に罪として襲い掛かってきた。

その罪を背負う事が・・・私の運命であったのは分かりますね?』


俺と同じだ。生まれてきた時点で背負う運命がある。

俺の場合、それを自覚することが遅くなったが、海外で研究をしていた泰兄は

幼い頃からその因果を背負ってきたのは間違いない。


『こんな運命、出来れば背負いたくはない。ですが逃げられる環境ではない。

罪だと知りながら罪に手を染め続ける命運だった私に起きた出来事・・・。』


「・・兼兄達があの研究所を襲った。」


『・・・・・よくご存じで。』


竜次先生からどこまで語れているかを知っていない様であり、

俺の受け答えからどこまで知っているのかを探っている。


『私はその状況から逃れられる機会を兼定からもらった。

そして・・・私の運命、因果を断ち切る旅に出る事が出来たのです。』


クトゥルフを倒すことは賀茂忠行を倒す事。それは同義であり、

泰兄は自らの運命と戦う旅に出る事が出来た。

だが・・・その因果が断ち切れなかったことを、俺達はその身で理解している。


『結末についてはあなたもご存じ。ですが・・・私は分かってしまったのです。

この因果は決して自らの手で断ち切ることができないと。』


この人が諦めるほどの何かを見たという事なのだろう。

それを知りたいが・・・長くなる話しなのは分かっている。

深く探ることは避け、ただ黙って泰兄の言葉に耳を傾けた。


『長きに渡る罪を断ち切るには・・・ふさわしい人物がいる。

賀茂忠行と戦い続けてきたぐらいではないと・・・・・この穢れた血で編まれた因果を

断ち切ることはできないと。』


「それが・・・俺って言う事なんだな?」


泰兄は悲しそうな表情で黙ってうなずく。


『・・・・・いえ、実はもう一人だけいたのです。私の因果を断ち切る者が。』


泰兄の言い分だと、俺しかいないはず。

理想と言い分が合わない。こんな時は・・・現実を見る事でその理由が分かる。


「・・・・・賀茂忠行か?」


『ええ。我らは賀茂忠行に手を貸していた。その発端も彼。

であれば・・・原因を作り出した者も因果を断ち切ることができる。』


大きなため息がこの部屋に響く。それは俺ではなく、泰兄によって生み出されていた。


『私の望みとしては・・・あなたに殺されたかった。それが道理であり、

命運であると思っていた。ですが・・・幼い貴方が私の引き留めようと涙をこらえている姿。

その姿が脳裏に浮かびあがった時、命を失い取り戻す記憶があなたにさらなる悲しみを

与えるのが分かってしまった。

それを理解した時、あなたを戦闘不能に追い込んでしまったのです。』


なんて・・・優しい人だ。死を迎えた後のことまで考えてしまうほどの心の優しい人。

あの時、俺は追い込まれていたのではなく、救ってもらっていたんだ。


『今となっては後悔していません。あなたに私の罪を背負わせることなく

因果を断ち切る方法があるのであればそうするべきだったと。

そして・・・その結果が因果と言う形であなたと再会できた。

初めからこうすれば良かったのだと心から思っています。』


泰兄はそうは言っているが・・・・・俺達は生きていて欲しかった。

因果など気にせず、俺達の仲間として共に戦ってほしかった。


『・・・・・申し訳ございません。私情で話をそらしてしまいましたね。』


俺の悲しそうな表情を見て、泰兄はすぐさま話題を元に戻す。


『私の因果とは、賀茂忠行に手を貸していた事。それを断った事でその因果は断ち切られた。

ですがその代わりに、新たな因果が生まれたのです。』


「新たな・・・因果?」


『これを語る前に、あなたの因果の説明をしておきましょう。

貴方の場合は・・・既に身に染みて分かっているはずです。』


俺の因果。それは代々賀茂忠行の命を狙われてきた事だ。

罪に手を染めてきた者との戦う使命であり、泰兄とは性質の違った因果。


「・・賀茂忠行との因果。」


『そうです。あなた方一族は先祖と戦う命運にある。

賀茂忠行との戦いに勝利するため、全国各地を渡り歩きありとあらゆる強者と血を交えてきた。

賀茂忠行、そしてそれに付随する罪を犯した一族の因果を断ち切るのはあなたしかいない。』


・・何故俺なのか。親父から話を聞き、全てを知った上でもそう思ってしまいそうになる。


『例えあなた以外の人物が賀茂忠行を倒したとしましょう。

ですが・・・これまで生きてきた傑物です。自らの身を隠す方法などいくらでもある。

命辛々生き残り、他の者に龍穂の命を奪う様に差し向ける事も出来ると言う事です。

長きに渡る年月で奴が伸ばした根はかなり深い。断ち切るのはほぼ不可能。

ですが・・・・・あなたは違う。』


賀茂忠行の命は残り少ない。その命を伸ばす方法は俺の血肉を啜るのみ。

そんな俺が前に出てくれば奴も全ての力を使い命を奪いに来る。

深く伸ばした根を全て使う事もしてくるだろう。


『龍穂。あなたがこれまで身を挺して因果と戦ってくれたからこそこの場がある。

それだけは間違いようの無い事実である事だけは理解していただきたい。』


「それは分かったけど・・・なんで龍脈と繋がるんだ?まだ何も・・・。』


まだ全てが繋がっていない。答えを焦る俺に近づきながら、泰兄は再度語る。


『兼定の話しをしましょう。彼は・・・私と似ている。

あの研究所の一件で両親が命を落とした。賀茂忠行によってです。

直接かかわっていないとはいえ、彼もまた賀茂家に命運を変えられた一人。

彼は・・・賀茂家に復讐を企んでいました。』


賀茂家・・・。それは俺も含まれている。


『旅が始まる前。彼は・・・龍穂の命を奪おうとした。

それは一時の気の迷い。全ての元凶に自らの憎しみを押し付けようとした未熟な若者の過ち。

ですが・・・それは必然でもある。龍穂の命を奪えば全てが終わる。

千仞はいずれ頭を失い、自らの家族を奪った日ノ本の闇全てさらけ出されるのですから。』


「でも・・・それじゃあ・・・・・。」


『日ノ本は大きく揺らぐことでしょう。ですが、未熟な兼定はそんなことまでは頭が回らない。

いえ、回らなくて当然なのです。その場にやってきた影定さんに止められ

何とかその場は収まったのですが・・・旅が始まった後も、彼は賀茂家そのものに

大きな恨みを抱えていました。』


今の姿からは想像できないが、十二、三歳にそんな事を目の当たりにすれば

恨みを抱えるのは泰兄の言う通り当然な事だ。


『ですが・・・白との旅や帰国してからの龍穂を過ごすことによってその恨みは無くなり、

賀茂忠行一人に恨みは向けられることになった。

家族を奪われたことで生まれた因果。それが兼定を縛る因果なのです。』


一度命を奪われかけた事は確かにショックだが・・・仕方がない事だと受けいれられる。

白の旅路・・・。泰兄が残してくれた資料の中に少しは書かれていたが、

この戦いが終わったら、深く聞いてみたい。


『これらを自らの口で語りたくなくて、あの男は私に全てを託したのでしょう。

まったく・・・。死人に口なしと聞いていたのに、話しが違うではないですか。』


ぼそりと文句を垂れる泰兄。兼兄は面倒ごとに対し、真正面から対処すると思っていたが

信頼できる兄弟にはこうした押し付ける一面があることを見れて少し嬉しい。


『さて・・・まとめに語りましょう。全ての因果が重なった結果、

何故私がここにいるのか。そして・・・その意味を。』


これら全てが編み込まれた事で生まれたこの状況。その答えとは一体何なのか。

泰兄と兼兄の事だ。決して俺を陥れることはしないだろうと

解答をしっかりと理解するため、泰兄の事をじっと見つめて答えを待った。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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