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第四百十四話 片野東亜、再び

また・・・会うとは思わなかった。会いたいなんて微塵も思わなかった。

止めを刺したはず・・・。


「驚いたか?」


奴の問われても、俺は答えられなかった。驚いた事は間違いない。

いて欲しくない相手が目の前にいたのだから。

だが・・・素直に答えたくなかった。もし、答えてしまえば奴の喜んでしまう。

その姿が脳裏に焼き付いていたからだ。


「だんまりか・・・。まあ、いいよ。お互い不完全燃焼だっただろ?」


不完全燃焼か・・・。あの時、俺達は必死に戦っていた。奴の眼からその姿が

どう見えていたか分からないが、手加減されている様に見えていたのかもしれない。


「決着をつけよう。今度は・・・全力でな。」


もしかすると、奴はあれ以降の戦いをどこかで見ていたのかもしれない。

あの時から俺の成長した。全ての力を出し切っての決着を奴は望んでいる。


「・・・・・・・・。」


奴は貴人の中に潜んでいた。となると・・・その中にいた神の全ての力を使えると

思っていいだろう。となると、後にいる仲間たち全員と共に戦うのはマズイ。

あまりの力の差に簡単に命を落としてしまう者が出てきてしまう。


『・・純恋、時間を稼ぐ。戦力の選別をしてくれないか?』


陽菜が連れてきた家臣達のほとんどが対象になってしまうだろう。

その提案をスムーズに行えるのは純恋しかいない。

念話で指示を送ると純恋は素早く選別を送り、戦場から離脱させるために

千夏さんに念話で連絡を送る。


「・・別に俺はお前と戦わなくてもいいんだぞ。」


時間を稼ぐために、あえて会話を長引かせにかかる。

あの時の様に敵陣に深く踏み込んでいる訳ではない。当然、戦わずに他の人達に任せる

選択肢もある。


「そう冷たい事を言うなよ。せっかく再会したんだぜ?」


俺の言葉を聞いた奴は会話を返してきた。

一方的に襲う事が出来るはずだが、これなら都合がいい。


「再会なんてこっちは思っていない。それに・・・俺の目的は賀茂忠行だ。

お前に構っている暇なんてないんだよ。」


ぶっきらぼうに突き放す。俺に執着をしている様なので、一度冷たい態度を取れば

嫌でも俺との戦闘に持ち込むはずだろう。

千夏さん達が妖怪の思惑を暴いている以上、時間を稼がなければならない。

俺達がここで片野を相手している間、賀茂忠行との決戦に向けた動きを白達にしてもらわなければ

ならないのだから。


「そうか・・・。これは取って起きたかったんだけどな・・・。」


俺の冷たい言葉を聞いた片野は何かを呟くと、おぞましい体の一部を動かし始める。

人とかけ離れた姿は一体どこの部位か分からず、何をしようとしているのか

察することができない。

何が起こるのか。全てに対応できるように身構えていると、耳を塞ぎたくなるような

金切り音が辺りに響き渡る。

思わず耳を塞いでしまうが、すぐさま辺りの空気の振動を止めて鼓膜へのダメージを抑える。

攻撃目的で放ったにしてはそれ以上の対応を見せていない。どう見ても他に目的がある。


「あれは・・・。」


後ろでは選別が行われ続々と避難を始めているが、その中で楓が呟く。

一体どうしたのかと横目でその姿を確認すると、片野ではなく別の何かを見つめている

姿が見え、その方向を確認する。


「お前が俺と戦わないって言うんなら、”戦わなければいけない状況”を作るまでだ。」


楓が見つめていた先。それは落とし子達が押し寄せていた湾岸沿い。

確か竜次先生達がいたはずだが・・・見ると先ほどより数が増えており

今にも地上に足を踏み入れようとしている。


「呼んだってのか・・・?」


「ご名答だ。俺がいる限り、奴らは数を増やすぞ?」


奴が呼び寄せたとなると・・・かなり面倒だ。

片野の言う通り、すぐさま倒さなければ地上に踏み込まれることだろう。

それに・・・助けに行こうとも奴は必ず邪魔しに来る。

どう考えても片野と戦うしか選択肢が無く、たった一手で自らが臨む状況に変えてしまった。


『千夏さん。』


『分かっていますよ。』


俺達ではどうしようもできない。こうなれば第三者の手を借りなければと

忙しい千夏さんに向けて連絡を取る。

すると・・・遠く離れた落とし子達が体制を崩して大きな水しぶきを上げながら

海へと引き戻される。

見ると・・・何者かが対応してくれているようだった。


「・・俺達には仲間がいる。お前にはない、頼れる奴らがな。」


つい先ほど見捨てた・・・いや、端から仲間だとも思っていなかった奴を

殺した片野を支援する者はもういない。

一人で十分だと言うのだろうと思っていたが、その予想に反して片野は悲しそうな表情を

浮かべる。


「一人か・・・。確かにな。」


奴が言わなそうな言葉。自らの実力に絶対の自信を持つ片野がまさか仲間がいない事を

悔いている・・・?いや、そんなことはあり得ないと奴の様子を眺めていると、

伸ばした触手で体を撫で始めた。


「・・気にならないか?俺が何故お前の前に立ちはだかることが出来たのか。」


これは・・・都合がいい。奴が時間を使おうとしてくれている。

陽菜と明智を残し、他の臣下達は丹波を長として移動を始めている。


「・・・・・そうだな。」


「お前に負けた俺は命を落とした。”人間”として、人生の終わりを迎えたんだ。

だが・・・”神”としての俺の生は始まったんだよ。」


神として・・・か。こいつ、神融和ではなくカタノゾーアとして生まれ変わったとでもいうのか?


「俺はあの時・・・本気でお前に勝とうと思っていた。

だが、それこそがあの研究所で行われていた実験の最終形だったんだ。」


「最終形・・・?」


非人道な人体実験が行われていたという研究所。戦っている白の部隊のほとんどがその被害者だ。

だが、確か獣と魂を繋げ強力な兵隊を作るのが目的だったはず。


「あそこで行われいたのは人体実験だったはずだぞ。

人が神になるなんて実験の話しは聞いたことが無い。」


「そりゃ秘匿事項だったからな。だが、”知っている人物”はいたはずだ。」


自信満々に語り出したにしては、少し曖昧な答えが返ってきた。

いたはず・・・か。それは一体誰なのか。ここに来てそんなことを気にしている場合ではない。

着々と離脱し、残されたのはいつもの四人と陽菜と明智。

これであれば戦える・・・とは言い切れない相手だ。


「・・・・・そうか。」


「気にならないんだな。薄情者め。一応・・・伝えてやる。

お前も”同じ末路”を辿るかもしれないからな。」


「・・・?」


「お前の兄貴だよ。直江兼定。奴なら知っていたはずだ。

何せ・・・その研究の協力者を使役しているんだからな。」


協力者・・・。あの研究所にいたのは毛利先生や竜次先生達。

そして・・・泰兄だが、その全員が神ではなく人間や精霊などの種族だ。

お互いを家族と呼ぶ関係であり、式神契約も結んでいる事だろう。

だが、兼兄と泰兄を除く全員が被験者であり、唯一可能性のある泰兄はこの世を去っている。


「・・・・・・・・。」


残された可能性。兼兄の式神をまともに見たことは無いが、屋上で見た神がそうなのだろう。


「分かっているだろ?”ニャルラトホテプ”だ。あいつが人を神にする実験を

主導していたんだよ。だからお前の兄貴が知っていてもおかしくはない。」


「それが・・・どうしたんだよ。」


「察しが悪いな。もし、忠行様に追い詰められた時。

最終手段として、”お前も神になるかもしれないってことだよ”。」


片野の言葉は、俺の心の中に深く突き刺さる。

神に成ってしまえば人には戻れない。それぐらいは俺にも分かる。

もし、俺が敗北し日ノ本の危機となれば・・・業としての務めを果たすために

兼兄が俺を神にすることは容易に想像できる。


「まあ、これは俺の予想だ。気にすることは無い。

そんな事よりだ。神と成った俺だが、それでもお前は負ける気はしないだろう?

何せ一度勝利しているからな。だから・・・俺はさらなる強化を図った。」


おぞましい姿であるガタノゾーアの体。その体に、固い鎧が浮かび上がり始める。


「ガタノゾーアの体に、オトゥームの力。そんで・・・貴人も取り込んだ。

これで三体の神の力を扱える。そんな俺に、お前は叶うかな?」


先程の貴人も二体の神の力を操っていたが、貴人の体で扱っていた上に

その力を完全に使えていた訳ではない。一方、片野は宇宙の神と一体になっている。

オトゥームの力を完璧に扱う事が出来、力の弱い貴人も簡単に操るだろう。

これは・・・厄介だ。厄介極まりない。それなのに湾岸では落とし子達が今にも上陸しようと

している。こんな相手を急いで倒すなんて・・・至難の技だろう。


「・・戦うぞ。」


だが、臆するなんてことは出来ない。俺は勝利を掴み取らなければならないのだから。

全てを成すために得物を握りしめ、二体の神を秘めたガタノゾーアと対峙した。



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