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木星の陰陽師 ~遠い先祖に命を狙われていますが、俺の中に秘められた神の力で成り上がる~  作者: たつべえ
第三章 上杉龍穂 国學館三年編 第二幕 近くに潜んでいた闇
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第二百十三話 繋がる謎と新たな謎

岩屋に向かっていく途中、お土産屋さんなどが並ぶ通りを駆けるが

やはり人が残っており、避難する気がない。

決して観光客ではなく、江ノ島で商いを続けてきた老舗の店主たちであり、

先祖代々守ってきた家を離れる選択肢は一切ない様だ。


「・・ちーさん達、お願いします。」


この人達は俺達がいくら説得しても、この場を離れる事はないだろう。

だが、そんな人達を放っておけるほど俺達は厳しくはない。


「分かったよ。こっちは任せな。」


「千夏の知り合いも多いみたいだしね~。」


どんな戦いになるか分からないが、出来れば代々守ってきたこの人たちの店も守ってあげたい。

ちーさん達に残っている人達の援護をお願いしていると共に走る千夏さんが何かに気が付く。


「・・・・・。」


俺達が以前お茶をしたお店の前に立っていた男女。

店を出る時に軽くご挨拶した二人であり、料亭を営んでいるご夫婦だ。

徳川家御用達の料亭。また千夏さんが使う日が来るかもしれないと店を離れる気はないのだろう。

他のお店の方々は何が起こっているのかと駆けていく俺達の様子を伺っているが

ご夫婦が俺達に向けてくる顔は穏やかな表情であり、

自分たちの事は気にしなくていいと言っている様に見えた。


「・・大丈夫です、行きましょう。」


この人達、そしてご先祖が守ってきた店が無事で済むかどうかは俺達にかかっている。

心配そうに見つめる千夏さんに声をかけながらその場を駆けていく。


「龍穂君。岩屋に行く前に寄りたい場所がある。」


駆けている最中、親父さんが俺に言ってくる。


「神社の神主に少し話しを聞いておきたい。

この江ノ島を見守ってきたあの人からの情報は役に立つはずだ。」


実習で訪れた時、五頭龍が引きこもっていた神社の神主さんの事だ。江ノ島に住んでいる人の中で、

一番神道に精通している人なので確かに話しを聞いておいて損はないだろう。


「だが親父、これだけの人数が同時に動いているんだ。

本体である俺達が悠長な動きをしては作戦にズレが起きるかもしれない。」


親父さんの提案に綱秀が疑問をぶつける。

俺が立てた作戦は岩屋まで一気に駆け抜け、弁財天と戦うというものであり

それらを想定して動いてる他の隊とズレが生じる事は間違いない。


「・・いや、行こう。」


それらの不利益を飲み込んでも、行く価値はあると親父さんの提案を飲む選択を取る。


「大丈夫なのか?白の部隊や業なら対応してくれるかもしれないが、

岩屋にいる奴がその場にとどまっている保証はない。最短で向かった方がいいんじゃないか?」


「今俺達が持っている情報はあくまで予想であり、確定的なものはほとんどない。

しかも近藤さんにも言われてるだろ?出来るだけ情報を送ってほしいって。」


「だけどな・・・。」


不安な綱秀の気持ちも分かる。このまま行動すれば疑念に代わり、信頼を失ってしまうだろう。


「では、私が白と業に連絡を入れましょう。」


綱秀の不安を察した千夏さんが作戦にズレが起きないようにと行動してくれる。


「親父さんはまだ岩屋に弁財天の力を感じているんですよね?」


「ああ。だが感じるのは力のみだ。奴が力を岩屋に残し、どこかに去っている可能性もある。」


「では、俺が空気で探知をしておきましょう。弁財天と源実朝の力を感じたことはありませんが、

強力な力を持っているでしょうからそこにいる事は探知できます。」


広い江ノ島全土の空気を魔力操作内に置くことは出来る。

これからの戦いを考えた時に魔力の消費を考えるとさすがにできないが、

島の一部分であればそこまでの消費はないだろう。実習の時に見た岩屋全ての空気を

魔力操作内に収めると確かに強い力を持った何者かが佇んでいる事が分かる。


「・・今もまだ岩屋にいるみたいだ。

動き出したらすぐに分かるから神社の位置からして十分に対応できる。」


これでいいなと綱秀に確認すると、そこまでされると首を縦に振らざるおえないと了承してくれる。

近藤さんが魔道省で事の経緯を調べてくれているが、あの服部忍の事だ。

簡単に口を開くことなくひらりと躱されているだろう。俺達の情報を元に、

服部忍の悪事が暴くことが出来れば魔道省の勢いを削ぐことができ、それと同時に三道省での

千仞の動きを抑える事が出来る。多少の魔力の消費したとしても、話しを聞きに行くべきだ。

進路を変え、江ノ島神社へと向かう。道なき道を通り、江ノ島神社へたどり着くと

俺達が来ることを分かっていたのか以前お世話になった神主さんが境内に立っていた。


「・・お待ちしておりました。」


本来来るはずの無い位置から出てきた俺達に驚くことなく、深々と頭を下げてくる。


「少し話しを聞きたい。」


「私にお話し出来る事であれば、全て話しましょう。」


恐らく公安から事前に連絡があったのだろう。

この江ノ島を守る神社の神主としての務めを果たすため、神社に残ってくれたんだ。


「少しの事でもいい。江ノ島で何か異変はなかったか?」


「・・三道省の方々が何も言わずに出入りしていたと、巫女などから話しを聞いています。」


三道省・・・?達川さんの神道省と服部の魔道省ならわかるが・・・武道省まで?


「それだどなただったのかとか・・・詳細に教えていただけますか?」


「神道省の方は依然あなた方と一緒に実習に来ていた達川さん。

あの方は頻繁にきており、私もお見かけしたことがあります。

何をしに来ているのか聞いたことがありますが、何も教えてくれませんでした。」


「そうですか・・・。江ノ島のどこを見に来ていたか分かりますか?」


「様々な所を見に来ていた気がしますが・・・龍宮の方で見られたという

報告を多く聞いたような気がします。」


龍宮か・・・。前回の実習で見て回ったが、そこが何を奉っているかはよく知らない。


「・・その名の通り、龍神様が奉られている場所だよ。」


「五頭龍・・・のことか?」


「いや、違う。龍神信仰と言っても、弁財天などの天女が龍神に姿を変えいたと言われている。

正確に言えば弁財天の信仰と言っていい。」


弁財天か・・・。やはり達川さんはこの事件に深く絡んでいると言っていい。


「魔道省はあまり見る機会はありませんでしたが・・・岩屋の方へ行っていた印象があります。

先程言った達川さんと共に行動していた時もあり、隣り合って何かを話していた姿も

目撃されています。」


「これで姿を消した達川さんが関わっていることが確定か・・・。

だけど・・一体何故こんなことをしたのかが分からないな・・・。」


「そちらに関しては近藤課長にお任せしましょう。

神道省の者が魔道省と関わっていると知れれば周りが怪しむはずです。

必ず何かしらの情報があるはず。これ以上は気にしない方が懸命です。」


沖田は携帯片手に神主さんの話しを聞いている。

画面には近藤さんの名前が表示されており、この会話をそのまま伝えているのだろう。


「後は武道省の方々ですが・・・。これは些細な話しなので

今回の騒動にあまり関係ないかもしれませんが、それでもよろしいですか?」


「ぜひ、聞かせていただきたいです。」


今まで出てこなかった武道省。法の番人である彼らがこの江ノ島で一体何をしていたのだろうか?


「少し前の話しです。武道省の方々が境内にやってきて私を呼び出しました。

江ノ島の様子などを聞いた後、八坂神社の方へ歩いて行ったのです。」


江ノ島の様子か・・・。

見回りを兼ねて話しを聞いたのかもしれないが、それなら江ノ島に常駐している

武道省の職員に話しを聞けばいいだけ。わざわざ神主さんに話しを聞く必要はない。


「・・どこの所属の者か分かりますか?」


神主さんの話しを聞いた沖田は少し悩んだ後、何処所属の者か尋ねる。

この言いかただと、少なくとも公安課の者ではないのだろう。


「確か・・・刑事課の者だと言っていました。何か異常がないか聞き込みをしていると言っていましたが

刑事課の方々が直々にやってきたことはあまりなく、

交番勤務の方にこのことを話しましたが、何も知らない様子だったのです。」


という事は・・・誰にも話しを通さず聞き込みをしていたという事か・・・。

極秘の案件なのかもしれないが、そう言ったのは公安課の役目であり

沖田や近藤さんがこのことを知らないとなると、謎がますます深まる。


「・・ありがとうございます。助かりました。」


達川さんと魔道省の繋がりがはっきり見え、この事件が少し進展を迎えたが

新たな謎、武道省の介入の可能性が出てきた。


「もし、これから八坂神社に向かうのならそちらの神主に話しを通しますが・・・いかがしますか?」


「お気遣いありがとうございます。できれば聞いておきたいのですが・・・

その余裕を我々は持ち合わせていません。」


空気の動きに変化があった。海の方を向いて佇んでいる奴に若干だが動きがあった証拠だ。


「ですがこの事態が収束を迎えた後、我々、もしくは武道省の者が尋ねると思います。

申し訳ありませんが、その話を通しておいていただけませんか?」


武道省が絡んでいると知れば、近藤さんが黙っていないはずだ。

八坂神社が無事であれば必ず話しを聞きに行くはず。


「承知しました。伝えていきます。」


一通り話しを聞き終え、礼を言って境内から離れる。


「・・思っていた以上に面白い話しを聞けたな。」


「ええ。この事件の詳細を知る鍵になったと思います。」


魔道省との繋がりがあったという証言を近藤さんならうまく利用してくれるだろう。

だが新たに生まれた謎。こちらについては改めて調べる必要がある。

その役割は俺達ではなく、公安課の務めだ。


「弁財天に動きがあった。大きな動きじゃないが、現場に急ごう。」


海辺に佇んでいるが、このまま島内に侵入を許せば被害は大きくなる。

江ノ島を平和を守るため、岩屋へと急いだ。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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