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木星の陰陽師 ~遠い先祖に命を狙われていますが、俺の中に秘められた神の力で成り上がる~  作者: たつべえ
第三章 上杉龍穂 国學館三年編 第二幕 近くに潜んでいた闇
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第二百十話 これからの戦い

ゆーさんが運転する車が走り十分ほど経った後、沖田から連絡が入る。


「もしもし?」


「沖田です。近藤さんから龍穂さんと合流する様に伝えられました。」


少しでも状況を聞こうと近藤さんは近くにいるか尋ねるが、既にいなくなっている事を告げられる。


「ですがご安心ください。北条様との交渉はまとまったと聞いています。」


「そうか・・・。綱秀の親父さんは今どこにいるんだ?」


「江ノ島の入り口で待機してもらっているそうです。

近藤さんの話しでは我々と合流した後、共に江ノ島を見て回ると。」


流石近藤さんだ。俺の要求をしっかりと聞いた上で、

親父さんの責務をしっかりと果たせるように話しをつけてくれている。


「そして今回の一件は公安課が引き継ぐことになりました。

何が起きたとしても我々が責任を取ることになります。

居なくなった弁財天がどうなったか。千仞がどう関係しているのか。

何が起きたとしても我々は全てに対応し、丸く収めなければいけません。」


「分かっている。」


「・・そうですか。では、今から私が指定する場所で合流しましょう。それでは。」


最低限の情報交換を終えると、位置情報が送られてくる。


「ゆーさん。少し事情が変わりました。今から案内する場所へ行った後、江ノ島に向かってください。」


「分かったけど、そこに何かあるの?」


「色々あったんですけど・・・今回は武道省の公安課に協力をお願いしています。

今から向かう場所には公安課に所属している後輩がいるんです。」


「そう言う事か・・・。了解~。」


俺の説明に納得してくれたゆーさんは、指示通りにルートを変えてくれる。


「公安課か・・・。しかも国學館にいるうちに所属しているなんて結構面白いね。」


「今年入ってきた奴なんですけど、武術師の資格を持っているんです。」


学生の身で特級の資格を持った者は、取得したいずれかの三道省に任意で所属することができる。

自らの将来のために、早くから三道省の職員として働く事で顔を売り、

後々の出世がしやすくなるためだ。


「しかし・・・公安か。近藤にはあったの?」


「はい。お知り合いなんですか?」


「知り合いっちゃ知り合いなんだけど・・・。」


近藤さんを気安く呼んだちーさんだが、関係性を尋ねたら一気に歯切れが悪くなる。


「昔あいつに追われたことがあるんだよ。結構しつこく付きまとわれてね。」


「えっ!?そんなことがあったんですか!?」


「前に話したでしょ~?私達の生まれは海外だって~。

地球上に戸籍の無い私達を日ノ本に入れるために兼定さん達が奔走してくれてね~。

何とか作り上げてくれたんだけど、明らかに怪しい私達をかぎつけた近藤が

私達の正体を暴こうと付きまとってきたんだ~。」


海外の研究所で生まれた白達には辛うじて名前はあったものの戸籍は無く、身分も証明できない。

様々な国を渡り歩いてきたと聞いたが、どの国でも不自由であった事だろう。


「そうだったんですか・・・。」


そんな白の部隊の戸籍を作ったとしても、どこかで矛盾が生じるはず。

そこに目をつけた近藤さんが白達を追う理由も分かる。


「まあ、とある日を境にぴったり来なくなったんだけどね。

何があったのか分からないけど・・・兼兄と泰兄が何かしたんだろうね。」


近藤さんが追う理由を失くせるほどの何かを作れるとしたら、恐らくあの二人だろう。

そこから竜次先生が武道省に入るのだから、白とは縁があるようだ。


「そんな昔話はいい。江ノ島に来れる人数の把握を頼む。」


まだ到着までは時間がある。下手をすれば江ノ島全土が戦場になる可能性があるので

観光客を守る事を考えると、人数と配置が大切だ。


「桃子。知美とは連絡取れたか?」


「取れたで。江ノ島に向かってくれと言ったら了解しましたとすぐに切られたけど・・・。」


「再度連絡をして、業がどれだけ人数を寄こしてくれるか聞いてくれ。楓はどうだ?」


「出来る限り人数を人を寄こすって言ってました。

急な連絡なので人数の把握までは難しいですね・・・。」


急な要請だ。人数をかき集めてくれているだろうが

江ノ島に向かってくれているのもあり、人数把握は難しい。


「そうか・・・。」


「じゃあそこは後回し。江ノ島に集まるのは確定しているからその時に把握して配置を決めよう。

後は江ノ島の今の状況を把握できればいいんだけど・・・。」


江ノ島に連絡が取れる人か・・・。実習の時の事を思い返すと、江ノ島に縁がある人を思い出す。


「・・千夏さん。お願いできますか?」


「忙しい時間帯でしょうから電話が取れるか分かりませんが・・・分かりました。」


そう言うと千夏さんは携帯を取り出し、どこかへ連絡を取り始める。

江ノ島の実習を終えた俺達は、徳川家御用達の料亭で軽く食事を取った。

人が集まる通りに店を構えており、長年江ノ島で商いをしているだろうから異変には敏感なはずだ。


「・・お久しぶりです徳川です。あの時はお世話になりました。」


連絡をしてくれている千夏さんを見ていると、沖田に指定された場所へたどり着く。

陰陽師試験の時の様にスーツを着た沖田が立っており、ちーさんに指示を出して車を止めてもらった。


「お迎え、ありがとうございます。」


「一人~?公安はケチだね~。」


「江ノ島で事件が起きていない状況で動員できる人数は限られます。

その中でも武術師である私が来たのですから大盤振る舞いですよ。」


乗り込んで来た沖田はゆーさんの文句をひらりと躱す。


「それに・・・耳寄りな情報を持ってきました。

これ以上文句を垂れるのであれば、お話しできませんが・・・いかがでしょう。」


そして持ってきた情報を餌に、ピタリと黙らせてしまった。


「・・やるね~。千夏も大切な電話をしている事だし、しっかり聞き耳を立てさせてもらおうかな~。」


「それがよろしいかと。今回の騒動に関わりがあるとされる達川という男ですが・・・姿を消す前、

魔道省に行っている事が判明しました。」


「魔道省?あの人は神道省の人だろ?」


「ええ。課の異動はありましたが、全て神道省内。

わざわざ魔道省に行くことなど普通はありえません。」


神道省の信頼が落ちた今、魔道省に異動を申し出る人が多発したと聞いたが

話しを聞くに異動関係で尋ねたというわけではなさそうだ。


「じゃあ・・・なんで魔道省に行ったんだ?」


「別の案件で達川の事を調べていた課長によれば、

魔道省のとある課長に呼ばれていたとされています。」


魔道省の課長・・・。嫌な予感しかしない。


「魔道省防衛課、服部忍。古株と言え、しがない職員を高官が呼ぶのは

よほどの事がない限りあり得ない。何かしらの事情があったのだと思われます。」


近藤さんが調べるほどの事情を抱えている達川さんの事も気になるが、

今は服部忍が関わっている事の方が重要だ。


「服部・・・。ここでも関わってくるのか・・・。」


沖田の話しを聞いた俺達は確信する。

これは千仞が関わっており、江ノ島でとんでもないことが起ころうとしていると。


「私が聞いたのはここまでです。現在課長がその内容を調べに魔道省へ行っています。

奴が素直に話すとは思いませんが・・・進展があり次第、連絡をくれるそうです。」


「分かった。ありがとう。」


千仞が関わっているという事は、俺の命を狙っている事は間違いない。

そして奴らは綱秀の親父さんの事を利用して俺を誘き出そうとしている。


「・・あなた方の事ですから業に連絡を入れているのでしょう。

ですが、彼らの力を借りるのは避けた方がいいと思います。」


なおさら気合いを入れている所に、沖田が忠告してくる。


「なんでだ?業の人達に助けてもらった方が・・・。」


「公安として、あなた方の行動を課長に報告します。

そして江ノ島で何か起きている。事件性があると分かったその時、

公安課課長から陰陽師であるあなたに向けて、任務が発行されるでしょう。


その任務に業が絡んでいると業案件になりかねない。

そうなれば表に出せない事柄と判断され、あなたの功績にならないのですよ。」


今まで兼兄の力を借り、業と共に戦ってきたが、

皇の部隊として日ノ本の闇で活動している業が絡めばその全てが闇に葬られる。


「龍穂さんがこの日ノ本を上り詰めたいと思うのなら、

これからは業の力を借りず、戦うことが神道省の頂点に立つ一番の近道だと思います。」


俺の主な功績である八海での猛達との戦いと泰兄とのショッピングモールの戦い。

後者は事件を起こした人物があまりに有名すぎるのもあり、

業が絡んでいたとしても隠し切れなかったのだろうが、

前者に関しては伊達様からの依頼があった且つ、ほとんど業が絡んでいない。


「・・分かった。」


長である兼兄が姿を隠している今、業も大きな動きが出来ないだろう。

だが逆を言えばこれからの戦いは業が絡まず、俺の名を上げるチャンスでもある。

沖田の忠告を素直に受け入れ、覚悟を決める。


「・・・・料亭の主人に江ノ島の状況を聞きました。

観光客の中に、あまり見慣れない制服を着た生徒達を見たようです。」


見慣れない制服・・・。という事は周辺の学校の生徒達ではない。


「・・もしかするとあいつも関わっているのかもしれませんね。」


服部忍の息子である服部蓮。

父親から命令を受け、惟神高校の生徒を連れて江ノ島にいるのかもしれない。


「あと少しで江ノ島につくよ!状況を整理しながら、しっかりと準備を整えな!!」


料亭の主人が電話を取れたという事は、まだ江ノ島で何も起きていない。

俺の指示次第では被害を最低限に収める事が出来る。

冷静に状況を頭の中で整理しながら、心を燃やし到着を待った。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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