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木星の陰陽師 ~遠い先祖に命を狙われていますが、俺の中に秘められた神の力で成り上がる~  作者: たつべえ
第二章 上杉龍穂 国學館二年 後編 第四幕 土御門泰国
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第百六十九話 優勢と思われた戦い

次の役割を持つ謙太郎さん達の元へ影渡りで移動する。


「・・おっ、来たな」


俺達が入ってきた入り口に待機していた謙太郎さん達。

深き者ども達の残党達を処理しつつ、準備を準備を続けてくれていた。


「お疲れ様です。準備は出来ていますよね?」


「出来てるよ~。と言っても私達はあんまりやることないけどね~。」


この隊の役割は分かりやすく伊達さんとゆーさんが残党たちの処理。

陀金にダメージを与える桃子と謙太郎さんは自らの力を高めているため、目を閉じて集中している。


「倒れてくる奴の頭部がこの辺りに落ちてくると思われます。

完全に体勢を崩していますので大丈夫だと思いますが邪魔が入らないよう、

辺りを警戒を緩めないようにお願いします。」


合流した綱秀は伊達さんとゆーさんに合流して辺りを警戒を始める。

俺と千夏さんは陀金と戦う二人の援護を行うために魔術の準備をし始めた。

俺ととも移動したケライノーだが倒れる陀金に大きな動きが無いが、

念のため倒れる姿を見れる場所へ移動してもらっている。

今の所、素直に倒れてきて着地地点も大丈夫なようだ。


謙太郎さんはありったけの魔術を体に宿し、青い炎を身にまとっており

桃子は神融和を行い最大の一撃を放つために静かに集中している。

狙う部位は俺が一撃を加え、鱗を剥がしている顔面。

だが倒れてくる体勢からして顔面は床に向かっており、

倒れてしまうと鱗が剥がれている箇所に攻撃を叩き込めない。


それをカバーするのは俺達の役目であり、ケライノーからの情報を得ながら魔術を放つ準備を始める。

既に倒れ始めているとはいえ巨体の先端がこちらに届くまでにはある程度の時間を要する。

様子を見ているケライノーを陀金の顔付近まで移動させ、

最期まで様子を見させながら顔面が床に叩きつけられる位置に移動させた。


着地地点は俺達がいる位置の少し前。

二人が陀金に一撃を叩き込むにはちょうどいい位置であり、

ケライノーをどう扱うかがカギになってくる。


「素早い風の使徒ポタルゲー・ケライノー。」


着地地点に降りたケライノーは楽しそうに踊りだすと風で出来た自らの体を大きな竜巻へと変えていく。

辺りの空気を飲み込みながら大きくなっていき、散らばる砂埃を巻き込みながら天高くそびえ立つ。

床や壁、柱を破壊しながらこちらに倒れてくる陀金の頭部のみを的確に狙った竜巻は

あの巨大な体の一瞬だが持ち上げた。


「今だな・・・・。」


それを見た謙太郎さんは貯めていた青い炎を呪文によって形を変えていく。

指を軽く曲げ、手のひらを押し出すように両手を出した謙太郎さんは

浮かび上がっている陀金に向けて強大な魔力を込めた一撃を放つ。


青龍撃せいりゅうげき、終のしゅうのかた!!」


伸ばしている手のひらの間から放たれた強力な青い炎は陀金の顔面に向けて放たれる。

とうとう名前を付けたらしいが師匠である青さんの名前が入った魔術は

型と言っていたこともありいくつかあるようだ。

その中でも終わりと入れられた型、一番強い魔術であることは間違いない。

顔面に命中した青い炎は大きな爆発を起こし鱗が剥がれ、

抉られた陀金の肉から焼ける音が聞こえてきており、謙太郎さんの炎が聞いている事を証明していた。


「私もやるで・・・!!!」


爆炎の飲まれた陀金の悲鳴が辺りに響き、ケライノーの竜巻が頭を支えきれずに

顔面が地面に叩きつけられ床を大きく揺らした後、神融和をした桃子が山本五郎座衛門の力を解放する。

妖怪を率いる長、魔王の力を使い地面から骸骨達を召喚すると群れを成した骸骨達が固まって行き大きなガシャドクロを作り上げていく。

騰蛇の時のように刀による強力な一撃を叩きつけよう算段だ。


急所への一撃を察した陀金は離れた位置にある手で床を叩く。

何かが落ちてきたような大きな衝突音が辺りに響くと

物陰などに姿を隠していた深き者ども達が姿を現し始める。

一体どこに隠れていたんだと思わせるほどにぞろぞろと現れ、

作り上げたガシャドクロや桃子に向かって走り出し狂ったかのように得物や拳を振り上げた。


「守れ!!!」


その姿を見た伊達さんや綱秀、そしてゆーさんが迫りくる深き者ども達を止めに入る。

槍で突き、刀で切り払い、銃で打ち倒しても怯える様子なく桃子に向けて走り続ける深き者ども。


先ほどまでは恐怖心がしっかりと備わっており、一人がやられれば足が止まり

なかなか踏み込んで来なかったが、まるで狂ったかのように桃子へ向かう足が止まることはない。


「こいつら・・・!!!」


「長からの指示だからね~。

足を止めた方が怖い結末が待っているから桃子を止めるまでは絶対に止まらないよ~。」


ローブなどを見に纏っている深き者ども達だが、その下は陀金の姿に酷似している。

猛が起こした事件の事を踏まえれば深き者ども達の長であることは間違いない。


「千夏さん。お願いできますか?」


足を止めない深き者ども達相手に魔術などの全体攻撃を行う暇さえない三人。

明らかな人数不利に押し込まれる事は目に見えていた。

あまりの数の多さに桃子の方へ押し込まれていく。

このままであれば桃子まで押し込まれ、術を中断せざるおえないだろう。


「分かりました。」


千夏さんに三人の援護を頼み、立ち上がろうとする陀金を抑えるために風の魔術の準備を行う。

ケライノーを竜巻に変えてしまい、すぐに動きを止められるような魔術はない。


(足は千夏さんが止めてくれているから・・手を抑えよう。)


四肢の一本を抑えている。そして足元にはイタカが残ってくれているから

足を簡単に動かることはないだろう。

残るは手だ。千夏さんが抑えてくれているのは右足。

左手を抑えても対角線上に体幹が通り、うまくすれば抜け出されてしまうかもしれない。


「・・黒龍槍こくりゅうそう。」


狙うは右手。奴が深き者達を召喚するために地面を叩きつけた手の甲の上に

風の槍を作り上げる。

顔面の痛みを我慢し体を起こそうと肘を曲げて手を地面に付けていた。

これは好機。巨体の見た目通り動きが鈍く俺達の攻撃に対応できていない今

奴の動きを阻害し続けるのが一番いいだろう。


濃度が増し、威力も格段に増した風の黒い槍を陀金の手の甲に振り落とす。

固い鱗に阻まれるかと思っていたが簡単に突き刺さり

なんと手を床に張り付けることに成功した。


「これは・・・・。」


力が増している事は自覚していたがこれだけ通用してしまうと

俺だけで戦えるのかと思ってしまうがこれは部隊での戦いだ。

敵の動きを阻害し、味方の攻撃を最大限に引き出すのが長の役目。

陀金の危機を察した深き者ども達は一斉に俺の方へ視線を集める。

三人や後ろから襲い掛かる千夏さん達に目もくれずにこちらに掛けだしてきた。


狂気に体を任せ全力で駆けてくる深き者ども達。

体にどれだけ傷がついていようとも、手足が欠けていようとも

絶対に陀金を助けようとする姿は俺に心に恐怖を与えてくる。


「やらせませんよ・・・!」


だがその姿を見た伊達さん達や千夏さんが奴らの背中を襲い掛かり、

隙だらけの深き者ども達は一人、また一人と倒れていった。

俺の元へ駆けてくる深き者ども達の姿は消え、

陀金のうめき声のみが部屋に響いているとガシャドクロを完成させた桃子が声を上げる。


「これでも・・喰らえ!!!」


腕を振り上げているガシャドクロの手には得物が握られており、

禍々しい神力が込められた刀身には髑髏を模した印が刻まれている。

あれはおそらく・・・第六天魔王を現しているのだろう。

信仰心を奪う存在、魔王と呼ばれる存在が扱う刀。

山本五郎座衛門が得物を持っていたなどの文献は残っていないが、

第六点魔王と呼ばれた人物が扱っていた刀を模して作り上げた様だ。


山本五郎座衛門の力を操るように、桃子は自らの得物を振り上げており力強く振り下ろす。


「はあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


雄たけびと共に苦悶の表情を浮かべる陀金の頭目掛けて振り下ろされた刃が

火傷が覆っている箇所を的確に叩きつけられる。

蓄積されたダメージに陀金の皮膚は刃が通りやすくなっており、

切れ味鋭い刃は音を肉が割ける音さえ立てずにそのまま床に振り下ろされた。


大きな音を立て、砂埃を巻き上げた桃子の一撃に少なくとも陀金は無事で済んでいないだろう。

ハイドラと比べあまりにあっけなかった陀金だがこの場に立つ全員が警戒を解いていない。

これだけでは終わらない。まだ何かあるはずだ。

今までの経験からそう思えて仕方ないのだろう。


桃子がゆっくりと刀を引いていくと得物にはべったりと赤い血が付いており

辺りに濃い鉄の匂いが充満していく。

決着がついたのかを確認するために近づいていくと、

砂埃の中に陀金の頭部と思われる影が写しだされていた。


「・・・・・・・・・・。」


その光景を見ても決して警戒を解こうなんて思えずにゆっくりと足を進める。

床には先ほど見た赤い体液が敷かれており、これだけ血が流れていれば

流石の陀金と言えど勝負あったと思っていたその時。


『離れろ。』


神融和をしているハスターが俺に指示を送ってくる。

その瞬間兎歩で後ろに飛び、得物を構えて最大限の警戒を砂埃に向けると

動かないはずの大きな影がゆっくりと動き出す。


「・・ここからみたいだね。」


体を起こし、砂埃から出てきたのは真っ二つになった頭部を持った陀金。

大量の血が流れ、断面からは脳が見えているのにも関わらず何故か動いてしまっている。

おぞましい姿に全員が体を動かすことが出来ずのその姿をただ見つめる事しかできない。

流れ出る血が失った陀金の頭部の形に固まって行くとなんと肉や鱗を作り出し簡単に再生してしまった。


俺が貫いた手のひらも無理やり引き抜いたのは穴が開いていたが

頭部と同じように治ってしまっている。

優勢と思っていた戦いはゆーさんの言う通り、振出しに戻された。


「・・次に行きましょう。」


さすが土御門の式神。これまで以上の強敵である事をまざまざと見せつけられた。

これまでの労力が頭によぎり、心に絶望の影が出来るがすぐに振り払い

作戦を次の段階に進めようと声をかけると、全員が頭を切り替え再び陀金へと得物を構えた。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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