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木星の陰陽師 ~遠い先祖に命を狙われていますが、俺の中に秘められた神の力で成り上がる~  作者: たつべえ
第二章 上杉龍穂 国學館二年 後編 第四幕 土御門泰国
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第百四十四話 土御門の思惑

非常ベルが鳴り終わるが、灰色の都市の中に聞こえるはずのない波の音と化け物達のうめき声の中、

振るえる携帯の画面を見る。


「・・・・・・・・・。」


画面に表示されているのは兼兄の名前。今すぐにでも取りたいがその前にやることがある。

一般人の避難は済んだので被害は最小限に押さえられているが、

全員が完全に避難している事を確認はしていない。


「・・八咫烏様、簡単でいいです。一階に避難できていない人がいないか確認をお願いできますか?」


土御門が姿を消した今、残っている人が見つかれば

八海の時の様に深き者ども達に変えられてしまう可能性がある。

捜索も兼ねて空を自由に駆けることが出来る八咫烏様に状況の把握をお願いする。


「後は・・千夏さん。離れている謙太郎さん達に連絡を・・・。」


実力はある人達だがたった一度の小競り合いで今までの敵とは格が違う事を思い知らされた。

姿を隠した土御門が謙太郎さん達の元へ行っているのなら非常に危険だ。

連絡を取り、すぐにでも合流しないといけないと、

ちーさん達と連絡が取れる千夏さんに指示を出そうとするが

千夏さんは吹き抜けから土御門がいた場所を見つめている。


「千夏さん。・・千夏さん?」


声をかけてもこちらを見ることなく、下を見つめている千夏さん元へ駆けより肩を叩く。


「・・!?」


驚いた表情で俺の方を振り向いた。


「大丈夫ですか?」


「え、ええ・・・。」


瞳孔が開き、額からは汗をかいている。

もしかすると土御門が行った多重詠唱と高速詠唱が、

俺が感じたように仙蔵さんの影を重ねてしまったのかもしれない。


「・・ちーさん達に連絡を取っていただきたいんです。

何が起きたのか簡潔に伝えて合流したいと伝えてください。」


あまりに様子がおかしく、

出来るのなら少し休ませながら何が起きたのか聞きたいところだがそうはいかない。

楓にアイコンタクトを送り千夏さんを任せ、震え続けている携帯に出る。


『やっと繋がった・・・。大丈夫か?』


少し焦ったような声色で開口一番俺の安否を心配してくる。

ここにいないはずだが兼兄にはここで何が起きたのか察している様だった。


「土御門が現れて黒い海を張った。

俺達がいた場所の一般人は避難させたけど、それ以外の人達の姿が見えないんだ。」


今の状況を素早く兼兄に伝える。


『そうか・・・。業と白の両部隊から援軍を送る。

当然俺も向かう。出来るだけ状況把握をしておいてくれ。』


電話の奥で何が倒れるような音が聞こえると、通話が切られた。

兼兄自体がどれだけ事態を把握しているか分からないが、

やはり相当危険な状態に瀕している事だけは間違いない。

千夏さんの方を見ると丁度ちーさんと連絡を終えてこちらを向いている。


「あちらも全員が二階に移動しており傷ついた者は誰一人としていないようです。

こちらの場所を伝え、向かっているとおっしゃっていましたので

ここで待っていれば合流できるでしょう。」


「そうですか・・。少し心配ですね・・・。」


土御門がたった一人でここに来たという保証はない。

まだ未熟な一年生達も一緒に移動しており、警戒しなければならない所が多い中で

隙を突かれれば部隊が瓦解して全滅もあり得る。


「いち早く合流するために私の式神を送ります。

何かあればすぐに連絡が入るので援護に向かいましょう。」


札から式神である雀を呼ぶと、勢いよく空へ飛び立っていく。


「何が・・目的なんやろうな・・・。」


ひとまずここで待つことしかできない状況になり、緊張感が張り詰めた空間で桃子が呟く。


「龍穂を倒しに来たんやろ。あいつがやる事なんてそれしかないやん。」


「だったらさっき倒しに来ててもおかしくないやん。

むしろみんなが合流する前だったし、絶好の好機だったわけやで?

でも襲わなかった。何か別の目的があるっちゅうことやないか?」


あれほどの実力があるのなら確かにあの場で俺を殺せた可能性は高い。

桃子はその部分に疑いを持っているが、下の海から生まれている化け物は

俺達を掴もうと腕を伸ばしたり、雄たけびをあげている。

俺を殺そうとしていることは間違いなかった。


「龍穂さんを殺そうとしている事は間違いないでしょう。

ですがあえて遠回りを選んだのには何か意味がある、私もそう思います。

・・千夏さんはどう思いますか?」


楓は隣に居る千夏さんに土御門が何を企んでいると思うか尋ねるが、遅れた反応を見せる。


「えっ・・・?た、確かに土御門が何かを企んでいる事は確かだと思いますよ?」


「・・千夏さん、先ほども伺いましたが大丈夫ですか?」


この場にいるという事は既に土御門の手のひらの上に乗っているという事だ。

それを千夏さんが理解していない訳がない。それなのに何故まだ浮ついた心を抑えきれていないのか。


「・・大丈夫です。」


楓の念押しを聞いたが、胸を抑えながら頭を切り替えるように深呼吸をして再び大丈夫だと答える。


「土御門が龍穂君を抹殺する以外の目的があるとしたら、

賀茂忠行が抱く野望に関係するものなのでしょう。」


千夏さんは携帯を取り出し、ここら一体の地図を表示させる。


「平さんの襲撃の時を思い出してください。

あの方は国學館を襲撃して東京へ敷かれている結界を弱めようとしていました。

龍穂君の命を奪うだけであればもっと穏便に済ませることが出来たでしょうが、

わざわざ大勢の人を全て片付けてこの施設を陣取るような事をした理由。

もしかするとこの土地が何か重要な役目を果たしているのかもしれません。」


国學館は安倍晴明の亡骸を使って東京結界の強化をしていた。

千夏さんはこのショッピングモールも何か役目を果たしているのかもしれないと考えているようだが、

この辺りに神社は存在せず結界を補助できるような位置にもない。


「そんな重要な位置じゃなさそうやけどな・・・。」


「国學館の時もそうでしたが私達が知らない何かがこの場所に眠っているのかもしれません。

龍穂君、兼定さんは何がおっしゃっていましたか?」


「いえ、俺達の状況を聞いて白と業をこちらに向かわせるから

まずは謙太郎さん達と合流を目指してくれと言っていました。

兼兄もすぐにこっち来てくれるみたいです。」


「ふむ・・・。業の長として迅速かつ冷静な判断ですね・・・。

迅速な判断が出来た理由としてこのような事態が起こるかもしれないと予想していたのかもしれません。

もしそうであった場合、それだけこの土地が重要な意味を持っている可能性があるのかもしれません。」


土御門の行動の意味。その意味を読み切れないが絶対に何かあると踏んでいるみたいだ。


「・・青さん。何かわかりませんか?」


東京という都市は時代が移ると共に大きく姿を変えてきた。

過去に大きな役割を持っていたが今は役割を終えて開発された可能性もある。


「・・・・いや、この土地に何かあった記憶はないな。」


この中で一番長く生きてきて日ノ本に関わってきたのは青さんだろうと尋ねてみるが、

期待した答えは返ってこない。


「そうですか・・・。」


俺達だけでは答えを出せない。兼兄と合流して情報をもらうしかないと思っていた時、


「・・・!!」


千夏さんが大きな反応を見せる。


「この通路の少し先でちー達が襲われています!!」


式神である雀から情報を得て声を荒げる。

その情報を後押しするように何かが暴れるような轟音が通路の先から響いてきた。


「すぐに向かいましょう!!」


少し先であればすぐに合流できる。そして戦っている位置が良ければ挟撃も可能だろう。

声をかけて駆け出そうとすると、俺達が進む先の通路の手すりに蛸の触手のようなものが絡まる。

すると下から何かが這い上がってこようとしている。

触手だけではなく鋭い爪を持った腕も使い通路に立つとその巨体は天井を破壊してしまった。


「なんだこいつ・・・!!」


鱗を持った緑色の巨人。土御門が召喚した配下達が俺達の前に立ちはだかった。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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