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木星の陰陽師 ~遠い先祖に命を狙われていますが、俺の中に秘められた神の力で成り上がる~  作者: たつべえ
第二章 上杉龍穂 国學館二年 後編 第二幕 修学旅行
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第百二十話 受け入れがたい信頼

涼音の決意の言葉を聞いたみんなは微塵も表情を崩さない。

それは今までの行動に許していない証であり、この場で完全な信頼をもらうには難しいだろう。


「・・すぐにその願いを受け入れるのはこちらとしても難しいですね。」


開口一番を切ったのは千夏さん。純恋と楓も同意をするように頷く。


「・・そうだろうな。」


こちらの答えを受け入れる綱秀だがその顔は覚悟を決めており、引く気は一切ない様だ。


「我々は文字通り命を懸けて戦ってきました。

そちらにおられる兼定さんや毛利先生、そして竜次先生等数えきれないほどの方々に

助けてもらってきたことは事実ですが、我々は命を取り合いをしてきたのです。


そんな戦いの中で裏切者が身内にいると心の中に雑念が生まれ、

躱せる刃を交わし切れず避けられる魔術をまともに受けてしまうかもしれない。」


千夏さんは受け入れられない点を淡々に語っていく。


「少し大げさに聞こえてしまうかもしれませんが、これは紛れもない事実です。

共に戦わせてほしいという思いは伝わりましたが、まずは絶対に裏切らないという根拠が欲しい。

依然綱秀君が責任を取るから涼音さんを許して欲しいと申し出て”龍穂君”が承諾しましたが、

今回の騒動でそれはいったん白紙。言葉ではなく行動で信頼を勝ち取っていただきたい。」


千夏さんが共に歩むための条件を提示する。

綱秀側に寄っている俺から聞いても当然の条件だと聞こえる。

そしてあの時綱秀からの承諾をした後、

釘を刺されたことで学んだのか私達は決して許していないと強調していた。


「・・・・・・・・・・。」


打開策を思いつかない二人は千夏さんの言葉をすぐに返すことが出来ず口を閉ざしてしまう。


「その気持ちは十分に分かる。だが今回の奴らが襲撃で一つ分かった事があるだろ?」


沈黙を引き裂いたのは二人ではなく、隣にいる兼兄。


「涼音ちゃんから状況を聞かせてもらったが、敵は今回俺達を分散させる策を打ってきた。

そして俺達の到着まで龍穂達のみで戦う場面があったはずだ。


これからこういった場面は増えてくる。

何故なら龍穂の実力が上がってきて奴らも投入して来る奴らの実力が上がってきているからだ。」


高野との戦闘は確かに激しかったが奴はまだまだ成長過程であり、

次会う時は今回のように圧倒した結果にならないことは分かりきっていた。


「そして今回の件で分かった事は敵の人数。

龍穂が戦った奴以外にもう一人実力が高い奴がいたってことだ。

そいつがいるってことは今回以上に敵に分散させられる可能性があるってことだ。


俺達と龍穂、そして他の四人みたいな分散をさせられて各個撃破されるかもしれない。


それを鑑みた時にまだまだ味方は多い方が良いとは思わないか?」


綱秀達を仲間に引き入れられる大きな利点。

それは俺もずっと分かっていたことだが、一番身近にいてくれる仲間になってくれることだ。


学年も同じであり寮の部屋も行き来しやすい間柄までに発展させることが出来れば、

例え寮に居た時に襲撃を受けたとしてもすぐさま連携を取れて対応が可能だろう。


「それは・・確かにそうやけど・・・。」


今までの経験があったことで純恋達は反論することが出来ない。


「俺達、そして白と言う強力な仲間たちが増えた上でだ。

それでも味方が足りない現状であり、それを解決できる二人だという事を分かってほしい。」


さらに兼兄は二人を味方につけておくことの重要性を強調する。


「それは・・私達の実力が足りないと言いたいんですか?」


楓が不満そうに言い返す。

今まで誰一人として欠けるなく戦ってきた自負がその発言を生んだのだろう。


「ああ、そうだ。」


楓の問いに対し、兼兄はオブラートに包むことなくはっきりと答える。


「この場にいる全員がそれを実感しているはずだ。

現に今回の戦いはほぼ龍穂のみで打開したと聞いている。


楓と千夏ちゃんは龍穂と式神契約を結び新たな力を付け、

純恋ちゃんと桃子ちゃんも鍛錬により依然は人柱として

封印されていた式神の力をより引き出せるようになってきた。


だがそれでも足りない。まだまだ足りないんだ。

君達には先生方の指導。

そしてさらなる鍛錬により実力を高めてもらおうと思っているが、

足りない現状をすぐさま解決させる方法としては新たな仲間を引き入れるのは最善策だ。」


兼兄がどれだけ二人を仲に引き入れる理由を言っても、

桃子を除いた三人は厳しい表情を崩すことはない。


「それは分かりました。ですが私達が求めているのは彼女達と同じ道を歩めると判断できる信頼です。

仲間に引き入れる利点は今求めていない。

その証明が出来ないとここで首を縦に振る事は出来ないです。」


論点がずれていると千夏さんが指摘し、今までの話しはほぼ白紙となる。

兼兄が時間を作ってくれたが二人は悩んでいる表情を崩しておらず打開策を見いだせていない。

これではいくら話し合ったとしても平行線をたどる事しかできずに夜が明けてしまうだろう。


「・・別にええんちゃう?」


俺からも綱秀達を弁解するような事を言おうと思ったが。

それをして前回指摘されたので黙っていると桃子が口を開いた。


「ええんちゃうって・・・どういう意味や?」


先ほどまで根拠のある話し合いが行われていたが、

それに比べてあまりに抽象的な発言に隣に居た純恋が指摘する。


「そこまで邪険に扱わんでもええんちゃう?

だって私達を裏切ったかもしれへんけど、害のあるような行動はあんま取ってへんやん。」


振り返ってみると平田さんと平を校舎に招き入れたがその後俺を非常ベルを押し、

俺を体育館に向かわせるなど確かに涼音が俺達に害のある行動を取ったとは言えないかもしれない。


「それに涼音は二度も襲われているんやで?

明らかに千仞から敵として認識されている証拠やん。


確かに涼音自身私達に信頼できる行動はとってこなかったかもしれんけど、

敵の行動が涼音を信頼できる証拠を作ってくれとると思うで。」


俺もずっと思ってきたことだが涼音自身既に千仞の被害者だ。

それ自体が涼音を信頼できる証拠と言えるだろう。


「・・そんなことはどうでもええ。私は涼音自身がその証拠を示さんと信頼は出来ん。」


桃子の説得を聞いても純恋は難色を示しているが、なんとかして説得しようと試みる。


「それはどう考えても難しいんやない?

涼音自身どうしたらええか分からんかったから間違ったことをしてしまっただけやろ。」


固い表情を和らげるため、桃子が笑顔で純恋を見つめる。


「そんな固いこと言って認められへんのは近くにあるあそこ集まったあいつらと同じやで?

陰陽師試験の時に綱秀も言っていたやろ?これから信頼を取り戻すって。

一方的にこちらの条件を押し付けるのはやめて、

同じ道を歩めるように寄り添うことが大切なんやない?」


バリアを張らずに同じ道を歩むために話し合いをするべきだと桃子は語る。

そして話終えた最後に俺の方を一瞬見る。流れを変えてくれと言うパスなのだろう。


「・・確かに純恋の言う通りすぐに信頼するのは難しいだろうな。

だけど桃子の言い分も分かる。


兼兄が言っていた通り綱秀達が仲間になってくれれば、

緊急事態の時に素早く対応できて皆を助けられる可能性も高まるだろうな。」


全員の意見を汲んで上で最善だと思う選択肢を提示する。


「・・そんで俺としては陰陽師試験の前に綱秀の申し出を受け入れたことに対して筋を通したい。

だから桃子と兼兄の案に俺は賛成かな。」


そして最後に俺の意見をしっかりと提示する。


また怒られるかもしれないが先の見えない話し合いは不毛だし、

きっぱりと否定しない所を見ると、

全員が涼音たちと同じ道を歩むことの有効性を否定できない証だ。


「・・・・・・・・・・・。」


納得できない顔をしているが反論は飛んでこない。


「私も龍穂に賛成やな。意地張りたい気持ちも分からなくもないけど

このまま続けていても話し終わらんやろ?

純恋は知らんかもしれんけど、この修学旅行の初日に涼音は私に謝ってくれた。

色々と迷っていたから言うのが遅くなっただけで、申し訳ないって気持ちは持っていたってことや。


だから今すぐに証明するんじゃなくて、

龍穂が約束した内容みたいにこっから信頼を示してくれても遅くないやない?」


警戒しても良いが仲間として受け入れる。

それが落としどころだろうと桃子は言ってくれる。


「それじゃ結局・・前の綱秀との約束と変わらず今まで許してこなかった

私達がバカみたいやないか・・・。」


「答えを出すなんてそんなものです。。

案を出して深くまで考えて・・・最初の案に戻ってくるなんてしょっちゅうありますよ。」


純恋の悔しそうな呟きに毛利先生が答える。


「状況は変わっていくものです。

必要ないと考えていたことが突然に重要になったりその逆もある。

それに・・・純恋さん自身は既に涼音さんの事を認めつつあるんじゃないですか?」


俺には涼音のことを嫌っているだけに思えて仕方がないが、

毛利先生の視点からしたら少し違うようだ。


「本当に嫌いなら声すらかけないでしょう?

綱秀君の気持ちを考えていないと指摘したのは、涼音さんを思っていたからこそ出た発言なのでは?」


確かに今まではほぼ無視をしていた純恋が涼音のための発言をしていた。


「・・・・・・・・・・・・・・・。」


返事はしなかったが明らかに変わった部分だろう。


「楓さんと千夏さんも龍穂君の影響を受けて風の力を扱えるようになりましたが

それ以外の魔術の成長はまだ見られない。

それは慣れない陰の属性。宇宙の魔力をうまく扱えていないからだと推測されます。


涼音さんは純粋な氷魔術の使い手。

お二人より宇宙の力の扱いに慣れていますので、

共に鍛錬をすれば新たな力の成長に期待が出来ますよ。」


そして納得のいっていない二人に新たな利点を示す。

兼兄と毛利先生も現段階で涼音の信頼回復は難しいと考えている様だが、

その先にある大きな利点を強調する。


毛利先生の話しを聞いた二人は大きく悩みだす。


「・・・条件があります。」


そして不服ながらも涼音を仲間に引き入れる条件を提示した。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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