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9:バイトラヴバトル

  もちろん、消防署の方からは厳重注意をされ、従業員中に聞きまわっていた店長のお陰で噂もすぐに広まり、私たちはあっという間に注目の的になった。

 小さくなっている私の横で、蓮慈はさほど反省をしていない様子で平然と立っている。ちょっと、ちょっとぉぉ。もう少し反省の色見せたらどうなのよぉ。クビにされちゃううよ。蓮慈ってばぁ。

 こっそりわき腹を小突いたけど、何も感じないのかまったくの無視。興味本位に事務所の中で様子を伺っていた人たちが、動きのない私たちに飽きてやっと帰っていった頃。


「悪かったと思ってるよ、でも俺嬉しくて。やっと思いが通じたんだよ。いつも俺の話聞いてて俺がどんだけ乃夢のこと好きか知ってるだろ?」


 おっどろきぃ~!なぜにため口?

 うちの店長は女性で一見穏やかそうだけど、かなり厳しい。忙しくなればなるほど口も悪くなる。その辺にいるおっさんとなんら変わりないくらい。故郷の人はみんなそんな話し方だから、本人としては素が出てるだけ。と言ってるけど・・・

 こっちとしてはかなりおっかない。


「だからってこのクソ忙しいときにイチャイチャしてんじゃないわよ。蓮慈だってわかってんでしょ。わざわざあんたのわがまま聞いて、ノンちゃんと一緒の休憩時間作ってあげたんだから、私の気分を悪くするようなことしてんじゃないわよ。」


 うぅ。怖い。

 チラリと覗いた蓮慈の横顔は意外と涼しげで、私の方に視線を向けるとニッコリと微笑んだ。


「わかったよ。来週は少し多めに入るからカンベンしてよ。それよりも俺、乃夢と付き合うことにしたから。いいだろ?乃夢もいいよな?だからまた、休憩とか合うようにしっかりシフト組んでくれよ?バイトしてる身だとなかなか会えないし。休憩しかゆっくり話もできないだろうからさ。頼むよ、店長。」


 なっ、なんてわがままなお願い。しかもやっぱりため口だし・・・。


 店長は、大げさなくらい大きくため息をつくとシフト表を取り出した。前々から店長に言ってあったのだろう。私たちの目の前に突き出したシフト表はものの見事に同じ時間帯に休憩が入っている。出来る限り上がる時間も同じ。

 いや、店長。このシフトは誰が見てもこいつら付き合ってるな風?仕組みました風ですよ。バレバレですよ。


「さっすが店長サマ。感謝しまぁす。」


 蓮慈は嬉しそうに、店長の肩なんか揉んでるし。私は何も言えないままさっきから気になっていることを思い切って聞いてみた。


「店長と蓮慈はお知り合いなんですか?」


 浮かれていた蓮慈と、仕事はまじめにするのよ。と文句を言いながらも笑顔を店長は同時に私に目線を向ける。

 あの、私変なこといいました?ため口きいたり、シフトいじくったりかなりの親しみを感じるのは私だけなんでしょうか。


「ノンちゃん。この際だから言っとくわね。この子はかなり軽いとか、遊んでるとか、締りが無いとか、とにかくちゃらんぽらんだとか言われてるけどね。そんなことないのよ。いつもノンちゃんの話しを面白おかしくしてくれるし、自分の気持ちを恥ずかしいくらい私にさらけ出してるし。」


 店長。かなりつっこみどころ満載なんですが、とりあえず黙って聞きます。


「でもね、本当に好きみたいなの。今まで女の子の話こんなにしてくれたことなかったもの。だからね、仲良くしてあげて。これは母親として。でも、仕事はきっちりしないとダメよ。出来のいい子たちだから心配はしてないけど、これは店長としてよ。と、言うわけで、公私ともに仲良くしましょうね。とりあえず今は仕事中だからまじめに怒られてね?いいわね?」


 「はっ、はいっ。」


 いいわね?と言われて、ついはいと返事してしまったけれど、一つ引っかかることがあったんだけど・・・。


「あの・・・。お話はわかったのですが、店長と蓮慈はもしかして・・。親子ですか?」


「だから、俺のお袋。知らなかったの?ここに働いてる人間なら誰しもが知ってると思っていたけど。やっぱ乃夢はおもしれぇよ。ビックリ箱並みだよ。」


 ビックリ箱っておもしろの?でも、でも、親子ってことはつまりは店長は私の彼氏のお母さんでもあり、お店のお偉いさんでもあるってことになるわけで。しかも他のみんな2人が親子だって知ってる?しらなかったのは私だけ?


「えええぇぇぇぇ~!!!」


「「ってか、反応遅いよノンちゃん。」」(親子揃って発言)


だって知らなかったんだもん。誰も教えてくれなかったし、聞いたこともないし。今さら何言っても遅いけど。


 「てな訳で、親子ともどもよろしくね。」


 素敵な笑顔の店長。


「何訳わかんないこと言ってんの?付き合うのは俺。お袋は今まで通り店長してください。ねぇ、乃夢仕事終わったらデートしようねぇ。」


 ポンポン頭を叩きながら、覗き込んでくる蓮慈。昨日まであんなに皮肉を言い合ってた相手なのに、いざ自分の気持ちに気づいてしまうとダメだね。覗かれただけで途端に顔が赤くなる。

 ノンちゃんはみんなのものよっ!独り占めするならシフト変更してやるぅ!と躍起になってる店長とシフト表の取り合いしてるこの親子と付き合っていくのか・・・なんだかちょっと不安になっちゃうなぁ。


「と・・・とりあえずみなさんで仲良くするってことで、今日はお開きですよ。日にちが変わっちゃいます。蓮慈、デートはまた後日。ってなわけでお疲れ様でしたぁ。」


 そう、今日は帰りたい。そして、今日の出来事を整理したい。でもきっと、頭いっぱいだし無理だろうなぁ。こういうときは寝るに限る。

 そそくさと、その場を離れて帰宅の準備を済ませると、外へ出て空を仰ぐ。

 大きく息を吸い込んでゆっくり吐く。


「ん、よしっ。明日も頑張るぞぉぉ~!!」


 店内の事務所からはギャーギャーと賑わいが聞こえてるけれど、まったくの無視でさっさと帰ろう。これから嫌というほど付き合っていくつもりの親子だし。こんな恋愛の始まり方もアリなんだろうなぁ。

 今日はもうカンベンだけど。


「それじゃぁ、お疲れ様でぇ~す。」


 聞こえないように、挨拶をした。


最後まで読んでくださった方。ありがとうございます。

どう終わっていいのか悩んで、困って終わらせたって感じになっちゃいました(汗)まだまだ勉強してきます。

次回も頑張ります。


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