表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フルメタル  作者: 湖灯
地獄の戦場
92/700

次の任地

 1週間後の月曜日の朝、食堂に行くと入り口で待っていたハンスに呼ばれ、会議室に連れて行かれた。

「任地の件だな」

 しかし俺の言葉が耳に入っていないはずがないのに、ハンスは一言も返事を返さない。

 会議室に入ると、既にそこには何種類かのパンフレットが置いてあり、ハンスの勧めに従ってそのテーブルの前に腰を降ろした。

「さてと、先ずは、そのパンフに目を通してもらいたい」

 1冊目はBND(ドイツ連邦情報局)の資料と、陸軍のパンフレット、そこにはKSK(ドイツ連邦陸軍特殊作戦師団)の資料まで付いている。

 2冊目はエマの居るDGSE(フランス対外治安総局)のパンフレット。

 そして3冊目はCIA(アメリカ中央情報局)

「これを何故?」

「前回のリビアそして今回のパリでの君の活躍を見て、外人部隊に居るよりもこういったところの方が君には合っているのだろうと思って。どうだ、やってみないか?!」

「どういうことだ?」

「実はKSK時代の俺の上官から是非君を欲しいと言われている」

「DGSEも?」

「ああ、もちろん」

「CIAは?」

「CIAからは裏ルートでリビアの一件のあと直ぐに打診が来ていた。正直給料はDGSEが一番安い。それでも今の給料の2倍は貰える。CIAなら3倍は固い」

「それで、ハンスは俺を出したいわけ?」

 パンフレットを置いて、ハンスを睨み付ける。

 しかしハンスは目を合わさずに、情報部関係の説明を続けるので机を一つ叩いて話を止めるように言い、もう一度聞いた。「俺を追い出したいのか?!」と。

 ハンスは軽く両手を上げ、お手上げのポーズ。

「プライベートな事だから今まで黙っていたけれど、正直言う君が男としてここに居られるのは迷惑なんだ」

“迷惑!?”いったいどう言うことなんだ……。

 正直、ショックだったが、顔には出さずに平静を装って分けを聞いた。

「つまりこの外人部隊に居る限り、女であるはずの君は男として扱われ続ける……この先は隊内に居る限り言えないから察してくれ」

 と言う事は、ハンスは俺を女として……心が急に熱くなってきて心臓の鼓動が少しだけ早くなる。

 しかし、いや待て。何かがおかしい。

 いったい何故。

 直ぐに答えは出た。

 それはハンスの話し方。

 いつになく俺のことを“お前”と呼ばずに“君”と呼んでいる。

 部隊内で俺のことを“君”と呼ぶのは1人。

“ニルスだ”

 俺はガバッと机に身を乗り出して、ハンスの鼻先に顔を近づけて睨む。

「気持ちは分からないでもないが、俺は軍曹として部下を守るためなら、たとえその戦場が地獄だと分かっていても行く。ニルス少尉に相談するなんて、こんなのはハンスらしくない」

 パンフレットの束をハンスに突き返して、そのまま部屋を出て仲間の居る食堂に向かった。


「やっぱり駄目だった?」

「まあな」

 俺が出て行ったのと入れ替わりにニルス少尉が入って来た。

「KSK,DGSE,CIA……ブランドにもピクリとも反応しなければ、金にも反応しない。恐らくは次の任地が何処でどんな悲惨な事が待っているかも既に調べて知っているにもかかわらず、首を縦に振るどころか俺のことを睨みつけていきやがった」

「良い作戦だと思ったんだけど、いったいナトちゃんの価値観って、何なのだろう?」

「すまんな、ニルス。俺が直接行くなと言うと猛反発されるのが分かっていたから、知恵を絞ってもらったのに……」

「仕方ないよ。あんな所は、まともな人間の赴く所じゃない。これまでにこの外人部隊でも能力に長けた伝説的な将校連中でさえ、何人も人生を狂わせてしまった戦場。そこにナトーを連れて行きたくない気持ちはハンスじゃなくても持って当たり前だと思うよ」

「さすがに今回は、俺だって行きたくはない。でも、これが任務だから仕方ない」

 ハンスは、ナトーに突き返されたパンフレットを封筒に片付けた。

「折角、根回しまでした苦労が水の泡だ」

 そう言って封筒に仕舞った物を片手に持ち、席を立つ。

「でも、これで吹っ切れた?」

「まあな」


 朝食のあと、俺たちLéMAT4班は大会議室に向かうように指示された。

「緊急招集だぜ」

「いよいよ、おいでなすったぜ!」

「今度の、旅行は何処なんだ?」

「モルディブの青い海でサーフィンの訓練じゃねーか?」

「俺はマッターホルンでパラグライダーの方が良い」

 皆軽口を叩いているが、一様に緊張の色は隠せない。

 会議室に着くと、既に俺たちの他にも普通科の奴らがもう席に着いていた。

「こりゃあ1個小隊はいるぜ!」

「アフガンかシリアか?」

「ソマリアは勘弁してもらいたいね、なにせ熱いだけで何にもねーからな」

 ざっと見た普通科の人数は60名。

 ただの小隊編成ではなく、作戦本部付きだ。

 先ず事務長のテシューブが派遣部隊の構成とメンバーをひとりひとり発表する。

・作戦本部、ペイランド少佐、以下ニール中尉、マーカス准尉、ヤニス曹長――以上10名。

・小隊本部、ケビン中尉、ソト少尉、ツボレク1等軍曹――以上10名。

・第一分隊、エラン2等軍曹――以上10名。

・第二分隊、チャケ3等軍曹――以上10名。

・第三分隊、ト3等軍曹――以上10名。

・重火器分隊、ビバルディー2等軍曹――以上10名。

・LéMAT第四分隊、ナトー1等軍曹――以上10名。

 総勢70名。

 そして、最後に赴任先を発表した。

「今回の赴任先は、コンゴ」

 その発表を聞いて、一同が騒めいた。

挿絵(By みてみん)

身長195㎝体重125㎏もある元NFL選手だったモンタナが持つと、M249も小さく見えますね。

ちなみにヘルメットに隠れて居るヘアスタイルは、モヒカンです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ