レイラに迫る危機
窓の向こうで次々に落とされて行くドローン。
メヒアは、それを黙って眺めていた。
そして最後まで残っていた3機が落とされた時も。
「こ、こんなはずじゃ……」
狼狽するジュジェイの両腕を、手下の2人が掴み上げる。
「なっ何をするつもりだ!」
「言ってあるだろう、失敗の償いは“死”だと」
「チャ、チャンスをくれ! 今度こそ、今度こそ失敗はしないから」
「チャンスは2度やった。1つ目はモデルガンのイベント、そして2つ目はドローン。お前は1日にその2つ共しくじったではないか」
「もっ、もう1度! もう1度だけ!」
「ザリバンの首領、アサムなら、チャンスをくれるかも知れん」
一瞬、ホッとするジュジェイ。
「そっそうだ。俺たちはザリバンだ。アサム様のために戦っている。アサム様なら、もう1度チャンスをくれるはずだ」
窓の外を見ていたメヒアが、ゆっくりと振り向いて金歯を見せてニヤッと笑う。
「そう、アサム様ならな。だが、俺はアサムじゃない」
その言葉に、凍り付くジュジェイ。
「安心しろ。脳天を打ち抜くとか、心臓を一突きにするとかはしない。ゆっくり反省してもらわなければならないからな……」
メヒアがヒネモスに目で合図を送ると、ヒネモスがナイフを取り出した。
銀色に冷たく光る、少し細めのナイフ。
「なっ、何をする」
「なぁ~に、ちょいと喉に穴をあけるだけだ。死にはしない」
「やめろー! やめてくれー!!」
暴れようとするジュジェイの体を、更に2人の手下が押さえ込む。
「ヒネモス、分かっているな。動脈は傷つけるなよ」
「承知しております」
銀色のナイフが取り押さえられたジュジェイの喉に近付く。
目を背ける私の頭をメヒアが乱暴に掴み、ジュジェイのほうに向ける。
「レイラ、よーく見ておけ、次はお前の番だからな」
メヒアの口から、腐った臭いが吐き出される。
ジュジェイが大きな悲鳴を上げ、ナイフがゆっくりと、その首に突き刺さって行く。
そして突き刺さった所から、またゆっくりと切り裂かれナイフは抜かれた。
「ほーら、死にはしないだろ」
また腐った息を吹きかけながらメヒアが笑った。
「もういいぞ、手を離してやれ」
合図とともにジュジェイを押えていた4人が離れる。
切られた喉を手で押さえながら、近付こうとするジュジェイ。
「ひさまー、はにをしはー!」
喉に開けられた穴のせいで言葉にならない。
直ぐに咳き込んで、床にうずくまるジュジェイ。
「喉を押えていると、血が肺に入って咳き込むぞ」
咳き込んだ拍子に、口を手で押さえるジュジェイ。
その喉からは血がしたたり落ち、息を吸おうとすると喉から空気が漏れてヒューヒューと音を立てる。
慌てて喉を押えると、また血が肺に入り咳き込み、手を離すと喉がヒューヒューと鳴る。
「ひははぁ~」
ジュジェイが、この世の物とは思えない形相でメヒアを睨み付ける。
おそらく“きさまー”と言おうとしたに違いないが、喉から空気が漏れるために言葉にならない。
呼吸がまともに出来ないため瞬く間に体力が奪われて行き、カーペットの上で、のたうち回る事しか出来なくなるジュジェイ。
「直ぐに病院に行けば人工呼吸器を付けて、喉を縫ってもらえば死なずにすむんだ。今からでも遅くはないから病院で診てもらえ。ただし俺たちは悪党だからお前をノコノコと病院なんぞに連れて行けはしない。残念だったな、今度仲間に入るときは人を選べ」
ジュジェイは喉を刺されて数分間、カーペットの上をのたうち回っていたが、やがて動かなくなった。
「さあ、次はレイラ。お前の番だ」




