時計の謎
「ちょっと、そこのお二人さん」
占い師の前を通り過ぎようとした2人の男が足を止めた。
トーニの占い台の下には金属探知機が隠してある。
「死相が出ておるぞ。もしも金属の塊のような物をお持ちなら、今直ぐ捨てなさい」
「ちっ、馬鹿馬鹿しい」
2人の男はトーニの忠告を聞かずに、足早に駆けて行く。
『こちらトーニ。ハバロフ、お客さん2人お通ししたぜ』
ノートルダム大聖堂の入ろうとする2人。
その前でビール瓶を使ったハンドリングをしていたハバロフの瓶が投げられ、倒れる2人、近くでカメラを持って写真を撮っていたミヤンがその2人を抱きかかえて運ぶ。
シャドーボクシングをしながらジョギングするブラームが、怪しい4人組を発見した。
「ちょっといいかい? いつもシャドーボクシングばかりじゃ飽きてしまうんで、お手合わせ願いたいのだが」
いきなり拳銃を抜こうとする4人を相手に、得意のハイキックとパンチをお見舞いして、あっさりと片付け近くに居た警官に引き渡した。
全力で走る7人組の男。
ジェイソンとボッシュのオートバイが、その7人を追い抜きざまに前を塞ぎ、銃を抜こうとした4人を殴り倒す。
しかし残りの3人は銃を抜かずに、オートバイの隙間を駆け抜けて行き、もう直ぐノートルダム大聖堂というところまで走って行った。
その目の前に現れたのは、ハーレーダビッドソンに乗る革ジャンにサングラスの男。
そう、金髪の髪の大男、フランソワ。
立ち止まり、銃を構えようとする3人に向かって、フロントフォークに備え付けた皮のケースから悠々とショットガンを抜き、そして走りながら撃つ。
だが、ズドンと言う音はしなくてバシャと言う乾いた音。
そして幾つものBB弾が高速で飛び出す。
いわゆる改造エアガン。
撃たれた男が、痛さで蹲る。
2人が倒れたが、3人目が発砲した。
弾はフランソワの革ジャンをかすめ、袖が破れる。
だが、それに動じることなく3人目に狙いをつけて倒した。
「ちょいとお兄さんたち、サービスするからフルーツジュースを飲んで行ってくれ」
改造したフレンチバスに取り付けてある金属探知機が、怪しい2人組を捉え、モンタナが呼び寄せた。
2人は素直にカウンター越しに、差し出されるジュースを受け取るために手を伸ばし、モンタナがその腕を掴み、一気に2人纏めてバスの中に引き込む。
あとは、銃を所持している事を確認し、ボコボコにした2人を縛り上げて終わり。
何故か俺の所にだけ、敵は寄ってこなかった。
その代り、ミューレがまた来た。
「いやー、LÉMATさん、意外にスマートですな、恐れ入りました。我々警察が検挙した人数を含めて、これで丁度20人ですから、あと1時間ほど何もなければこれで安心でしょうな」
『結局、俺たちの出番は無しかよ』
無線で入って来たのは、ベルの声。
しかし、あまりにもアッサリし過ぎている。
不安を感じていた時に、レイラ救出部隊のエマから無線が入った。
『レイラが居ない。アジトは空っぽよ!』
「アジトが空っぽってどういうことだ? ちゃんと腕時計のGPSで確認していたんじゃなかったのか?!」
『ちゃんと腕時計のGPSで確認はして入ったわ。でも、それが……』
「それが?」
『アジトの中には行ってみると、その腕時計が椅子に置いてあるだけなの』
「椅子に? テーブルじゃなくて? 椅子の何処?!」
『椅子のクッションの下よ』
クッションの下と言うことは、隠したと言う事だろう。
レイラの身に何か危険があったのか、それともそれが近づいて来ていたのかどちらかだろう。
レイラが時計を隠したからには、屹度何かのメッセージが残されているはずだと思った。
「エマ。時計の状態を教えて」
『時計の状態……えーっと、止まっているわ』
「壊されているの?」
もしも壊されているとすれば、それはきっと時計の秘密がバレたということ。
『いいえ、壊されてはいないわ。リューズが引っ張られて止めてあるの』
「時間とかは、どうなっている?」
『えっと、時計の針は8時で止められていて、曜日はMだから月曜日、日にちは24日になっているわ』
今日は13日の金曜日だから、明らかに何らかのメッセージが隠されている。
時間の8時は何だろう?
時刻を示すのか、それとも違う意味か……。
しかし時刻として考えた場合、朝の8時か夜の8時を示すことになる。
夜の8時と考えるなら、まだ充分考える暇はあるから、ここは違う方を考えてみることにしてみた。
アナログ時計で出来ることは1から12までの数字を伝える事と、方角。
通常は進行方向に対しての方角を指すが、この場合は北を0時とした方角だと考えるべきだと思う。
そうすると8時が示す方角は南西。
南西の方角を見ると、ビルが幾つも見える。
Mは、頭文字にMの付くビルやホテルを指すのではないか……そして24は、階数。
直ぐにリズに連絡をした。
ノートルダム大聖堂付近の南西にMの頭文字の付くホテルがないか。
直ぐにリズから回答があった。
『南東にあってノートルダム大聖堂の見える頭文字にMの付くホテルは5つよ』
「じゃあ、その中で24階に特別室があるのは?」
『えっと、ちょっと待って――それならモーリーホテルが最上階の24階に特別室があるわ』
「それだ! 屹度レイラは、そこに居る!」
丁度その時、俺たちの無線を聞きつけたハンスが駆けつけて来てくれた。
「ハンス。どうして?」
「ナトー、行ってやれ。ここは俺が見る!」
「でも……」
「折角、リビアで助けた命だ。みすみす敵に奪われたくはないだろう」
「ありがとう! じゃあ……」
そのとき急に空の向こうからブーンと言う変な音が聞こえた。
見上げてみると、南西の方角から無数の小さな黒い塊が飛んで来ていた。
「あれは何!?」
レミントンM870 ショットガン
映画「コマンドー」「ターミネーター」「ダイハード」「ランボー」など
正義の味方が持つ最強兵器の代表格。
当然、シュワちゃんさんに憧れるフランソワは、この銃のエアガンを持って参戦しました(^^)




