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フルメタル  作者: 湖灯
鐘楼の鳩が飛ぶとき

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トーニの腹痛①

 病院を出て、部隊に戻る。

 部屋に戻ると、やはりエマはいない。

 いったい、どこに行ったのだろう?

 とりあえず、眠い体を起こすためにシャワーを浴びてスッキリさせて、朝の朝礼の為に司令部に向かう。

 ルーカス大尉もマーベリック中尉もユリアも、そして何故かエマも居ない。

 居るのはハンスとニルス、それに私の3人。

 あれ、エマは?

「とうとう我々LéMAT創立メンバーだけになったな」

 ハンスがしみじみと言う感じで言った。

 創立メンバーか、色々あったな……。

 ちょっと思い出に浸りそうになるのを我慢して、エマの事を聞くと、エマもDGSEに戻ったとのことだった。

 司令部での朝礼を終えて、分隊に戻る。

「隊長に敬礼!」

 モンタナの号令で、集合した2分隊の隊員たちが一斉に敬礼する。

 皆の前を通り、1人1人の顔を見て歩く。

 最初はLéMAT第3班、そして次にG-LéMAT。

 シモーネ、イライシャ、カールの3人は新しく入り、このウクライナが初陣だった。

 キースはザリバン高原の戦いからだが、その前の今後での作戦の時は普通科に居て同じ作戦に従事した。

 メントス、ハバロフ、本当なら2人と一緒にミヤンも居て、いつも3人コンビだった。

 ボッシュ、ジェイソン、フランソワ、思えばこの3人との出会いが無ければ今の私は居なかった。

 ブラーム、心優しく寡黙で機敏な信頼できる斥候。

 モンタナ、気持ちの村はあるが、豪快でタフな機関銃手。

 あれ、トーニが居ない。

「トーニは、どうした?」

「やつは……」

 モンタナが理由を言おうとしたとき、向こうからズボンのベルトを締めながら走って来るトーニを見つけた。

「す、すみません隊長!」

 顔に汗を掻いている。

 腹痛だな。

 列の中に入ったトーニ。

 便所臭い。

「どうした?」

「いえ、なんでもありません」

 目の下に、明らかに寝不足と分かる、クマが出来ている。

 グルグルグル。

 お腹を鳴らして、また額から汗……。

「行って来い」

「ハッ、すみません!」

 隊列に入ったと思う間もなく、またトイレに直行する。

「漏らすなよぉ!」

「うるせー!」

 フランソワの声で皆がクスクスと笑う。

 どうせトーニの事だから、いつまで経っても戻って来ない私を心配してくれて外に居てお腹を冷やしたに違いない。

 チョッと抜けているが、他の誰よりも私の事を心配してくれている優しい男。


 モンタナ班とブラーム班の2つに分けて市内の巡回に出した。

 LéMAT第3班には、使用機材のメンテナンス。

 空挺とLéMAT第1第2班がフランスに帰って、人数が足りなくなったので、基地の警備はウクライナ軍がしてくれている。

 腹痛のトーニには休暇をやり、私は書類の整理と来客時のお茶くみをした。

 来客時のお茶くみは、今まで忙しかったので逃れられていたが最下級士官の務め。

 この場合は女性士官の私はスカートを着用しないといけない。

 自体が急速に鎮静化に進みだした途端、お客さんが増えてハンスも大変。

 この日は、映画監督までプロデューサーやカメラマンまで連れて来て、お茶を出しに出たときに面倒な事に巻き込まれてしまった。

「あー疲れた。もう駄目」

 ついハンスの前で弱音を吐いてしまうと「よく我慢した」と褒められた。

「僕はいつナトちゃんのキックが炸裂するのかと思って、ヒヤヒヤ・ワクワクしましたよ」

「それを言うならヒヤヒヤ・ドキドキだろう」

「だって、顔写真はNGだって言ったら、ナトちゃんの脚の写真を撮ろうとするんですよあのエロカメラマン。僕は蹴り上げるべきだと思いましたね」

「ニルス、そう怒るなって。仕方ないよ、あの業界は。なあ」

「なあって振られても、私は良く知らないぞ」

「まったく腹が立つ、うちの大切な箱入り娘に手を付けようとしやがって!」

 ニルスの言葉に一瞬ハンスの顔を見ると、ハンスも私の顔を見て、眼と眼があった。

「おとなしく箱に入った所は見た事はねえがな」

「まあ、それはそうだけど」

 ハンスの言葉にニルスも渋々同意して、急に2人が笑い出したとき、電話が鳴った。

「はい、フランス外人部隊司令部、ナトー中尉が承ります」

 <ああ、ナトーさんコヴァレンコです。ご依頼の件でご報告をと思いまして>

「なにか、動きがありましたか?」

 <ご依頼の件ですが、2人ともあれから特に変わった所はありませんが……>

「何か引っかかる事でも?」

 <1人の家に、昨日荷物が届いたんですが>

「荷物?」

 <小さな荷物なんですが、あとで配送業者に問い合わせたところ、宛先の住所に住む人物に確認した所、知らないと言うのです>

「知らない?……その荷物は、ウクライナ国内から発送された物ですか?」

 <国内っちゃ国内なんですが>

「クリミア?」

 <そうです。クリミアのヤルタから発送されていました。今分っているのは、これだけです>

「有り難うございます」

 <いえ、いえ。ああ、それから4日後には、あの倉庫の連中の釈放が決まりましたのでご報告しておきます。思ったより長くかかってしまい申し訳ありません>

「仕方ありません。いくら人質を取られて脅されていたとはいえ、武器と知りながら輸送に手を貸していたのだから。で、彼等の仕事は継続して出来るのですか?」

 <はい。そりゃあ勿論、最後には我が国に協力して空砲を運送してくれたのですから恩赦と言うことになっています>

「重ね重ね有り難うございます」

<いえ、とんでもねえです。ウクライナの為にこんなにしてもらって、私はもう嬉しくて嬉しくて……>

 電話を切る間際にコヴァレンコ警部が泣き出してしまい大変だった。

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