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フルメタル  作者: 湖灯
ウクライナに忍び寄る黒い影

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遅い朝食①

 翌日は医療機関を訪れての精密検査。

 手に持っているファーストフード店の小さな紙袋の中に、今日必要な物を入れて歩いていると、皆が見て見ぬふりをしているのが可笑しい。

 検便が入っていることくらい誰だって想像できるだろうけど、女だって普通に〇ンチはするぞ。

 特に気にしないでいるのに、トーニときたらワザワザ私の持っている紙袋を皆に見えないようにするために横に並んでくるので、逆に意識してしまい恥ずかしくなる。

 〇まんま入っている訳ではなく爪楊枝の柄の部分に付いている様なギザギザにホンの少し付いているだけで、しかも液体の入ったカプセルに入れた後に専用の小さくて中が見えないようになっているジッパー付きのビニール袋に入れ、その上から更にジッパー付きの透明ビニールで覆った上に紙袋に入れているから外からは見えもしないし臭いもしない。

 ……はずなんだけど、こうもベタっと横に並ばれると、ひょっとして臭うのではないだろうかと緊張してしまう。

 受付が始まり、提出するまで、この緊張は続きクタクタになってしまった。

 診察は男女別々でフロアも異なる。

 医療従事者のサオリは部隊に戻ってから直ぐにどこかに行ってしまったから、ここで検査を受けるのは戦場に出た実働部隊だけなので女性は私一人だけ。

 もちろん昨日の急増テントの時の様なゴチャ混ぜではない。

 貸し切り状態かと思っていると、当日は別にもう1人精密検査を受ける女性が居るとの事だった。

 サオリかな?

 それとも、どこかの原発の技術者?

 まさかユリアやメリッサでは無いだろう。

 彼女たちが被ばくしたのはドローンだけなのだから。

 順番を待っていると、診察室から出て来た人物に驚いた。

「サラ」

「ここは原発作業員などに向けた放射線関連の健康診断なのよ。だからそんなに驚くことでは無いでしょう?私だって原子炉建屋に居たのだから」

「しかし何で!?」

「日にちを合わせたかってこと?」

 声には出さずに、素直にコクリと頷いた。

「勘違いしないで。ストーカーじゃないわよ。どうせ私も診断を受けるし、アナタも診断を受ける。可愛い妹が来るのが分かっているのにワザワザ日にちをズラス方がおかしいわ」

 まあ確かに、それは言えるけれど、それは本当に姉妹だったらと言う事。

 髪の色も違うし、背も違えば体格も違う。

 2人が並んでいても、姉妹だなんて誰も思わないだろう。

「サラ、君は一体」

 何者かと聞こうとしたとき、ナースに呼ばれた。

 まったく……2人だと空いているのはいいけれど、待ち時間がないので落ち着いて話もできない。

 2人しか居ないので、当然私たちの検査は部隊の誰よりも早く終わった。

「朝食まだでしょ」

「ああ」

「直ぐ部隊に帰るの?」

「いや、皆と一緒に帰る」

「じゃあドリンクに行きましょう」

 まあ特に断る理由もないから、売店で何か飲むくらい良いだろうと思って承知してサラについて行くことにした。

 もちろん携帯で司令官のハンスと、直下の部下であるモンタナに連絡は入れておいた。

 サラは売店のある方向とは逆の方に歩き出したが、他にも売店があるのかと思い深く考えずに着いて行くと病院の駐車場まで出てしまった。

「どこに連れて行くつもりだ!」

「あら、ドリンクって言ったでしょ。今更断る気?」

「大丈夫よ、彼氏がギャーギャー騒ぎ出す前にはまたここに送り届けるから。……それにしても、そんなに彼に心配かけたくないの?お熱いのね♬さあ乗って」

 断ろうにも、そんな事を言われると断り切れない。

 断ると、まるでサラの言うことを認めてしまう事になってしまうので、勧められるままサラのマイバッハに乗った。

 “ギャーギャーか……”

 フッと私が居ない事に気付いたトーニの慌てる姿が目に浮かび、思わず口角が上がる。

 てか、なんでトーニ??

 車は左程遠くまでは走らないで、ほんの1キロくらい走ると洒落たイタリア風レストランに着いた。

 殆どメニューを見ることなく、サラはピッツァと白魚のサラダを頼み、サラはアプリコットのカンポット私はラズベリーのクラスを頼んだ。

 なんとなく今日のサラには、いつものツンツンした感じが無くて、なんだか楽しそう見見える。

「なにかあったのか?」

「なんで?」

「いや、なんとなくいつもより楽しそうにしていると思って」

「楽しいわよ。だって妹と久し振りにレストランに入って食事するんだもの。ウキウキしない方がおかしいわ」

「記憶があるのか?」

「当たり前でしょ6つも年上なのよ」

「……聞かせてくれないか、父と母の事を」

 サラは卓上に置かれたカンポットに手を伸ばし、それをゆっくり持ち上げて一口含む。

 伏せていた白い顔。

 長いまつ毛に隠しきれない大きな瞳。

 青い氷で作られたような、その瞳のターゲットを私の目に合わせると「いいよ」と言ってトリガーを引いた。

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