表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フルメタル  作者: 湖灯
ウクライナに忍び寄る黒い影

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

634/700

ブレジネフ②

 無線機の外部出力コードを引いてきたハバロフが、中継器に繋いで各種設定をし終わった頃、ボッシュを送って行ったトーニもメントスと厚手の放射能防護服を持って帰って来た。

「隊長、設定終了しました」

 持って来たドローンの電源を入れる。

<OK!ユリア復活よ♬>

「よーし皆集まってくれ、作戦会議だ」

 ブレジネフが建屋の地図を広げ、建屋への侵入ルートの説明を始める。

「進入ルートはこの先を少し行くと、厚いドアがありそこを開けると低レベル放射性廃棄物貯蔵施設のある場所に着く。その横にはタービンが格納されているBOXが並び、そこを抜けて脱気室に入ると、その先が原子炉建屋になる。ここからは放射能濃度が高くなるので戦闘は避けてほしい」

「向こうが素直に言うことを聞いてくれるかどうかだな」

 まだ根に持っているフランソワが言うと、何人かが笑った。

「爆発物を仕掛けるとして、最も破滅的な結果をもたらす場所は?」

「彼等がどこまで詳しいかは分かりませんが、安直に考えるなら爆発で斜めに開いたままになっているシェラウド・ヘッドの隙間から爆薬を下に降ろすのが簡単でしょう。この場合爆発の圧力が上方に抜けるので、折角新しくしたばかりのシェルターも破壊でき放射能塵を大量に外部に放出できるメリットがあります。あとは原子炉直下にある、このサプレッション・プールでしょう。ここには溶けたコンクリートや隔壁に混じって流れ出た大量の核燃料が手つかずのまま残っています。核燃料は非常に重いので殆どは溶けたコンクリートに覆われていますが、爆発により表面が剥がれれば強烈な放射線を放つだけではなく、核反応も起こしかねないと思います。局地的な被害に収まることが予想されますが、何かの条件が加われば核爆発も起こりかねないのが、ここの特徴です」

「なにかの条件とは?」

「水です」

「分かった。では我々は炉心を確認してから下に降りる。またはその逆で構わないわけか?」

「いいえ、爆発の影響で炉心に向かうには建物の右側からしか行けませんし、サプレッション・プールに向かうには建物の左側からしか行けません」

「繋がっていないのか!?」

「壊れた瓦礫と熱で溶けたコンクリート、それに放射能の外部漏洩を防ぐ為に新たに流し込まれたコンクリートが邪魔をして通路は極端に少なくしてありますから無理です。もし行けるとすれば、原子炉内を通って溶解した核燃料が空けた穴沿いになら行けるかも知れませんが、降りるためには最低でも50m以上の鋼鉄製のワイヤーが必要になりますし、おそらく防護服はズタズタに避けるでしょうから辿り着いた時に生きていると言う保証は有りません」

「ワイヤーは何所にある」

「ここはただ廃炉を封じ込めるための施設なので、おそらく何所にもそのようなワイヤーは無いと思います」

「チクショウ、不利な状況ばかり並べやがって」

 フランソワの言葉にブレジネフが珍しく反応して睨んだ。

「なんだその目は、掛かって来いよ」

 挑発に反応してブレジネフが飛び掛かろうとしたので慌てて止めた。

「仲間割れは止せ!それともフランソワ、お前原発を前にして退場したくなったのか?」

「まさか……」

「ハバロフ……」

「隊長、司令部のハンス少佐からです」

 丁度ハバロフに司令部に繋ぐように言おうとしたタイミングで、向こうからかかってきた。

「はいナトーです」

<こっちは今、北にある‎クルトワリーショップを制圧した所だ。マーベリックも南の居住区を制圧して、これから南北から一気に本部のあるエネルゲティック文化会館を攻める>

「それだとポリシャ・ホテルに居る1個小隊が攻めて来るが、誘き出すつもりか?」

<その通り、どうもホテルに逃げ込まれたままじゃ幾ら数的有利に立ったとはいえ時間が掛かって面倒だからな。そっちはどうだ?>

「こっちは今コントロールセンターまで来ている。これから部隊を2つに分けて原子炉建屋に突入する」

<了解。LéMAT第3班の半数をそちらに向かわせたから、到着次第G-LéMATで総攻撃を掛けて構わないぞ>

「サンキュー。では、そうさせてもらう」

<頼むぞ!>

「任せろ!」

 無線を切り、本隊の状況を伝えると、皆が喜んでくれた。

「では、これより班を2つに分ける。先ず炉心に向かうA班は私とブラーム、イライシャの3人。サプレッション・プールに向かうB班はフランソワ、トーニ、シモーネそしてブレジネフの4人で一旦建屋を出た後で、モンタナと合流して5人でサプレッション・プールを目指せ。ジェイソンとメントス、ハバロフはこの場で待機し我々の通信状態の確保に務めろ。各班ともに、負傷者が出た場合はその場に留まらせずに、迷わず外に出させろ

カールはキースと交代要員として入れ」

「了解」

「くれぐれも負傷はするな。もし負傷したらB班はカールかキースと替わってもらえ。A班のサポートはジェイソンとメントス、ハバロフに頼む。いいな」

「了解」

 無線で同じ内容を、外で待機しているモンタナに伝えると、やたら張り切っていた。

<私は?>

「ユリアは、私たちを先導してくれ。この距離だとどうみても私たちの方が先に炉心に到着する。到着次第、炉内の様子を探ってもらう。その後はモンタナに持たせた予備機に乗り換えて、そっちの先導を頼む」

<私だけ空間を自由に移動出来るって事ね。了解、任せて>

「ここで放射能防護服を着て出発する。くれぐれも弾帯や装備を防護服の中に入れるんじゃないぞ」

「入れちまったら弾を撃つたびに服を脱がねえとならなくならあ」

「そん時に空気と一緒に、放射能が入って来るって訳だな」

「少々熱くなるだろうが、パレードだと思ってチャンと着こなせ」

「了解!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ