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フルメタル  作者: 湖灯
ウクライナに忍び寄る黒い影
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プリピャチ駅での戦い②

 ストラホリッサを出て1時間を経過したころ、1機のドローンが現われた。

 運転をしていたブラームが咄嗟に拳銃を抜く。

「敵じゃない、ユリアだ。どうしたユリア」

「このまま進むと、解体中の原子炉建屋の上に居る見張りに発見されてしまうわ。先導するからついて来て頂戴」

「了解!キース前に行ってくれ。キース聞こえたか?」

「了解、ユリア機に着いて行きます」

 ユリアの後に着いて5分程進むと司令部に着いた。

「じゃまたね!――おーい誰か充電してぇ」

 喋るドローンと言うのも何だか愛らしい。

 まあ、ユリアだから特にかな。

「ナトー中尉以下15名、到着しました」

 集合場所に着くと、既に司令部のテントは設営されていた。

「ご苦労、急いで機材を降ろし準備に掛かからせろ」

「了解しました!」

「ナトー中尉は直ぐに作戦会議に参加しろ」

 部下たちに急いで積み荷を降ろすように指示して、モンタナと作戦会議に出席する。

 メンバーは私の他にハンス少佐、マーベリック中尉、スウェン少尉、それに民間人らしき人物が1人。

「昨日からのドローンや無人偵察機プレデターでの綿密な調査によると、この地区に潜んでいる敵の人数は250名ほどだという事が分かった」

 当初予想されていた数より50多い。

「敵戦力の内訳は、プリピャチの市街地に200、その手前にある駅に50」

「原発周辺には居ないということですか?」

「事故を起こした原子力発電所を警備している警察と親衛隊からはまだ何も報告は入っていない」

「さあ、作戦会議を始める。良い作戦があれば提案しろ」

 ハンスの言葉に空挺のスウェン少尉が地図を指さして意見を言う。

「駅に50も待ち構えているとあっては、状況が不利ですが、これを避けて町の北側から攻撃してはどうでしょう?」

「市街地を制圧するにはナカナカ良いと思えるが、その場合駅に居る50が原発に向かったときに敵中を突破しなければならくなるが?」

「では、市街地の南から攻撃するのはどうでしょう。これなら駅に居る敵が原発の方に向かったときに、すぐ反応できてしかも敵の後ろから攻撃が出来ます」

「もし駅の50が原発に向かわず、市街に向かって来たら攻撃部隊は挟み撃ちに合ってしまうぞ」

「こちらも戦力を分散させれば?」

「敵の半分以下の人数で、戦力を分散させても被害が大きくなるだけだ」

「かなりの消耗は覚悟しなければなりませんが、先ずは全軍で駅の50を叩き潰し、その後で市街地に突入を計る」

 マーベリックの意見はある意味正攻法。

 決して敵に挟まれることは無いが、市街戦で有利にも断てない。

「敵の待ち構えているところに行くことになるぞ」

「おそらく一局に戦力を集中できない建物に立て籠もる敵と、人数の少ない我々は直ぐに膠着状態になるでしょう。しかしその間に応援が駆けつければ」

「時間が経てば、敵の応援が来る可能性も考えなくてはならないだろう。その場合膠着状態で敵と睨み合っている我々は不意打ちを食らってしまう」

「なら、こっちが有利に立てるように戦ってはどうでしょう?」

「数で不利なのに?」

 私の意見に皆が驚いた。

「全部隊を持って、この駅に居る50を取り囲みます。数的には敵の倍は居ますから有利だと思います」

「ナトー中尉それはいまマーベリック中尉が言ったのと同じでは?」

「いえ、マーベリック中尉は敵を全力で叩き潰すと解釈しましたが、間違いありませんか?」

「間違いない。だから消耗は覚悟だと言った」

「こちらの消耗を抑えつつ、敵の戦力を少しずつ削り、市街の敵を少しずつでも誘き出すことが出来ればどうです?」

「それが出来れば少しは有利になるが、出来るのか?」

「駅に居る50を直ぐに潰さなければ、充分可能かと」

「攻撃しないと言う事なのか?」

「攻撃はします。ただし狙撃によりジワジワと人数を減らして行く」

「なるほど四方を狙撃手に囲まれれば、敵はジッと隠れていても洞窟の中じゃない限り防ぎようがなく、不利な状況を打開するには応援を頼むしかない」

 いつ来るか分からない味方の応援よりも、直ぐ近くにいる味方に応援を要請するだろう。

 そして、市街地からの応援部隊は必ず北からやって来る。

 ドローンで敵の動きを監視している我々は、いち早く敵の動きを察知し、待ち伏せをする事が出来るから必ず有利な条件で戦う事が出来る。

 おそらく、この駅に居る50は敵のくさび

 だが、その楔を餌に使わせてもらう事にした。

 幸いここに居る空挺部隊もLéMATも、特殊部隊だから狙撃手は沢山いる。

 駅に居る敵には申し訳ないが、狩らせてもらう。

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