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フルメタル  作者: 湖灯
ウクライナに忍び寄る黒い影
614/700

プリピャチ駅での戦い①

 AM8時。

 全員装備を整えて、注意事項を話す。

 先ずプリピャチでの我々の持ち場が市街地中央であること、戦闘中にチェルノブイリ原発に何かあった場合は直ぐに装備を替えて対応に当たる事。

 武器は通常のSIG SAUER P320とHK-416加えて、スタームルガーLCRとチアッパ・リトルバジャーを装備する。

 この2つは繊細な原子炉建屋内に突入する事態が起きたとき、通常のを装備から外して代わりに使用する。

 理由は至って簡単、建屋のあらゆる備品を壊さないため。

 だから決して的を外すことは許されない。

 スタームルガーLCRはショートバレルなので敵の体に当たりさえすれば、もう金属に穴をあける力は残ってはいない。

 当然その程度の威力ではヘルメットやボディーアーマーを貫通する事は出来ないから、カバーされていない手足と顔面を狙うしかないが、それでも1発のダメージには限界がある。

 だから隊員たちには敵の顔面に叩き込むか、チアッパ・リトルバジャーを使えと命令した。

 同じ22口径でも銃身長の長いチアッパなら、至近距離であればボディーアーマーを撃ち抜くことは出来る。

 スタームルガーLCRはリボルバーなのでサプレッサーは付かないが、後の銃にはサプレッサーを装備し、チアッパにはスコープを取り付けた。

 あとは全員通常の戦闘服の下に、放射線防護服を着ることにして、全員インカムとガイガーカウンターを装備した。

 熱は籠るが、初めから着ていくと目立ってしまうし、途中で着替える暇などないから。

 リュックの中には、放射線防護頭巾と放射線シールドと高性能フィルターの付いたカバーを入れておく。

 これだけの装備を常時持って運ぶのは体力を消耗する事になるので、私たちの部隊はトーニとキース、それに空挺の4人が補給部隊としてハンスの居る本部に待機する。

 もちろんこの布陣にトーニは真っ向から反対したが、万が一原子炉に爆弾を仕掛けられた時に処理してもらわなければならないことを伝え却下しようとたが、逆に戦場に安全な場所はないというトーニの主張により覆されてしまった。

 プリピャチの市街戦にはサオリも着いて来る。

 私たちだけではなく、多くの者が怪我をするだろうから。

 怪我人をイチイチ本部迄運んでいたので戦力が落ちてしまう。

「ナトー、そりゃあなんだ?出動命令が出るまで的宛てゲームでもして遊ぶのか」

 トーニが私の肩に掛かっている弓を見て言った。

「これは私の追加装備だ」

「映画では見た事はありますが、実際の戦闘で使えるのですか?」

 疑問に思ったシモーネが言った。

「こう見えても有効射程は優に200m以上あり、チアッパより長い。試してみるか?」

 皆が一斉に行列を作る。

 倉庫の長さは約50m。

 そこの壁に30cmの的を貼り、皆に代わる代わる矢を放って遊ばせた。

 誰も的の中心に当てられない。

「こりゃあ幾ら何でも使えませんぜ」

 最後に矢を放ったモンタナが降参して言った。

「まあな、一朝一夕では無理な道具だ」

 モンタナから受け取った弓に、矢をつがえ、放つ。

 ほぼ音も無く飛ぶ矢が、的の中心に当たる。

「凄え、10点だ」

「いつの間に?」

「休日に」

「凄え、まさに殺しのプロ」

 イライシャが思ったままを口に出してしまい、慌ててモンタナたちがまるで体を使って踏みつぶす勢いで発言を止めさせた。

「いいさ。生かすも殺すも紙一重。確実に相手を殺せる能力がなければ、確実に生かすための射撃もできはしない。そのために我々LéMATは射撃訓練に力を入れている」


 その後は体を動かさず、寝転がって時間を待っていた。

 目を瞑り、ほぼ寝ている状態。

 任務終了まで、どれだけ時間を要するか分からないから、それまでは出来るだけ寝て体を休めておいた方が良い。

 ハンスやエマたち司令部の人達には悪いが、寝ておくのも重要な任務のひとつ。


 AM10時。

 遂に、出動の命令が出た。

 集合場所は原子炉のあるプリピャチの北西にある旧プリピャチ駅。

 機材は既にトラックに積み込んでいるから、キースのバイクを先頭に一路チェルノブイリ原発のあるプリピャチを目指した。

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