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フルメタル  作者: 湖灯
ウクライナに忍び寄る黒い影

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敵補給部隊発見③

 お互いに離れて行く相手を名残惜しむように眺めているうちに、ボートは消えて行った。

「まさか水着のホックが壊れるとは思っても居なかったわ」

「私に意地悪をするから罰が当たったんだ」

「だーって、ナトちゃん、仲間にはサービスするくせに、敵には全然サービスしないんだもの」

「サービス?」

 意味が分からないで聞くと、エマは少しの間私を見つめていたけれど、諦めるように目を離すと「まあ、妬いても仕方ないか」とホックの外れたブラを直して着けた。

「あれっ、ナトちゃんは直さないの?」

「今更直さないよ、だって後は体を拭いて着替えるだけでしょう?それにもう生地が伸び過ぎてダブダブでみっともないし」

「そ、そう……」

「なにか、また、企んでいるの?」

「なにも企んではいないわよ、それにしてもアイツ達、いつナトちゃんの胸が出て来るのか目を皿の様にして見ていたわね」

「もう」

「男の人ってはっきりと出ているよりも、出るか出ないかとか見えるか見えないかとか、微妙なところに凄く興味を持つみたいよ」

「そうなんだ、変わっているね」

「あれっ?そう言うのってナトちゃんの得意分野じゃなかったの?」

「あっ、さっきのサービスの話って、もしかしてそのこと!?」

「えっ!?まさか、いま気付いたとか?」

「ゴメン、今気付いたけれど、決してサービスなんかじゃないからね」

「雨の中、白のタンクトップは?」

「あれは、シャワーの後で急いでいたからだと言っただろう」

「カールに聴診器を胸に当てさせたのは?」

「まさか違う意味での聴診器使いだとは、思っていなかったからだ」

「怪しいわね」

「お好きに、どうぞ」

 私は、自分が女だからと言って、この体をサービスに使った事など殆どない。

 何故“殆ど”と付けなくてはいけないかと言うと、激しい戦闘中結果的にそうなってしまった事を自ら見過ごして居ることと、過去に1度だけトーニに許し掛けたことがあったから。

 だって、あの時のトーニは1昼夜食事も睡眠もとらずに敵にさらわれた私たちを追いかけて戦ってくれたんだから当然でしょっ!

 エマと話をしながら岸に上がり、木の枝に掛けていたタオルに手を伸ばそうとしたときに、それを誰かから渡された気がして無意志に「Grazie!(ありがとう)」とイタリア語で言ってから慌てた。

「トーニ!なんでここに!?」

「そ、そっちが、呼んだんだろうが……そ、それより……」

「あっ!」

 トーニが片手で目を隠し、もう片方の手で私の胸を指さしたので、はじめて気が付いた。

 ブカブカになった水着を押さえていた手をタオルに伸ばしたことで、胸が危ないことになっていたのだ。

 “男の人ってハッキリと出ているよりも、出るか出ないかとか見えるか見えないかとか、微妙なところに凄く興味を持つ……”

 エマはトーニが到着していることに気付いていたに違いない。

 振り返りエマをキッと睨む。

 涼しい顔で体を拭き終わり着替え始めたエマが「騙してないよ」と言った。

「でも、ワザと教えなかった」

「私が知っていたと言う根拠は?」

「そ、それは……」

 根拠はない。

 ただ、河から上がった時の会話の始めに、一度言い籠った所で気がついたのは確かだ。

「だいいち岩山に隠れて待ち伏せしている狙撃兵を先に見つけてしまう超優秀な戦士に、私がいちいち教えるのもおこがましいでしょう。違う?」

 岩山に隠れて待ち伏せとは、屹度ザリバン高原でアサム達を追っていた時の事だろう。

 組織が違うと言うのに、よく報告書を読んでくれている。

「でも、どうして?」

「えっ!?」

 反撃なのか分からないが、エマに急に聞かれて驚く。

「どうしてその優秀なスーパーナトちゃんが、平常時にはこんなに抜け抜けなの?」

 どうも今日のエマは虫の居所が悪いらしく、嫌なところをつかれた。

「えっと……」

 たしかに戦闘モードではない時には他所事を考えていたり何も考えていなかったり、抜けていると言われても申し開きが出来ない所が多々あるように自分でも思う。

「イルカと同じじゃねえのか?」

「イルカ?」

 エマに問い詰められて困っている私に代わり、トーニがエマに答えてくれた。

「つまりよう。昼間泳いでいるときには脳を全開で使って、夜中は溺れない様にだけ省電力モードみたいに必要最小限の脳だけ眠らせずに起こしておくって言うこと」

「なるほどねえ……それも、そうね」

 意外にもエマは、それで納得してくれた。

 イルカのたとえとは気が利いている。

 けれども、トーニは間違っている。

 海の中に住むイルカは、脳は半分ずつしか使わない。

 つまり半分が起きているとき、もう半分の脳は寝ている。

 イルカはこうして起きている脳と寝ている脳を40分ずつ交互に使って、おぼれないようにしている。

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