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フルメタル  作者: 湖灯
ウクライナに忍び寄る黒い影

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秘密の索敵任務①

 私の意見は皆と違った。

 だからと言って特別披露ひろうしたかったわけでもなく、その逆でもない。

 ただ、意見を求められたから言うだけのこと。

「たしかに敵はあの夜の攻撃に失敗して一時的におとなしくなっている。皆が言う通り打つ手が無くなって弱っているのかも知れないし、次の機会を待っているのかも知れない。そして、我々が動くのを待っているのかも知れない」

「私たちが動くのを待っている?」

「それって“罠”と言うこと!?」

「つまり迂闊に動くと、敵の罠にかかってしまうと言う事ですか?」

 皆が私の意見に驚いた。

「分からない。私は敵のボスではない。だけど全ての可能性の中には、そう言うことも隠れているのではないかと思う」

「しかしミサイル攻撃の後、基地に侵攻してしてきた敵部隊の殆どは殲滅して、その数は2個小隊以上の数だぞ。罠を仕掛ける余力などない様な気がするが……」

「いや、敵の脅威は数だけではないことは、逆の立場になって見れば分かると思うのですが……」

 ルーカス大尉が持ち出した数の論理に対して、マーベリック中尉が意見すると、一瞬皆の視線が私に向けられた。

「たしかにマーベリックの言う通りだ。ナトー続きを言ってくれ」

「はい」

 私は思っていることを話した。

 問題なのは、敵は我々の規模や装備等を大体知っているのに対して、我々は敵の規模や装備も知らなければ居場所さえ知らないと言うこと。

 敵がチェルノブイリのとある場所に潜んでいるだろうことを私は予想できているが、それを皆に教えるのは時期が早い。

 教えれば、皆の目標がその場所になってしまうのは間違いないが、目的地がその場所であっても肝心なのは“どの様に行くか”だ。

 道を間違えてしまうと、たどり着けなくなってしまう。

 もちろんここで言う道とは地図上の道路ではない。

 如何にして行くかという、道筋。

 この段取りこそが、隊員の生死を左右してしまう。

「とにかく、この基地周辺に潜んでいる敵の部隊が必ずいるはずで、それを潰すよりも先に潜伏する部隊への補給ルートを調べる必要があると思います」

「それは何故?部隊を潰してしまえば、補給ルートは無意味になるわよ」

 エマが言う通り、地上戦では潜伏する部隊を潰す事や、その補給を断つことが優先されてきた。

 しかし敵がゲリラ戦的に小部隊で潜伏している場合は話が別。

「補給ルートを調べれば、敵が何カ所に大凡何人潜んでいるかが分かるはず」

「つまり諜報活動をして、先ず情報を集めることが肝心だと言う訳ね」

「しかし、そのような任務を、どこの誰に頼めばいいんだ?」

 副司令官のルーカス大尉が腕を組んで困った様子で言った。

「あら、そんなの簡単よ。ここにDGSEの優秀なエージェントと、DGSEではないけれど更に優秀なエージェントが居るじゃない」

「頼めるか?」

「もちろんよ!ねえナトちゃん」

「ああ、こちらこそ頼む」

「リビアでの『シェーラザード作戦』以来ね、ワクワクしちゃうわ!」


 ハンスの許可を貰い、作戦が決まると私たちは幾つかの班に分かれて行動することにした。

 一応エマは少佐だけど、部隊の指揮権は私に置いて、この作戦に限りエマは一般市民の協力者と言う立ち位置になってもらいハンスとエマ本人の了解を得た。

 本人には内緒にしているが、危険な任務になる可能性があり、最悪の場合でもエマだけは助けたかった。

 そしてこの基地から毎回偵察に出ていたのでは、直ぐに足がついてしまうので、基地も出ることにして基地から東に3km離れたキャンプ場をベースにすることにした。


 次の日から我々G-LeMATを中心として、早速情報収集活動に入った。

 新人のイライシャとシモーネの2人の新人は、それぞれモンタナとフランソアとペアになり、ドニエプル川に2艘の船を浮かべて釣り人に成りすまして水上を監視。

 トーニとキースは、新聞配達員と牛乳配達員としてオートバイで、基地北部に広がるロヴィ地区の森に点在する家々を回る。

 カールはジェイソンとボッシュを連れて、電気工事の点検業者として回る。

 新米のカールだが歳はジェイソンとボッシュより上で、なにしろロシア語が堪能なので外国人労働者を連れて歩く現場監督にうってつけ。

 その上、ジェイソンとボッシュの2人は工兵部隊での研修で、仮設の電話工事や通信傍受などの技術も習得してきているので、工事と称して通信傍受も出来る。

 メントスとハバロフは波止場や浜で釣りを楽しみながら敵を探し、私とエマはブラームの運転するキャンピングカーに隠れて各班からの情報を待つ。

「私だって捜索に参加するつもりだったのに、何でこんな所で何日も待機しなけれなばらないんだ?」

「今回はリビアの時と違うのよ」

「違うって?」

「あの時は、人込みに紛れる事が出来たでしょ」

「たしかにそうだけど、なにも隠れる必要は無いだろう?」

「何言ってんのよ。こんな美人の2人連れなんて直ぐに、覚えられてしまうわよ!」

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