集まった仲間たち③
わたしもガモーの使う言葉の全ては分からないけれど、なんとなくこう言うニュアンスだと言う事は感じ取れるようにはなったと思う。
「レイラ!?」
直ぐにレイラの異変に気付いた私に対して、こう言うことに直ぐに気付きそうなエマは気付かないで「あんたチョッと太ったんじゃないの?」と茶化した。
「違うでしょエマ」
「違うって??」
ヤザが照れて頭を掻き、レイラも恥ずかしそうに少し俯き加減でモジモジしているところに、急にガモーが割って入ってきて言った。
「おめでたやがな!」
「OMEDETA?」
言葉の意味が分からない、エマが復唱する。
「つまり、お腹の中に赤ちゃんが出来とんねん!ナトー、あんさんも気付いたら“あらレイラ!?”やのうて、“赤ちゃんできたのね、レイラさん御目出とはん”くらい言うたらどないやねん?あんさんが言わんさかい、場の雰囲気が新喜劇の背中がムズムズするような恥ずかしい場面みたいになってもうたんやないか」
「ゴメンなさい」
「ええねん、ええねん。ほなみな、一斉に祝うてあげてんか」
ガモーの音頭に皆がポカンとしている。
私はガモーの脇を突いて、教えてあげる。
「ロシア語が分からなくても、ここのメンバーなら英語で充分通じるんだよ。むしろ日本語の方が通じない」
「さよか……ほな、仕切り直して、For new babies born in the future!」
「Congratulations to Leila and Yaza!」
「大変だったでしょう?」
「ああ、なにせ成田を出てもう22時間の長旅だったからな」
「レイラ大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ。東亜東洋商事の栗田会長が私たちの為にファーストクラスを取って下さったから」
東亜東洋商事と言うのはコロンビアでの誘拐事件の時に、私たちが成り済ました貿易会社。
まさか実在する会社だとは思っていなかった。
「でも、その会社の会長さんが何故?」
「私はまだ詳しくは知らないけれど、SISCONの活動に賛同する大手企業のひとつらしいわ。とっても好い人よ、今度日本に来たら紹介してあげる」
「よく合うの、その栗田会長さんと」
「資金的な援助の他に、おそらく私たちが早く日本に慣れるためだと思うけれど、よく話し掛けてくれたり、現場で一緒にお弁当を食べたり、食事会を開いてくれたりしているわ」
「いい人なのね」
「うん」
「ヤザはどう?日本での暮らし」
「ああ」
「差別とかされていない?」
ヤザはこういうことには疎いだろうから、レイラにも聞いてみた。
「ないわよ。日本の何所に行っても歓迎されることは有っても、嫌な目で見られた事なんて一度もないわ。日本に住むようになって分かった事なのだけれど、おそらくこの国の人たちの差別的概念は、人種や宗教や肌の色ではなく“自分たちにとって害のある人かどうか”と言うところじゃあないかと思うの。だから外国人だからと言って特別ジロジロ見る事もない。むしろチンピラまがいの日本人の方が、人から嫌な目で見られているわね」
調べたところ日本には余り外国人に対する差別はないと書かれていたが、実際に住んだことはないので心配していたが、レイラの言葉を聞いて安心した。
「ところでサオリ達は何をしに?」
「あら、新システムの構築よ。知らなかったの?」
“エマ……”
私に内緒にしていたエマを睨む。
久し振りに会うレイラとお喋りをしていたエマが、私の視線に気付いて目と目が合う。
慌てるエマの目が一瞬泳いだ後、ペロッと舌を出した。
まあ、その可愛さに免じて許すことにしよう。
予想していたが、基地に戻るともう1人お客さんがあった。
まあ正確に言うと、お客さんではなく同僚となのだが。
「ナトー隊長、お疲れ様です!」
「ユリア、とうとう来てくれたのね」
「ハイッ明日からよ!」
これから新しいシステムが立ち上がる事が正式に始動するにあたり、ようやくユリアの入隊が認められたのだ。
当然、その晩はヤザやサオリたち、そしてユリアの歓迎会になった。




