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フルメタル  作者: 湖灯
ウクライナに忍び寄る黒い影

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さまざまな分析①

「トーニ」

「なんだ?」

 整列を解除して、トーニを目で呼び寄せた。

「借りていた服だけど、クリーニングに出して返すから5日後になるけどいいか?」

「ク、クリーニングだなんて大層なことしなくても、そのまま返してくれたって良いぜ(“チクショー、クリーニング屋め!俺はナトーの脱ぎたてが欲しかったのに……)」

「いや、それでは、折角貸してもらったのに悪い」

「じゃあ、それでいいぜ。……と、ところで破れたナトーの服はどうする?」

「ああ、それなら悪いけれど、捨てておいてくれないか」

「あ、ああ(チョーッラッキー!!捨てるものか、一生大事にするぜ!)」

 キョロキョロと目を動かせている私に気付いたトーニが、誰か探しているのかと聞いて来たので、ユリアは何所に行ったと聞くとさっきまでエマと話をしていて司令部に向かって行ったと教えてくれた。

 “何の用だろう……”

 とりあえず、いま司令部に行くのは恥ずかしいので止めて、そのまま仲間たちと雑談をしていた。

「そう言えばモンタナとフランソワ、なにかあったのか?」

「あっ、な、何のこと?」

「なっ、なんか、あったのか?」

 2人とも、なんだか返事が怪しい。

 丁度ニルスが通信室から出て来たので、ニルスにも同じ質問をしてみると、こちらも何か隠しているような返事をして逃げようとしたので捕まえた。

「お前たち、一体何を隠している?」

「な、なにも隠していないよ。ただ……」

「ただ?」

「あー……ただ、新しいシステムを試していただけ」

「その新しいシステムと言うのは何だ?」

「……」

 モンタナとフランソワは黙ったまま、ニルスを見ている。

 意を決したニルスが、現場でナトちゃんも使ったヤツだと教えてくれた。

「私が使ったもの?」

「そう。ビデオのストリーミング」

「Youtubeでもやるのか?」

「いや、現場の状況を司令部でも確認できれば、もっと的確な指示や応援が出来るだろう」

 なるほど、それは確かにそうだ。

 万が一部隊が全滅したとして現場の隊員から何の連絡も無かったとしても、隊員が個々に付けているカメラの動画を遠隔で見ることで、応援部隊は的確な情報収集と現場到着後の適切な行動がとれる。

「いつから観た?」

 私が出て行く時に、ニルスも丁度外出するところだったはず。

「今朝、総務省に行って開設の手続きを済ませて来た……」

「どの場面から観たのか聞いている」

「……」

 3人とも俯いて答えない。

「グラコフとの闘いの場面だな」

 なるほど、あの場面を見れば、帰って来た時に私を見る顔が赤かったのも頷ける。

 しかし、トーニは時限爆弾の処理のため俯いていたはずだし、私のカメラは自分自身を映さない……もしかしてグラコフに上着をむしり取られた後からなのか!?

「行くぞ!」

 腰を上げて3人に声を掛けた。

「行くって、どこに?」

「映像を確認する。どうせデーターを残しているだろう?」

「それは……」

 通信室に向かう私の後を、怒られた子供の様に渋々付いて来る3人。

 部屋に入って腕組みをしていると、ニルスが恐る恐る操作を始め、モニターに映像が映し出される。

「各カメラの切り替えは、このテンキーに登録してあります。ナトちゃんが1でトーニが2、カールが3で第3分隊のカービ軍曹が4番です」

「それは今でも切り替えは可能なのか?」

「今現在切り替えができるのはライブの時のみで、この映像はライブを録画したものです。後日サーバーが来る予定なので、それが来れば各自のデーターを取り込んで編集が可能になります」

 映像は草むらから飛び出した私のカメラから始まり、援護射撃をするトーニ、左翼に回り込むカール、銃声を聞いてコミュニティセンターから移動を始めるカービ軍曹とそれぞれ切り替わって行く。

 ナカナカ良く出来ている。

 これなら誰が今どの様な行動を取っているのかが、手に取るように分かる。

 トーニの2発目が納屋の窓に吸い込まれ、狙撃兵を倒したのは私のカメラに映っていた。

 カールのカメラが爆弾の投下の瞬間を捉える。

 次第に接近して来る爆弾に逃げ出す、捕らわれて迫撃砲を打たされていたサバイバルゲームプレイヤーの3人が逃げ出すと、遅れて気が付いた見張りの男が銃を構えて追う。

 撃とうとした瞬間に、納屋の中から指示が出たらしく、3人を撃つのを止めて私の方に銃を向けたときにカールが撃ち倒した。

 このとき私は横走りに変え、納屋から敵が出て来る気配に集中していたから、この敵には気が付かなかった。

 カールが倒してくれなければ、納屋から出て来た4人を倒したあと。この男の銃弾を食らっていただろう。

 カールのカメラが、遠くでドローンに引かれながら、物凄い勢いで草原を突っ走るトーニを捉えていた。

 その速さはオリンピックの短距離選手級で、しかも斜め上方に引っ張ってもらっているので歩幅は優に3m以上ある。

 ここからカメラは私のモノに代わり、捕えられたものの中からグラコフが現われ、格闘戦になる。

 カメラは奴の二段蹴りを捉え、何もニルスたちが隠すようなことはなく良く出来ていると思ったが、問題はこれから先だった。

 グラコフにむしり取られた上着が定点カメラになる。

 なにも映らない状況がしばらく続くが、次の瞬間私の下半身を見上げるような角度からグラコフの手が伸びてきて、一瞬のうちにズボンが裂けてずらされる。

 見上げる角度で映し出されたのは、私のお尻。

 しかもTバックを履いていたモノだから、何も履いていない様に見える。

 あとは、また何が映っているのか分からない状態が続いていた。

「なるほど、良く出来ているが、こういう事か。とても良いシステムだと思うが、試験運用にせよ、装着者本人たちに無断で見てしまうのはいかに軍隊と言えども良くないのではないか?」

「すみません」

 3人は素直に非を認め、頭を下げて謝ってくれた。

 私だって一瞬、お尻を見られただけで、そうそう目くじらを立てて怒る必要もない。

 ところが、下げた頭を上げた3人の目が何故か彷徨っている事に気付き、背を向けていたモニターに顔を向けなおす。

 映っているのは、トーニと服の交換をしてズボンを脱いでいる私の姿。

 またしてもTバックのお尻が現われ、今度は自分の裂けたズボンを脱いでトーニのズボンに履き替えるまでの間、ズーッとそのお尻がプリプリと揺れている。

「キャー!何撮ってんのよ馬鹿!」

 思わずモニターの前に立ちはだかり、映像を隠した。

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