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フルメタル  作者: 湖灯
ウクライナに忍び寄る黒い影

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突入①

「よくやったなカール」

 ナトーがカールを褒めた。

“なんで??”

 確かにカールが捉えたのは一味のボスだった。

 しかし奴はその前に命令違反を犯して、捕虜の監視や間接的支援だけを命じられた言ってみれば謹慎状態のはず。

“ひょっとしてナトーは、度重なるカールの命令違反に呆れ返って、気持ちとは反対の行動を取ったのか?

 普通なら、有り得ねえ。

 だが最近のナトーときたら、日増しに女の香りがプンプン匂って来ているから大いに有り得る。

 おふくろも親父おやじと大喧嘩した後は、妙に楽しそうに部屋の片づけをしたり料理を沢山作ったりと、変な行動をしていた。

 親父はその度に“家でするんじゃないか”とか、“食事や酒に毒を盛られているんじゃないか”とか考えてビクビクしていたものだ。

 血の繋がった実の母親ながら、女は分らねえ。

 こりゃあ放って置いたらカールの奴、クビどころか命までも怪しくなっちまうぜ。

「オメーまた命令違反しやがって、今回は大手柄を立てたからナトーに褒められたが、今度やったらクビになっちまうから俺も一緒に謝ってやるからナトーに謝っておけ!」

 トーニそう言われてカールがポカンとしている横からブラームが、カールは命令違反を犯していないと言う。

「何故?」

「トーニお前、もう一度ナトーがカールに命令した内容を思い出してみろ」

「内容?それは……捕獲した敵兵の見張りと、4階が制圧されたのがバレると困るので射撃の許可と、逃げる奴を捕まえること。んっ!ひょっとして逃げる奴って言うのは捕虜の事じゃなくて、1階のテロリストの事なのか!?」

「当たり前だろう。捕獲した敵の見張りをするって事は、そもそも逃がさないって事だ」

 ブラームに言われて、ようやく気が付いた。

「カール!オメー良く気付いたな!」

「気付かねえのは、お前さんだけだぜ」

 モンタナがポンと俺様の肩を叩いて笑う。

 いつもなら怒りだすところ。

 でも今は違い、逆に嬉しい。

 心が熱くなった。

 カールが命令違反を犯したとき、それをとがめるナトーを正直いつになく少しウザいと思ってしまった。

 これから大事な突入が控えていると言うのに、1人でも人数が欲しい時になんてことを言いだすんだと思っていた。

 どうでもいいとは思わないが、作戦が終了した後でもいいじゃないかと。

 しかし、俺の考えは間違っていた。

 ナトーは100%確実に作戦を成功させる。

 その後で、命令違反がどうとか言われても、誰も反省はしねえ。

 だから、あの時カールにキツく当たった。

 そしてナトーは知っていたのかも知れない。

 敵のボスが、人質の中に紛れ込んでいるかも知れねえってことを。

 いや、かも知れないじゃねえ。

 知っていたんだ。

 だからカールに見張らせた。

 違う。

 カールを試したのだ。

 俺が少しウザいと思ったことは、当事者であるカールも感じたかも知れねえ。

 ナトーは上官とは言え、カールにしてみれば16歳も年下の、しかも女。

 面倒くせえ事言いやがって。

 なんてホンの少しでも思っていたら“逃げる奴を捕まえること”なんて言われてもピンと来ねえ。

 俺と同じように、捕虜にした敵を逃がさないようにと思うだけだ。

 なにせカールは1階には降りる事は許されてねえんだから、そう思うのが当たり前。

 いつも指示は分りやすく出すナトーが、曖昧あいまいな言葉で伝えたのは考えさせるためだ。

 命じられた言葉の意味と、逃げた敵がもたらす命の損失のことを。

 当然逃げ出した敵がいたとすれば、そいつは必ず銃を持っている。

 敵を殺さずに事件を解決すると言う目的で、折角用意した銃も殆ど使わずにここまで来た。

 敵のボスが逃げ出したところで、ナトーの腕なら簡単に倒す事が出来る。

 しかしもし逃げた奴が薬をやっていた場合、殺さないでいると捕まえようと近付いた警官との間で必ず銃撃戦になる。

 そうなれば、逃げた敵の命は無いだろうし、警官にも犠牲者が出るかもしれない。

 やはりナトーは戦略の神アテナだ!

「ナトー!!」

 俺は混雑する現場から遠ざかろうとするナトーを追いかけた。

「ナトー!」

 肩に手を掛けると、ナトーが振り向いた。

 いつものように、感情を押し殺した表情。

 でも、この上もなく美人。

 しかし、俺の目は振り向いたナトーの顔を一瞬捉えたものの、そこから直ぐにもっと凄いモノに釘付けになる。

 それはナトーの胸。

 上着のボタンが千切れ、はだけて見える胸には何故か幅広の包帯が巻かれていた。

 それだけでもかなり魅力的なのに、激しい運動の後だからか、所々包帯に隙間が出来てその間から肌が見える。

「なんだ?」

 振り向いたナトーが、俺の目が下に動いたのを見て不思議がり顔を下に向ける。

 その拍子に、更に包帯が緩み、一部が露出し始める。

「キャーッ!トーニの馬鹿!」

 俺の頬を打って、慌てて服の前を閉じるナトー。

“俺が悪いわけじゃねえのに……”

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