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フルメタル  作者: 湖灯
ウクライナに忍び寄る黒い影

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自転車歩兵部隊②

 軽快に喋るトーニに対して、ブラームたち3人は私の無事を確認するなり道路に倒れ込んでしまった。

「まったくだらしがねえなオメーら!いつもの威勢の良さは、どこに置いて来やがったんだ!?」

「逆にこっちが聞きてえぜ、いつもランニングでビリのオメーが、なんでこんなに速く走れるのかを」

「緊急事態だからだ。大体自転車をぐのに、力任せに蹴って進もうとするから疲れて遅くくなるんだ」

「漕がなければ進まないだろう」

「馬鹿、自転車はペダルを回して前に進ませるんだ」(※)

「なんだそれ、本当かよ」

 モンタナが驚いたが、トーニの言う通りで、当然運動方法が違うから使う筋肉も違って来る。

 つまりランニングでトーニが遅いのは怠けている訳ではなく、自転車脚になっていたと言う事で、これには私も気が付かなかった。

「しっかしスゲータイミングで敵さん出て来たなー。まるで狙わ×××」

 慌ててトーニの口を手で押さえた。

 確かにタイミングが合いすぎている。

 国防省を出た時のまま、先頭のハンヴィーに乗っていたなら私は何もできないまま黒焦げになって死んでいた。

 誰かが教えた可能性もあるが、それを口に出して言うことは、ウクライナ軍と我々との信頼関係にも深い溝が出来てしまう。

 おそらく、敵の狙いもそこにあるのだろう。

 しかし国防省を出て30分後に待ち伏せに会うなんて。

「モンタナ、来てくれてご苦労だが、直ぐに戦えるか?」

「はい、弾さえあれば」

「弾さえあれば?」

「はい、宿営地では射撃場以外で実弾を使う事はありませんので」

「では、空マガジンを抱えて応援に来たと言う事か」

「ここに来れば、弾を分けてくれると思いまして」

「途中で敵にあったら、どうするつもりだった?」

「素手で……」

「呆れた」

 弾の入っていない銃を持ってくるなんて、ザバゲーでもありえない。

 もっとも“呆れた”とは言ったものの、こいつらなら充分素手でも対応は出来るだろう。

「すまないがレーシ中佐、弾を分けてもらえないか」

「構いません。好きなだけ持って行ってくれればいいですが、なにか有りましたか?」

 銃弾などはトラックに沢山積んであり、そのトラックは今スペアタイヤの到着を待っている状態。

「ああ、なにか敵に動きがあるような気がする」

「それは?」

「この待ち伏せの人数が、少なすぎると思いませんか?」

「待ち伏せ!?」

「い、いや、偶然かも分からないが、RPG使いに3人のスナイパーの護衛と言う布陣が妙に気になる。偶然出くわして襲うには無理があるが、レーシ中佐なら計画的に襲う場合はどうしますか?」

「時間に余裕があるなら、道の片側だけではなく両側に部隊を布陣させます。それが無理で片側だけに部隊を配置させる場合でも、突破されないように部隊を横に長く配置します。それを考えるとナトー中尉に仰る通り変ですね……」

 レーシ中佐は手で顎を触り考え込んでいた。

「このトラックは定期便ですか?」

 不意に話題を替えた。

「あ、ああ。これは急遽手配した物です。なにしろ今屯所に使っていただいている場所は、元々は予備役の訓練施設ですからナトーさんたちフランスの協力が速かったもので、弾薬の供給が全然追いついて……ひょっとして、敵の狙いは!?」

「可能性は充分にある。折角協力するために部隊を送ったのに、ウクライナ側の弾薬補給が遅れている間に送った部隊が全滅でもしたら、いくら外人部隊だとは言えフランス政府も黙ってはいまい」

 レーシ中佐が移動の準備を急がせる。

 目的地はキエフの軍本部から、外人部隊の駐屯地に変更された。

「モンタナ!レーシ中佐に着け」

「了解しました!……」

 返事はしたものの、いまいち理由の分かっていない態度が丸見えで可笑しい。

「車内でレーシ中佐から作戦概要を聞き、直ぐに空挺隊の奴等に伝えろ!ついこの前まで一緒に訓練した仲間だからお前が適任だ」

「了解!」

「ナトーさんたちは!?」

「私たち4人は、偵察を試みる。攻撃する部隊とは別に、この近辺に何か“お宝”が潜んでいるような気がする」

「何名か、付けましょう」

「いや、自転車でのんびりパトロールして回りたい。それよりも駐屯地を頼みます」

「分かりました。では、御無事で!」

「レーシ中佐も!」


(※)自転車とランニングの違い。

 自転車とランニングの走り方は、まったく運動方法が違います。

 ランニングで前に進むには、先ず片方の足で体を前方に進ませるために地面を蹴る必要があり、逆の足は蹴った力に対する予想着地点に向かわせなければいけません。

 そして着地した体を支え今度は次の役割、つまり地面を蹴り体に動力を伝えなければならなりません。

 走ると言う動作は「蹴る」→「着地」→「蹴る」の繰り返しを左右で行い、小さな水平ジャンプの繰り返し動作となります。

 自転車の方も一見同じように見えますが、実は運動方法は全く異なります。

 自転車を動かせるにはペダルを回す必要があり、その運動は円運動となります。

 当然円運動なので軸を中心にして伸びる2つのクランクを回す力は、左右両方の足に均等に力が配分されることが最も効率が良い運動となります。

 つまり片方の足をした方向に下げる力を掛けた場合、もう片方の足は上方向に引き上げる力を掛ければ、単純にペダルを蹴り降ろすだけの力に対して2倍近い力を掛ける事が出来ます。

 そして円運動なので、左右二つの足をつかい、絶えず協力して円を描くことにより強力なパワーあるいは持久力を得る事が出来るのです。

 ただ、この運動方法は私たちが日ごろ使っている「歩く」「走る」「階段を登る」とは全く異なる運動なので、身に着ける事によって、特に階段の上り下りと言う踏み込み運動などは苦手になるかも知れませんので注意が必要です。

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