反撃④
「ナカナカやるねぇ」
「戦闘状況を見る目的じゃないでしょ。村はマーベリックに任せて、チャンと探しなさい」
「ハーイ」
ニルスには、ああ言ったけれど、村の撮影で得た物もあった。
敵がM-4だけじゃなくG36など、まだあまり流通していない新しいタイプの武器を持っているということは、やはりPOCが深く介入していると言うことだろう。
いくら麻薬組織に資金力があると言っても、武器の売買は麻薬の売買同様に難しい。
「ニルス、チョッといいか」
モニターを見ていたキャスが、何かに気が付いて画面を指さす。
「この辺りの家のどこかに、森に入る獣道があると思うんだ。探せるか」
「やってみます」
「木に当たらないように注意してね」
キャスに指示された位置にドローンを移動させると、樹木の葉の茂みが気のせいか薄いように感じる以外、特に変わったところはなかった。
「俺が画面を指でなぞるから、その通りにドローンを進ませてくれないか」
木の枝に接触して墜落するのを避けるため高度を少し上げてキャスの指示通りに飛ばしていると、所々に樹木の切れ間があり、その下に地面が見える。
“道だ!”
「キャス、君は道を知っているんだろう?だったら高度を上げるから、そのもっと先にある場所に誘導してくれ」
道の存在を確認したニルスが少し興奮気味に催促する。
「高度を上げるのは、敵に発見される危険性があるし、それに俺は道を知っているわけじゃない」
「知らない?でも君の指さす方向に道は続いているじゃないか」
「それは俺が学者で、自然に詳しいというだけの話だ」
「学者だったの!?」
「なんだと思っていた?」
「胡散臭い、その筋の人」
「その筋の人って何だいそりゃあ」
キャスが困った顔をして苦笑いした。
「キース、聞こえる?」
「はい。聞こえますサオリさん」
「今、そこからドローンは見える?」
「見えます」
「いい?これから、そのドローンが家の横から森に入るから、どの家の横かということを覚えていて。それから、そこに道があるかどうかも確認して」
「道があったら先に進みますか?」
「今はまだ、どちらが本命か分からないから動かないで。移動は、トーニ君の居場所が分かってからよ」
「了解しました。確認だけしておきます」
マーベリックたちの働きで、村にいた武装勢力は一掃された。
奴らはこの住民ではなく、この村を見張っていただけ。
目的は村人たちに強制的に大麻草を育てさせるためと、そのことを知られないため。
一応残党に注意しながら、1軒1軒の家を捜索し人質になっているクラウチ社長やナトーとマルタ、それにトーニの手がかりを探す。
「キース!通訳を頼む」
「了解しました」
そう。
マーベリック指揮下の実行部隊にいるはずのナトーとトーニの2人が居ないから、あとはメキシコ出身のキース以外スペイン語をまともに話せる隊員が居なかったのだ。
「ニルス、もうそろそろバッテリーやばくない?」
「もう少し行ける」
「そう?でもバッテリーが途中で切れたら、回収できなくなってしまうから余裕を持っておいてね」
「りょうか……」
「どうしたの!?」
了解と言おうとしたニルスが、途中で言葉を止めた。
モニターを見ると、ベージュに染まったヨレヨレの服を着たイガグリ頭をした男が走っているのが映っていた。
「トーニ!」
ニルスがマイクに向かって叫ぶと、トーニは立ち止まり周囲をキョロキョロ見渡していた。
「上だよ、上。ドローンだ」
「なんか用かニルス少尉?俺は今忙しいんだ」
「遊びじゃない」
「そうだろうさ」
「ドローンの下側に携帯が括り付けてあるのがみえるか?」
「ああ、見える」
「じゃあ、それを取ってくれ」
「分かった。じゃあ、ドローンを下ろしてくれ」
「木の枝が邪魔で、下ろせない」
「……」




