表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フルメタル  作者: 湖灯
南国の楽園!?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

364/700

シャワー室でのニアミス

 ロビーを出て、部屋に戻ると、ハンスから呼び出しのメールがあった。

 メールを見て、思わず笑ってしまう。

 “20時00分、第4会議室”

 書いてあるのは時間と場所だけ。

 ハンスらしい。

 20時までには、まだ間がある。

 俺のシャワーの時間は20時からだったが、みんなロビーにいたから少々早くても誰も来やしないだろう。

 9つあるシャワーは、まだ誰も使っていない。

 “サッサとすませるか……”

 大体、仲間たちがシャワーを使い出すのは訓練が終わった直ぐ後か、21時以降と決まっている。

 俺も、訓練が終わった後に1度シャワーを浴びてはいるが、訓練後のシャワー使用時間は俺の場合5分しか持ち時間がない。

 それは嫌がらせでも何でもなく、俺一人で9つのシャワーがあるこの部屋を独占してしまうからで、20時からの割り当て時間だと20分貰える。

 会議がどのくらい時間が掛かるか分からないが、20時からの会議だと今夜はシャワーを諦めるしかなくなるのは必至だから時間前にシャワーを浴びることにした。

 暖かいお湯に当たりながら、石鹸で体を磨く。

 丁度脇の下を洗う時に、体の下から手を回したので胸を持ち上げる格好になった。

 “中年太りのオヤジの水着と、ナトーの着ている水着が同じ物……”

 不意にトーニの言葉が頭を過る。

 男たちは、なんでこんなものがいいんだ?

 筋肉でもない、ただの脂肪の塊だから、いくら大きくたって何の役にも立たない。

 出っ張っているから足元も見え辛いし、走ると揺れて邪魔に感じる。

 大きい胸が良いのなら、モンタナやブラーム、フランソワの胸の方が遥かに良い。

 彼等の胸は硬い筋肉で出来ている。

 それに、いちいち服で隠す必要も無ければ、ブラで固定する必要もない。

 自由だ。

 蛇口を閉めて、ビニールのカーテンを開けて、洗い場を出ると人にぶつかった。

「スマン」

「イイって事よ」

「……」

「……」

「トーニ!」

「ナトー!」

「「なんで、ここに居るんだ!?」」

「だってココは19時55分まで、男の使用時間だぜ。なんでナトーがココにいる?」

 シャワー室に掛けられた時計の針は、まだ19時30分。

「スマン、20時から会議が有るんだ……だから……」

「ほらよっ。俺が外で見張っておいてやる」

 トーニからタオルを投げられて初めて気づいた。

 俺は石鹸とボディーブラシしかもっていなかった事を。

 着替えやタオルは、同じ部屋の入り口側にある更衣スペースに置いたまま。

 とりあえず誰か他の者が入って来ると不味いので、トーニが投げてくれたタオルで前を隠して慌てて更衣スペースで体を拭き着替える。

“!”

 トーニからタオルを投げられるまで、俺は石鹸とボディーブラシしか持っていなかった。

 と、言う事は……。

 今頃になって、急に恥ずかしさで火炙りにされたように体中が熱くなる。

 でもトーニは、その事について何も言わなかったし、眼も俺を見ていたままだった。

“気付かなかったのか?”

 そんな馬鹿は居ない。

「おいナトー早くしてくれ、俺のシャワーの時間が終わっちまうじゃねーか!」

「スマン、直ぐ出る」

 着替えを終え、慌てて外に出る。

「ありがとう」

「いや……」

 礼を言った途端、トーニが、はにかむ様に俯いて返事をした。

 “やはり見えたよな……”

 でも、この態度、可愛らしい。

 思わず胸がキュンと鳴る。


 とりあえず自分の部屋に戻り、洗った髪をタオルドライしてブローした。

 いつもは休日出かける時にしか使わない、オーガニックトリートメントを手に取り、知らない間に鼻歌まで出ていて我ながら驚いた。

 “なにか嬉しい事でもあったのか?!”

 と自問自答。

 髪のブローが終わると、バスローブを脱ぎ、ココナッツオイルを手に取る。

 付け過ぎないように気にしながら、時々腕を鼻に近付けてクンクンして匂いに気を付けながら疲れた肌に満遍なく塗りこんでいった。

 時計を見ると、もう19時50分。

 軽くお化粧をして、薄く口紅を塗り慌てて新しい戦闘服に着替えて、筆記用具を持ち部屋を出た。

 寮の廊下を慌てて走っていると、丁度シャワー室からトーニが出て来てぶつかった。

「すまん!」

「いようナトー。会議頑張れよ!」

「ああ」

「あれっ!?」

 “!?”

 トーニが素っ頓狂な声を上げたので、俺も気が付いた。

 ノートを持つ手に引っかかっていた物……それはトーニが腰に巻いていたバスタオル。

 慌ててトーニに投げ返す。

「すまん!」

 投げ返すときに振り向いてしまったために、背は俺より低いくせに意外に大きなものが腰からぶら下がっているのが見えた。

「いいってことよ」

 だがトーニは驚くわけでもなく、爽やかな笑顔を返してきた。

 ここでトーニに驚かれて大声を上げられたら、俺まで悲鳴を上げなければならない程、狼狽していただろう。

 それを知ってか、知らずか……まったくイタリア人って奴は女心を読むのが上手い。

 “これで今日の所は、おあいこだ”

 でも恥ずかしい……。

 今度は何故か、胸がトクトクと鳴る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ