決戦④
RPGの脅威は排除した。
しかし、RPGの攻撃を避けるために射撃を止めざるを得なくなっていたため、その間に敵が突撃を仕掛けて来ていた。
「ヤロー!!」
フランソワとボッシュを負傷させられた腹いせに、ジェイソンがトーチカから身を乗り出すようにしてHK-416をフルオートで撃ちまくる。
「よせ!!」
ジェイソンの襟を掴んで引っ張ると、途中から急に後ろに仰け反ってきたので、慌ててその体を支え座らせる。
“被弾”
ヘルメットに2発銃弾がかすり、ボディーアーマーに数発の比弾痕。
そのうちの1発が、右肩の鎖骨を折っていた。
「大丈夫か?!!」
「軍曹すまねぇ……だけど、まだ戦います」
「黙れ!休んでいろ!戦える力が残っているのなら、それは最後の瞬間に取っておけ!」
「第一波を撃退しましたが、次、第二波来ます!!」
珍しくブラームが叫んだ。
「ブラーム!マガジン交換迄連射しろ!モンタナも給弾ベルト交換迄撃ちまくれ!」
「撃ち終わった後はどうするんです?」
「派手に撃てる用意をしておけ!」
そう言って、トーチカの端に埋めておいたワイヤーを次々に引いていく。
このワイヤーの先には、このトーチカを見つけたときに仕掛けられていた爆弾に繋がっている。
俺は、それをこの斜面の所々に埋めておいた。
銃弾と違い、爆弾は多くの砂塵とガスを巻き上げて、一時的に視界が遮られる。
だから余り使いたくは無かった。
これを使う時は緊急事態の時だけ。
それが今の状況。
ドンドンドンと次々に爆発が起こり、突っ込んできた敵兵を吹っ飛ばす。
爆発の後、爆風が通り抜けると100m先の爆発地点には、その先が見えないほど煙が舞い上がっていた。
大きな爆発音を聞いたせいか、まるで敵が全員吹き飛ばされたかのように静か――。
「全滅だったら有難いのですが……」とモンタナが言い、“ゴクリ”と隣のブラームが唾をのむ音が聞こえた。
2人共、さすがに緊張の色を隠せない。
「さあ、俺も敵さんと“睨めっこ”して遊ばせてもらおうか」
ブラームの向こう側から、足を怪我しているフランソワが顔を出す。
「大丈夫なのか?」
「なぁ~に、千切れたわけじゃねぇ。チョイと破片が肉の中に潜り込んだだけですから」
そう言ってフランソワは笑ったが、その状態が動かすと一番痛いはず……。
フランソワの向こうには左手に小銃を持ったジェイソンが居た。
「ジェイソン、無理するな。だいいちマガジン交換――」
利き腕の右をヤラレているジェイソンが左手を使って撃ってくれるのは有難いが、それではマガジン交換が出来ないだろうと言うつもりだったのを止めた。
ジェイソンの真下には、脚と左腕を負傷しているボッシュが腹に弾帯を抱え、右手に交換用のマガジンを持って笑っていた。
「軍曹。そう言うこと」
俺がボッシュに気が付いたを見て、ジェイソンが笑って言った。
「さあ、5人揃いましたぜ。一丁派手に行きましょうか!?」
モンタナが明るく大きな声を出す。
「軍曹、射撃のタイミングは任せたぜ!」
フランソワがニカッと笑い横目で俺を見ると、ジェイソンとボッシュも同じように俺を見て笑った。
「軍曹。楽しかったです」
最後にブラームがボソッと言った。
「馬鹿、過去形にするな。俺たちはこれからもずっと一緒だ!」
“だから誰も死なせはしない”
煙の向こうから敵兵の甲高い叫び声が聞こえて来た。
“今度は、前の2回より数が多い”
第三波の攻撃は、俺が煙幕を作ってしまったのに乗じて敵も攻めやすくなり、総攻撃を仕掛けてくるはず。
爆弾は、この時のために準備していたはずなのに、思いがけないRPGの攻撃に一手早く使ってしまった。
もう、俺たちに強力な隠しアイテムなどはない。
あるとしたら“絆”だけ。
この絆だけは、何者にも切らせはしない。
煙の中から先頭集団が顔を出す。
敵兵の表情が手に取る様にハッキリと分かる。
まるで、鬼の形相。
「撃ち方用意――」
トーチカの中で、皆が俺の合図に集中して静まり返る。
「っ撃てー!」
銃口の先から一斉に火が噴き出し、空薬きょうが飛び跳ねる。
敵の先頭がバタバタと倒れて行き、その後ろの敵も前の奴に折り重なるように倒れてゆく。
自動小銃の一斉射撃では、皆ほぼ同時にマガジン交換になってしまうので、俺はそのタイミングをずらす為に単発で敵を狙撃していた。
そして、1回目のマガジン交換が来た時に、フルオートに切り替えて撃った。
「もう直ぐ弾帯交換来ます!」
軽機関銃のモンタナが言った。
「手榴弾投擲!」
何と言っても、機関銃の威力は大きい。
その機関銃の弾帯交換時は、俺たちにとって不利となる。
だから、威力の大きい手榴弾を投擲する。
幸いここは丘の上だから平坦な土地と違い投擲距離は伸びるし、坂を転がってくれれば、より遠くで爆発してくれる。
50m付近で投げた手榴弾が爆発して、密集体型を取っていた敵が数多く吹っ飛んだ。
この50mの先がDead zoneここを敵に押し上げられれば俺たちの負け。
「うわっっ!」
キーンと言う金属音がしたかと思うと、弾帯を交換していたはずのモンタナが叫び声を上げた。
「どうした?!」




