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フルメタル  作者: 湖灯
死闘‼ザリバン高原!
189/700

裏の岩場への攻撃④

「待て!」

 行こうとするジムを止めた。

「どうした?」

 激しい銃声の中、微かにエンジン音が聞こえたので、それを伝えて耳を澄ます。

 しかしエンジンの音は聞こえない。

“気のせいか?”

 と、次の瞬間、俺たちの直ぐ近くで激しい爆発があった。

 舞い上がる埃と、降り落ちてくる石の破片に身を伏せる。

「チクショウ!もう一発持っていやがったのか!」

 ゴンザレスが、そう言ったあとジムが違うと言った。

「こりゃあ120㎜野戦砲だ」

 戦車兵などの砲科の奴らは、砲弾の飛翔音で弾の種類を当てると聞いたことが有るが、さすがだと思った。

「野郎!大砲まで持っていやがったか!」

「違う。ヤクトシェリダンの野戦砲だ」

「じゃあ、輸送機が敵の手に――」

 ゴンザレスの言葉に、一瞬ジムの表情が曇る。

“まさか、捕虜の男が!?”

 一瞬、俺もそう思いそうになったが耳を澄ませると、聞きなれた銃声も交じっていた。

「違う。敵のAK47に交じって味方の軽機関銃の音も交じっている」

 ゴンザレスが耳を澄ませて「確かに」と言った。

 続いて2発目が来た。

 岩に潜り込むように身を伏せたが、着弾音は遥か手前。

 今度は敵の居る正面の陣地に着弾し、何人かが爆風で吹っ飛ばされるのが見えた。

“何故、1発目は俺たちを狙ったのか?”

 敵か?味方か?判断が付きにくい。

 しかし、答えは敵が教えてくれた。

 俺たちに背を向けて、発射音がした戦車のほうを撃ちだした。

「見方だ!」

 更にもう1発。

 今度も敵の居る正面の陣地に着弾して、また爆風で何人か吹っ飛ばされた。

 俺たちは、背中を見せる敵を撃った。

 まだ見えないヤクトシェリダンからも、M249軽機関銃の5,56mm弾の発射音が聞こえ、再びエンジン音が近づいてきた。

「ジム、銃を替えてくれ。ゴンザレス、マガジンをよこせ」

 そう言ってジムにAK47を渡し、HK416を手に取り、ゴンザレスから最後のマガジンを取った。

「軍曹!」

「お前たちは、ここに居ろ!」

 そう言って、陣地から飛び出して猛然と敵に向かって走る。

 走りながらセレクターを連射に変え、見える敵を撃ちまくる。

 正面の岩場に取り付いた時には最後のマガジンも切れて、銃床で敵を殴った後、腰から拳銃を取り出して撃った。

 そして、岩場の裏に回り、そこに居た敵も次々に撃ち、制圧した。

「やあ軍曹。ご無事で」

 戦車が止まり顔を出したのは負傷兵の3人。

「よくやった!直ぐ向こうの岩場に2人居る。直ぐまわしてくれ」

「OK!」

 岩場なので歩く程度のスピードしか出ないが、それでも負傷したゴンザレスを担いで戻るよりも楽だし、何よりも装甲で覆われた車内は安全だ。

 ジムが乗るときに、相棒の負傷兵に「お前が撃ったのか?」と聞いていた。

「はい。3発までなら好きに撃っても良いと軍曹に言われていたので」

 自慢げに答えると、ジムが「そのうちの1発目は、俺たちの陣地のすぐ近くに着弾したから、危うく死ぬところだったぜ」と言った。

 相棒は少し、しょぼんとしたが、ジムは「まあそれ以降はよく修正して見事な砲撃だった。無事に戻ったら正式に俺の相棒になってくれ」と陽気に相棒の背中を叩いて労うと、相棒は「そうさせてもらいます」と元気に言った。

 まだ数人ほど残っている敵が銃を撃ってくるが、小銃弾を通すほどヤクトシェリダンの装甲は薄くなく、俺たちは銃弾を跳ね返す音を聞きながら悠々と戦場を後にした。

 輸送機に着くと直ぐに負傷したゴンザレスを下ろして、レイの所に向かう。

「救援ヘリは!?」

「連絡したので、もう直ぐ来ます」

「そうか。これで楽が出来るな」

 そう言って負傷していないほうの肩を軽くポンと叩いた。

挿絵(By みてみん)

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