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かみかみかみ  作者: ナウ
5/10

白蛇神のミー

神社なのに幽霊がいる。

それは一体どういう事か?。

俺の頭は混乱した。


「どうしたの?」


「いや、なんかよく分からない」


「ん?、何が?」


「神社に幽霊がいるって、しかも憑いてくる霊って」


「ああ、それね、言ったじゃん、今ここは霊界に繋がってるって」


「いや、それが分からないっていう」


「むぅ〜」


狸神の少女は腕を組み何やらブツブツと独り言を呟いた。


「なんか君難しいなぁ」


「いやいや、全然難しくないから」


「え〜と、要するにねぇ、ここはいろんな世界と繋がってるのさ」


「いろいろな世界?」


「そ、神界であったり霊界であったり妖界であったり」


「なんだそれ」


「ん?、神界ってゆーのは神の世界さ」


「はぁ・・・」


「霊界は霊の世界、妖界ってのは『あやかし』の世界だよ」


「はぁ、ていうかあやかし?」


「そう、あやかし」


俺はまったく付いていけなくなった。

霊の世界とやらも大概だがあやかしって何だと。

妖怪でも出るのかと。

まったく訳がわからない。

とにかく今日は帰った方が良いと思った。


「あー、帰ります」


「ん?、ああ、帰った方がいいね」


狸神に帰る事を伝え俺は神社を出ようとした。

その時、どこからともなく声が聞こえてきた。


「引き返せ〜、引き返せ〜、引き返せよ〜、たら引き返せよ〜」


どこから聞こえるのか。

俺はその不気味な声に立ち止まり辺りを見渡す。

しかし狸神の少女以外は誰もいない。


「えっと、何か言った」


「私じゃないよー」


少女は笑いながら別の所を指差す。

指の先には少し離れた茂みからニョロリと蛇が出てきた。

その蛇は真っ白で、ニョロニョロとした動きで近づいてきた。

俺は驚いた。

なにせ実物の蛇を見るなんて初めての事だからだ。

しかも真っ白だ。

その白蛇はニュルニュルと傍まで来た。

まさか今喋ったのって、この蛇か?・・・と。

しかし蛇が喋る筈がない。

俺がそう思った瞬間、目の前から蛇の姿が一瞬にして消えた。


「あれ?」


俺が地面を見渡しているとまた声が聞こえた。


「こっちよ〜」


声は上から聞こえた。

俺が上を向くと・・・。

木の枝に体を巻き付かせ、白蛇がこちらに顔を向けて舌をペロペロさせている。

一体いつの間に移動したのか。

一瞬消えた・・・ように見えたが、どうやって木に上ったのか。


「田中茂吉のひ孫ね、時間が経つのは早わね」


明らかに女性の声で白蛇が喋った。

俺はこの神社にいる蛇は喋れるのかと驚いた。


「み〜ちゃん、おひさだね」


「久しぶりね、タヌちゃん」


互いに挨拶する少女と白蛇。

どうやら知り合いのようだ。


「え・・・と」


俺が唖然としていると少女は言った。


「あ、白蛇神のみーちゃんだよ」


「白蛇・・・神?」


「そう、こう見えてもみーちゃんは神様なんだよ」


少女に言われた白蛇はチョコンと頭を下げる。

そして赤い瞳で俺を見た。


「茂吉のひ孫さん、初めまして」


「え、あ・・・、初めまして」


そういえばひい爺さんは茂吉という名前だった事を思い出し頭を下げる。


「みーちゃん、どうしたの?」


「二点あるわよ、たぬちゃん」


「え、なに?」


「まず一点目は霊界と繋がった時には私が見回る役目だって事」


「あー、そういえばそうだった」


「二点目は茂吉のひ孫さんを見に来たのよ」


「なるほど」


うんうんと頷く少女。

少女は頷いて分かったかも知れないが俺はまったく分からない。

そもそも何でひい爺さんのひ孫を見に来たのかさっぱりだ。


「あの、ひい爺さんの事知ってるんですか?」


「知ってるわよ」


あっさりと答える白蛇神。


「それって、どういう・・・」


「実際に会った事があるからね」


「え?」


「茂吉の子供の頃から知ってるわ」


「一体あなたは・・・」


「たぬちゃんの紹介の通り蛇神と呼ばれているわ」


「ひい爺さんの子供の頃を知ってるって・・・」


「子供の頃だけじゃなくてその後の人生も亡くなった時の事も知ってるわ」


「ひい爺さんとここの神様との契約も・・・」


「知っているわ」


「どうして止めてくれなかったんですか?、そのお陰で俺は不幸なんですよ?」


「一応忠告はしましたが、茂吉は聞きませんでしたし」


「そんな・・・」


やはり全てにおいて悪いのはひい爺さんのようだ。

まったくロクでもない。


「俺、帰っていいですか?」


蛇が喋っているという異常な状態だが俺の中では特に違和感は感じなくなっていた。

狸の神がいるなら蛇の神もいるだろう。

それよりはひい爺さんの話題に胸がムカついた。


「ダメよ」


蛇神は赤い目で俺を見ながら言った。


「なぜです?」


「さっきアナタに取り憑こうとしていた女の霊が神社の外で待ち構えているわよ」


「え?」


「あれ?、さっき追っ払ったのに」


「まだまだ爪が甘いわよ、たぬちゃん」


「ぐぬぬ」


悔しがる少女。

いやいや、俺はそれどころじゃないから。


「待ち構えてるって、俺を狙って?」


「そうよ」


「どうすれば・・・」


「もう暫くここにいなさい、諦めて消えるでしょう」


「そんなものですか?」


「暫くしても消えないなら私が何とかしましょう」


「あ・・・はぁ・・・」


蛇神の提案に、俺はもう少しここに留まる事になった。

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