買い物での失敗 (6)
さて大学生になって多少なりとも成長したかに思えます。がしかし一つ、新たな悩みがあります。姉の存在です。姉は現在、大学を卒業しましたが、近くに住んでいます。なので買い物はよく姉と行きます。
一つ、例を挙げましょう。カナダに来てからの大きな買い物の一つが、スノーブーツです。カナダのような雪が降る地域では必要不可欠な代物です。姉と買いに行くことが決まった際、私は事前に買うブーツを決めに下見に出かけました。そしてお目当のものを見つけました。後日そのブーツを買いに一緒に出かけたのですが、私は買うのを断念しました。それは怖かったからです。何が怖いかというと、姉の意見です。ご兄弟がいる方、特に上に兄か姉がいる方はわかってもらえるかもしれませんが、彼らの我々下のものに対する態度は基本的に極端な言い方をすれば傲慢です。我々が下した決断に彼らは何かと辛辣な意見をして来ます。
私の姉も同じようで“これ本当にいるの?”“ちゃんとよく考えた?”と口を挟みます。私を思ってのことだというのはわかっているので、反論はできません。そして私はつくづく人に流されやすいたちなので、買うと決めたはずなのに迷ってしまいます。そして、考えてしまうのです。怒られてしまうのではないかと。これは無駄な出費だった、と。同じ過ちを繰り返したな、と。親がその場にいない分、姉が私の面倒を見てくれています。大学生にもなって情けない、お恥ずかしい限りですが、私は全く自立できていません。そして結局、その日、私は買うのを諦めました。しかし逆にこの判断が間違いであったと親に指摘され、後日スノーブーツを買いに行きました。これこそ二度手間です。そしてこの時も姉が同行しています。この時姉に言われました。“なんであの時買わなかったの?”と。おっしゃる通りです。私は萎縮し、ぐうの音も出ませんでした。
この話にはまだ続きがあります。この買ったブーツ、欠点がありました。実は防水加工がされていなかったのでした。スノーブーツの条件の一つとして、降り積もった雪の上を歩く、そしてその重みで靴が積もった雪の中に埋もれるので、防水加工がされているのが一般的です。正直あまり防水加工されてなくても気にならなかったのですが、“今度はちゃんとスノーブーツ(防水加工の)を買って”という親の鶴の一声で、私はもう一足今度はちゃんと防水加工が施されたブーツを買いました。その時の姉のコメントは“前買ったの無駄じゃん”“防水加工されてるの知らなかったの? 買う前に聞かなかったの?”“なんでブーツ二つ買ってんの?”。非難轟々です。私は笑ってごまかすことしかできませんでした。
このように人に翻弄されている、人と話すとすぐに緊張してしまう私、それは私が思うに経験がないからだと思います。これまでの人生、人と積極的に関わってこなかったのが原因だと思います。挫折を味わっていればもっと人に助けを求めていたでしょうか。一人でいることを不便と感じていれば、自然と仲間を募っていたでしょうか。かといってもうこの人と関わらない生き方に慣れてしまっていて、今更変えることは難しい。いつだったか明言した柔軟性を失い、もうこの思考が強固に形成されてしまって難攻不落になっているのでしょう。プライドでしょうか。私も頑固ですね。
最後にこれは先々週のことです。初めて行くショッピングモールに姉に誘われ行きました。我々二人が御用達の服屋があるのですが、そこで商品を二つ購入すれば半額というセールをしていました。早速姉は洋服を吟味して、二十分ぐらいかけてようやく購入する服を決めました。姉はそこで私に買いたいものはないかと尋ねました。私はないと答えました。元々何も買う予定はなかったのですが、正直何か買ってもいいかなと判断を迷っていたところでした。日本同様年々暑くなるカナダ。去年ほどではないと思いますが、扇風機が手放せません。ちょうど短パンが売っていたので買おうかなと思いましたが、やはり姉に遠慮しました。買いたいと言ったら何を言われるだろうか。本当にいるのか。そう思うと自然と本音が出ないものです。
母は姉と違って私の心内を汲み取るのが上手いです。この場合母であれば私がさりげなく見ていた短パンを見て、欲しいかと尋ねてきます。しかしここでも私は一度か二度ぐらいは拒否します。よほど念を押されない限りは私は欲しいとは言いません。面倒臭い性格ですね。しかし母親はその念を押してきます。姉にはこの方法は通用しませんし、私がいらないといえば素直に鵜呑みにします。母親ってすごいですね。私の発言の真意を性格に見抜いてきます。結局私は何も買うことなく、姉は同じものを二つ買いました。
みなさんご無沙汰しております。学生の方もようやく夏休みに入った頃でしょうか。私は五月ごろからずっと夏休みで正直飽きてきました。現在は書き上げた小説を懸命に添削しています。前回も話しましたがこれまでに類を見ないほどの長編になっていて、添削に時間がかかっています。
今回は姉のことを書いてみましたが、みなさんはどうでしょうか。いつだったか姉に聞かされたのですが、姉のいる男は女の本性を知っているので、多少だらしのない女性にも寛容だと言っていました。そうなのでしょうか。それとこう言った男性は基本的に女性の尻に敷かれるタイプだそうです。それに関しては激しく同意します。このまま姉に翻弄され続ければ、私は女性恐怖症になりそうで怖いです。
ともあれ、とりあえずは今回で一旦買い物での失敗編は終了といたします。来週はいつだったか話した一年前に帰国した際に判明したアトピー性皮膚炎について紹介しようと思います。