買い物での失敗 (2)
そして私は見事、言い方が悪いですが“口車に乗せられました”。私はまんまと言いくるめられました。私はもともと口下手です。口論というのは性に合いません。話をすることにそこまで熱を込めることができません。しかし口論ができないからと言ってすぐに手をあげるような野蛮でもなければそんな勇気も力もありません。ムキになってまで相手を納得させようと思いません。私はすぐに心が折れます。抗おうとせず諦めます。
少しI氏の話をしましょう。前に話したかもしれませんが一度日本語の授業で討論、ディベートを行いました。議題は忘れましたが、要は意見を出し合って、より説得力がある方が優勝という感じです。彼女とは違う班で、互いに対決したことがありましたが、あっという間に萎縮しました。こちらが何か言うたびに“異議あり”と反論して、我々を完封してきました。彼女は薬剤師を目指すと当時は言っていましたが(今でもそうなのかはわかりません)弁護士か検察官になった方がいいと思いました。付き合っていた間、喧嘩は一度もしたことがありませんでしたが、確実に負けていたでしょう。負けることがわかっていたからこそ相手の機嫌を損なわないように最新の注意を払って、煽てていたのかもしれませんね。
そういえば一回、I氏と別の生徒が何かしら口論になったことがありました。互いに第一言語異なるということで、英語で話し合っていました。相手はI氏や私ほど英語が得意ではなく、“押され気味”でした。彼女は第一言語が中国語でした。どちらもしっかりと両者が納得するまで言い争う、強い女性二人。これでは一方的で不公平だということでI氏が一つ提案してきました。それは私に自分の言ったことを中国語に訳し、相手に伝えろ。そして相手のおぼつかない英語に中国語で補足した文を私が日本語でI氏に説明するというものでした。そして相手はその提案に乗ってきて私が二人の間に入り、互いの話を援護するという混沌とした状況となりました。中国人のステレオタイプその一、負けず嫌い。劣勢に立たされても折れることなく、立ち向かっていました。自分が折れれば、全て丸く収まるからと逃げの一手しか持っていない口下手な私は、彼女たちのそんな態度そして自分達の主張に込めた熱量に敬服し、あっけにとられました。しかしながら私の中国語はかれこれ三年近く埃をかぶっていて、衰えていました。おそらく彼女の話した半分ほどしか理解していなかったでしょう。そんな状況でも私を中間に立たせ続け、彼女の中国語を日本語に、I氏の日本語+英語を中国語に訳していました。あのようなことは金輪際ごめんこうむります。
まあとにかく、相手に迫られると争うことなく自分の本心を取り下げるというのが私なのでしょう。しかも相手は見ず知らずの人、断るのは失礼じゃないかと思ってしまいました。勝手がわからず、また初めてのmacということもあり、私はコンピューターウイルスの侵入を防ぐソフトも一緒に購入することを決めました。それも三年分。正直私はそれまでパソコンを買ったことがないので、普通に必要不可欠なものなんだろうなと思って全く買うことに躊躇しなかったと思います。あとから親から聞いて驚きました。
さて、しかし失敗はこれだけでは終わりませんでした。会計の時、私はポイントカードを出しました。店員はポイントカードを受け取って、“ポイントをお使いになりますか”と尋ねてきました。台本がないと買い物どころか会話もろくにできない私です。カードを渡した時、父は何も言わなかったと思います。いえ、もしかしたら言ったのかもしれませんが私が忘れていただけかもしれません。ともかく私は困惑しました。どうするのかわからないと。みなさんは察したと思いますが、父親はポイントを貯めて欲しかったのでした。しかし当時の私はポイントカードの仕組みを知りませんでした。驚愕されるかもしれませんが事実です。カードの存在は知っていましたが、何をするためのものかを知りませんでした。これも普段自分で買い物をしなかったことが原因だと言い訳しておきます。というわけで、私は何か答えなきゃと焦り、とりあえず「はい」と返答しました。結局、私はそれまで何年かけて貯めたかもわからないポイントを全て使い果たしました。お金を支払う予定だった祖父は、ポイント分ではまかないきれなかった残金、約五千円を支払いました。
家に帰ってからこっぴどく叱られました。特に母親から。父親は冷静に店員たちの思惑を無知な私に教えてくれて、最後にこれも経験だ。これは祖父と父、両方からのプレゼントにしようと言って締めくくりました。なんと寛大な父親なのでしょう。それ以来私は買い物する時は慎重になろうと心に決めました。私は負い目を感じて、しばらく買ったパソコンを箱から出すことができませんでした。そんな失敗を犯した私を親は心配しました。自立したあとに、詐欺に引っかかりそうだと。なんでもとりあえず「はい」と言ってしまう俗に言うイエスマン。確かに格好の獲物ですね。
皆さんは似たような経験がおありですか。よかったらお聞かせください。
来週は別の買い物で起きた事件です。今回よりは軽度かなと個人的には思います。それでは




