表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/174

常識の定義(2)

突然ですが、懸命に当時の常識を覆そうとしている人ってなんかかっこいいですよね。しかも彼らの多くは彼ら自身が生きている間にそれを成し遂げたいと思っているのではなく、無力となった死後であっても叶えたいのです。並々ならない執念が必要だと思います。ところでこのことを考えるきっかけになったのが、大学で発明品や技術、それが誰から生み出されたのか、どんな経緯で生まれたのか、その後どのように進化退化したのかを学ぶ授業があったのですが、その中で少し哲学についても触れました。哲学って聞いただけで難しそうと思う人も多くいると思います。私もそれまで哲学に触れてこなかったのでそもそも哲学ってなんなんだと思いました。

私たちが当然とばかりに信じる常識に敢えて疑いの目を持ち、追求する学問。それが哲学だと思いました。当初こそ科学的根拠などではなく人々の思想から成り立っていました。自分たちの常識を疑うという考え方には感無量です。なんせ世間の多くは敵、信じられるのは自分の思想だけ。見に見えないものほど相手を説得するのは難しいと思います。おそらく古来の哲学者たちは自分の思った思想の正当性を熱弁して、新たな常識を勝ち取ったのでしょう。

さらに言うとまだ社会が十分に発展しておらず、常識の数も少なかった頃なら、ただ白紙に自分の思想を書いて、これが新たな常識、事実であると説得するだけですが、文明が発展していくにつれて常識に格上げされた知識が増えていけば、新たな常識を作るだけでなく、それまで存在した常識を覆さなければいけなくなります。そうなった時すでに多くの人に周知されている常識を批判して、これが本当の事実であると提唱しても信じてくれる人はいないでしょう。なんせすでに違う事実が存在してしまっているのですから。そういった人たちは批判を散々食らっていて当時を生き抜くだけでも難しかったし、苦しかったと思います。

例を挙げると、古代の哲学者アリストテレス。様々な常識を創り上げたことから万物の祖と讃えられています。彼が作った常識のおかげで学問が大きく発展しました。彼が作った常識を元にして様々な研究を行なっていたので、彼の考えは全て事実であると当時の人々や構成の人々から信じられていました。今でも彼の作った常識が、いまだに覆ることなく、今我々の間でも常識であると承知しているものはたくさんあります。しかし彼は神ではなく、人間ですので間違いを起こすことだってあります。これまでに彼が提唱した常識が実は間違いだったってこともたくさんありました。

しかしアリストテレスの考えを疑わなかった後世の多くの人々は新しい説を受け入れようとはしませんでした。その被害者の一人がコペルニクスという天文学者です。みなさん、科学の授業で天動説と地動説という言葉を習いませんでしたか。地球にいる私たちの目には星や太陽が地球の周りを回っているように見えます。これが天動説で、この説を唱えたのはプトレマイオスという二世紀ごろに活躍した天文学者です。そして彼が提示した根拠の中にアリストテレスの文献がありました。当時からアリストテレスに絶対的な信頼を置き、彼の言ったことは全て正しいのだと信じていた人々はプトレマイオスの説が真実だと思い、以後地球は宇宙の中心にあり、そのほかの天体が気球の周りを回っているというのが常識となりました。

時は流れて、十五世紀。すでに浸透していた天動説に意を唱えたのがコペルニクスでした。彼は太陽こそが宇宙の中心に位置し、その周りを地球やほかの天体が回っているのだと言いました。これが地動説です。アリストテレスが生きていたのは紀元前三百年ごろ。流石にその頃よりは文明が発達していて、天体を観測できる器具もある程度は揃っていたはずですが、彼が提示した証拠はアリストテレスの権威を前に敗れました。目に見える証拠よりアリストテレスの考えの方に正当性がある。アリストテレスの威信はそれほどまでに強かったんですね。コペルニクスの説は誰にも受け入れられませんでした。しかし彼は最後の最後まで諦めず地動説の証拠を探し求めましたが、ついには真実である地動説が日の目を見ることはなく、亡くなりました。

彼の名誉が回復したのは、それから一世紀後のことでした。コペルニクスを救ったのは有名な天文学者ガリレオ・ガリレイです。この時ようやく望遠鏡が発明され、天文学の発展に拍車がかかりました。そしてガリレオは地動説の確固たる証拠を見つけ出しました。こうしてようやく地動説がそれまでの常識であった天動説を覆しました。約二千年という月日を経てようやくアリストテレスの絶対的正当性が崩れた瞬間だったでしょう。こうして地動説を提唱したコペルニクスは汚名を晴らすことができ、彼の名前を今を生きる我々は目にするようになりました。

というわけで常識について考えて見たんですが、やはり人々がその正当性を信じきっている常識を覆すのは難しいと思います。ただ世の中何事も栄枯衰退。大多数の承知を占めていた常識でも、いずれ少数派が追い上げ、新たな常識として広域に普及する日が来るかもしれません。ルネサンス時代の彫刻家、ミケランジェロ。彼の彫刻の最大の芸術的価値といえば肉体美です。彼は本物人間の肉体を作品に写し込むために、たくさんの医学書で人間の体の仕組みを勉強し、人間の解剖をも行なうほど究極の肉体美を追求していました。彼は解剖は芸術という名言を残しました。

解剖が行われるようになった時から、現在に至るまで多くの人は解剖に否定的でした。人間の体の仕組みを知るため、未知なる病気を解明し、今後その病気による犠牲者を出さないため、死因や事件性の有無を調べるため、という大義名分は存在し、多くの人がそのことを理解しているとは思いますが、心のどこかで道徳心に欠ける、非人道的だと非難しがちです。その常識が覆って、いつの日か解剖に芸術的価値が付与される日が来るのでしょうか。

みなさんは常識についてどう思いますか。何かおかしいと思った常識はありますか。よかったらお聞かせください。

来週は私の個人的な話、今のところ人生の最盛期であった高校生の頃にあった自分の中では三本の指に入る一大事件を紹介します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ