ジレンマ
日本に一時帰国した時の話です。電車の中で幼稚園生ぐらいの子供が母親と一緒にいました。その子供は緑色に黄色い縁のリュックを背負っていました。そのリュックには〇〇English Schoolと書かれていました。
日本もいつからか英語が義務教育化され、英語が達者な子供たちがたくさんいます。今や世界はグローバル社会で英語が話せないといい職業につけないと言われているとか。親は若いうちに子供にプラスアルファで塾に通わせたり、インターに通わせたりして子供達に安定した将来を育ませています。
私自身もそうでした。私の場合は親の都合で中国にいたので、現地校に通うよりはという理由で小学校からインターに通わされ、英語中心の環境の中で育ちました。その甲斐あってか、今私はカナダの大学通うことができています。
ここで一つ懸念されるのが、早い段階で英語中心の環境で学んで果たして、母国語である日本語はおろそかにならないのかということです。
前に話したと思いますが、私の上海時代までの言語ランキングは一位中国語、二位英語、三位日本語でした。小学三年からの三年間日本語を一切勉強してこなかった分、明らかに日本語の語学力が低下していました。もちろん両親が日本人なので、家とかで日本語を聞いてはいましたが、それでも国語の勉強をしていなかったのは致命的だったと思います。
広州に移り住んで、母国語の授業があった時に初めてそれに気づかされました。流石に自分でも危機感を感じ、今まで遠ざけていた日本語の本を読みだし、その結果私は普段は英語で囲まれた環境で勉強しながら、趣味で物書きを日本語で行うことで、自分はバイリンガルであると胸を張って言えます。他の二つと比べて見劣りしますが、中国語もまだ健在なので、トリリガルと言ってもいいのかもしれません。
わたしはなんとか日本語の本をたくさん読み、そしてそれに感化されて自分でも書いているので日本語のレベルはキープできていますが、今回わたしが紹介したEnglish schoolに通っていると思われる子供はどうでしょうか。
親の言い分はおそらく今後英語が不可欠になるから早いうちから慣れ親しんで欲しいや、まだ頭に柔らかいうちに勉強させておけば、吸収も早くなると言った具合だと思います。もちろん彼らに反論はしません。正しいと思います。ただそんな小さいうちから英語で囲まれた環境で学ばせたら、母国語であるはずの日本語はどうなってしまうのか心配です。
そのEnglish schoolが英語だけでなく、日本語で授業もやってくれるのなら安心ですが、本当に英語しか話さない環境だとすると、おそらくその子たちはもう日本の学校へは通いづらくなると思います。学校ではその国のステレオタイプも学びます。日本の場合、集団行動や他人を思いやる気持ち、そう言った日本人らしさというものを普通の学校で学ぶと思います。彼らが日本の学校で学び始めるとなると、おそらく日本の教育システムでは自主性を主張しすぎて省かれてしまうと思います。もちろん将来ずっとインターに通わせるつもりならいいのですが、将来のことは誰にもわかりません。もしかしたら諸事情により日本の普通の学校に通わなければならない時が来るかもしれません。そんな時に彼らは勉強においてもそして人間関係構築においても大きく遅れをとると思います。
過去に日本人でありながら、日本語がろくに話せない人がいました。愛国心が強いというわけではないと思いますが、この時私はなぜか疑問を感じました。本当に日本人ですかと。なぜだか日本語が話せない日本人、特に子供を見ると可哀想と思ってしまうのです。彼らの態度はまるでみなさんが想像するようなアメリカ人のようにいつも陽気でした。言葉もほとんどが、英語でたまに日本語を混ぜて話すぐらい。おそらく日本語単体では会話できないのでしょう。率直に言ってしまえば日本人らしさが微塵もなかったのです。日本人らしさの押し付けはよくないと思いますが、それでも日本人なら…と思ってしまうのです。特にその子供がハーフとかではなく、純潔の日本人ならと思うとなおさらです。
そんな彼らはおそらく英語はネイティブレベルで羨ましいと感じることもあります。海外の大学で学んでいて一番気に病むのが英語力です。私自身英語力が他者より圧倒的に劣っているというのを感じます。その点に関しては彼らを羨むのですが、その分私は日本語が彼らよりもできると自負を持っています。英語を伸ばしたければ日本語を捨てる。日本人として母国語を維持したいのであれば、英語の成長をある程度妨げる覚悟を持たなければならない。ジレンマを感じますね。座右の銘ではないですが、私は日本語と英語の両立を目指しています。長年英語の環境で勉強した一方で日本語を一定ほどキープしているのと母国語を完全に捨てて国際化社会で役に立つ英語に特化した生き方をするべきだったのか。どちらが良かったのか。みなさんはどう感じますか。




