国籍と愛国心
さてインターに通うようになった私ですが、そこはなんというかみなさんが想像しているインターとは少し違うかもしれません。当時私の通っていた学校は中国の現地校、それの国際部という括りでした。つまり、授業は英語で行うものの、生徒や教師はほとんど中国人、休み時間に飛び交うのは大抵中国語でした。私のクラスにいた八割は中国人。他韓国人、日本人と欧米人数名といった比率でした。授業を英語で行うものの、生徒がわかりませんと訴えれば、中国語で説明しました。もちろんどちらもできない中国人以外はこの時ばかりはのけもの扱いでした。しかし私は少し違いました。中国語は多少ながらも理解できたのです。正直英語よりも断然中国語の方が当時の私は話せたと思います。というのも、一年生で中国に渡った時から中国語の家庭教師をつけてもらっていました。二年生で帰ることとなり一時中断となりましたが三年生になった時に再開しました。そのため三年生から本格的に始めた英語よりは多少心得がありました。しかし私は自分が中国語を多少喋れるということを隠していたので、周りの生徒や先生は私に英語で話しかけてきました。しかし何か話しかけられても私は相槌を打つことしかできません。なぜなら相手がただ意見や事実を語っているだけなのか、私に問いかけているのかさえわからなかったからです。しかし会話もろくにできなかったはずの私を誰も見捨てたりはしませんでした。周りの生徒たちはもちろん、クラスにいた日本人、先生まで私を気にかけてくれました。ここまで何かと面倒を見てもらったことはその後なかったと思います。それがきっかけだったのかもしれませんが、英語が上達したのちに英語が喋れない子が転校してきた時には彼らを見習って積極的に助けてあげたこともありました。
ところで、この学校の生徒は皆富裕層の子供たちばかりです。言うなれば彼らが日本にきたら日用品や化粧品などを爆買いすると思います。自分は知らなかったのですが、皆そこそこ大きな会社の取締役の子供であったり、世界中に店舗がある有名なスポーツメーカーの中国支店店長の息子だったりとなかなかな顔ぶれだったらしいです。日本のアニメなどでみる意地っ張りやわがままさは微塵もなく、すごく接しやすかったです。私の一番仲良くしていたジェームスという子は中国のすべてのスタバを取り仕切る長の子供だった。そんなインターに通う中国人には皆決まった特徴がありました。英語名があるというのは中国人だけではありません。私の同級生だった日本人の子も他の人から覚えやすいようにと英語の名前を使っていました。しかし中国人は名前を変えるだけにとどまらず、他の国の国籍を買っていました。どういう基準で国籍が買えるのか、私は検討もつきませんが、彼らは皆アメリカやイギリス、ドイツ、フランスなど様々な欧米諸国の国籍を有しており、自分のことをその国籍の人だと名乗っていました。ジェームズもアメリカ人と名乗っていました。もしかしたらみなさんはそんなこと普通じゃないかと思われるかもしれない。相撲の力士だって日本の国籍を所得している人もいっぱいいるし、W杯で快進撃を見せたラグビー日本代表も外国人は多く在籍しているが皆日本国籍を持っている。何より移民国家であるアメリカやカナダには明らかにアジア系の顔立ちであるにも関わらず欧米国籍を持っている人なんてごまんといます。しかし当時の私にとっては衝撃でした。 愛国心がないのかと疑いたくなるかもしれませんが、彼らが国籍を買う理由はどうやら中国籍より欧米諸国の国籍を持っていた方がグローバル社会では何かと役立つらしい。そう思ったら国籍とは一体なんなのかと疑問に思います。生まれた国の証明? 親と同じだから、親を慕い、敬っていることの象徴? その国籍が含まれた人種であることへの誇り? それともただ利益を生むための道具に過ぎないのでしょうか。みなさんはどうお考えですか。ともかくこの外国籍を持った中国人はこの学校だけでなく、その後転校した先々のインターにもたくさんいました。欧米人とアジア人では顔つきが違うと認識していた当時の私にとっていかにもアジア系の顔をしていながらアメリカ人と名乗っていた彼らは摩訶不思議だったに違いありません。