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成績

一つ注釈というか注意すべき点があります。前回、前々回と説明した成績に大きく関わる課題、IAやIOP、そして最終試験やEE、TOKと言ったものは全てIB専門の機関に所属している人が採点します。もう少し細かく説明すると、これらの課題は担当の教師からIB採点の専門機関のような所に送られ、そこに所属している人が採点します。もちろん学校の先生も採点をするのですが、これはあくまで参考の点数で本当の点数、つまり成績表に乗る点数はそのIBの専門家が付けます。IAやEEなどはライティングなどでそのライティングをそのまま向こうに転送するだけですが、IOPやIO、TOKなどはプレゼンテーションなので、内容は録画され、プレゼンと共に向こうに送る手筈となっています。

IBは十一年生と十二年生の二年間で修了するプログラムです。その二年の猶予の中でいつIAやIOを行うかは先生に委ねられるのですが、それが終わった都度送るのではなく、十二年生の最終試験が終わった段階で一斉に送られます。成績表というのは十一年生は中間試験の後(十二月)と期末試験の後(五月)の二回、十二年生では中間試験後に一回生徒に渡されますが、それは先生たちがつけたプレディクテッドグレード、つまりこれぐらいの点数をもらえるだろうと予想されたものであり、公式のものではありません。公式のものは一回、十二年生の期末試験を終えた後、IB本部から直接届きます。だいたい六月か七月ごろだと思います。

ここで一つ考えてみてください。十二年生の七月ごろに成績表が届きます。しかしその頃にはすでに大学入学を申請する期限はとっくに過ぎています。というのも海外の大学は九月始まり。申し込みの期限は遅くて二月には締め切られてしまいます。ではどうするのか。私は経験していないので知りませんが、日本の大学を希望する人も似たような問題に直面するのではないでしょうか。海外の大学を希望する場合は、大学の申し込みは十一年生の後期には始めなければいけません。つまり十一年生の後期にはある程度自分の行きたい大学を選ばなければなりません。そのため学校では頻繁に様々な大学の説明会が行われ、十一年生や十二年生、十年生の人たちも出席していました。

さて、十一年生の段階でするべきことは基本的に志望大学をある程度決めておくことです。そしてそれをユニバーシティーカウンセラーと呼ばれるいわば進路相談を専門に行う先生に報告します。彼は十一年生、十二年生の全ての生徒の進路を管理しており、出願に必要な書類を教えてくれたりやそもそも自分にあった大学はどこなのかなどについてのアドバイスをくれます。そしてもう一つ彼には大事な役割があります。それがプレディクテッドグレードを大学に送ることです。大学進学の申請は自分たちで行うのですが、それはあくまで志望理由書や先生からの推薦書などの書類だけです。大学はそれらの書類、および学校から直接送られた十一年生最後のプレディクテッドグレードを元にこの生徒の入学を許可するか審査します。十二年生の最後でIB本部から受け取れる正式の成績表ももちろん大学に直接送られるのですが、これはあくまで後付けに過ぎません。つまり何が言いたいかというと十一年生の成績次第で今後の進路が決まります。となると十一年生の成績があまり良くなければ、十二年生でいくら頑張っても自分の志望した大学に入れない可能性が高くなります。しかし十一年生で頑張ったとしても十二年生で成績が一気に落ちれば、内定取り消しもありうるので、十二年生でも気は抜かないで欲しい。

私の世代はコロナ流行と被り、前代未聞の最終試験が中止となりました。おそらくこれが最初で最後の事例と思われます。というのもIBでもパソコンで試験を行うシステムが2022年から導入されることになります。これにより世界がどんな状況になろうとも試験中止はなくなるわけです。

最終試験がなくなることがいいことに聞こえるかもしれませんが、実際は悪いことでありました。IBの成績を付ける上でもっとも重要視されるのが最終試験である。成績の約70〜80%は最終試験の結果が反映されます。それが取り消しになるということは普段学校で行なっていた小さな課題や宿題、それこそIAやIOP、IOがもろに成績に反映することになります。つまりIAやIOPがうまくいかなかった人にとって成績を挽回するチャンスが失われてしまったわけです。十一年生でのプレディクテッドグレードは十二年生の最終試験を模した模擬試験の結果が大いに反映されています。その模擬試験でいい成績を残せば、プレディクテッドグレードも上がり、その成績が大学へ送られ、審査されます。大学はその成績を見てその生徒の入学を許可すると思います。しかし十二年生の時に、最終試験ではなく、普段の授業でやった課題や宿題がもろに反映された正式な成績表が大学に渡る。もしその生徒が普段の課題でいい点数を取っていなければ、その成績表は十一年生のプレディクテッドグレードより大幅に低いものとなる。もしその点数が大学が示しているIBの最低必要点数に達していなければその生徒の入学内定を見直される可能性も出るわけです。事実、私の学年では十一年生の成績と比べて十点以上下がった人もいて、大学の内定を取り消しにされた生徒も見られました。四十五点満点の成績のマイナス十点は非常に大きいです。そのため私の学校ではIB本部に対し大規模な署名運動が行われ、採点基準を見直すよう要請したらしいです。私はそこまでの点数の差がなかったのでその運動には参加しませんでした。

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