表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/174

人生最初で最後の入学試験

さてアルファベットの書き方、そして小学生でもわかるような単語を複数覚えたところで試験日が来てしまいました。親は接続詞や”なぜ”や”誰”などの疑問詞も覚えさせようとしていたらしいが、覚えきれなかった。そんな絶望的な状況下で私は試験に臨んだのでした。試験場は私がこれから通う予定の学校。小、中、高、大の一貫校。住んでいた都市で指折りの有名で歴史ある学校。その小学校国際部に入学しようとしていた。試験会場、私が覚えている限りそこは大学の講師がレククチャーをする部屋、映画館や劇場などで目にする、階段が何十段もあり、その段一列一列に椅子と机がずら〜と並んでいるような部屋だった気がします。

そこに一席ずつ空けて座る形でした。私が何段目に座ったのかは覚えていませんでしたが、壁際だったのを覚えています。運命の最初で最後の入学試験が始まりました。アルファベットを覚えたての人には到底不可能に近いはずの試験、しかし私はなんとか覚えた疑問詞から何を答えればいいかを推測しました。まあただそれにも限度はありました。当然ほとんどデタラメだったと思います。多分覚えたての単語をただ乱用していたと思います。ただ空欄で出しては行けないと親に言われていたので、とにかくなんでも書いてやろうと思ったに違いないと思います。前途真暗な試験で唯一私に光を当ててくれたのが算数の問題でした。算数の問題は数字と記号、それは万国共通です。計算問題だけなら英語ができない私でも理解ができました。そう考えると算数とか数学ってなんかすごいですよね。何よりインターの算数は日本の学校で習う数学よりもだいぶ遅れています。そのため算数は楽に突破できました。まあしかし文章問題となると…。しかし文章問題が全体の一割ほどしかなかったのが幸いだったと思います。

試験が何時間かは覚えていませんが、私はそもそも問題のほとんどを理解していません。当然ほぼデタラメの回答を記入した私は一時間とかからず終わってしまっていたと思います。私は暇を持て余しました。かと言って周りを見渡すとみんな紙に向かって真剣に何かを書いています。今その場にいれば間違いなくそれを見るだけで緊張が走ったと思いますが、当時のわたしはそんな異様な空気感も感じ取れなかったでしょう。私は人に見られるのがあまり好きではありません。当然今試験が終わったと言って部屋を退出すれば、もう終わったのかと注目を浴びてしまう。なら他の人が終わって部屋を去るまで待とうと思いました。さあ、しかしその間どうする。見直しもすぐに終わってしまった私のとった行動は一人遊びでした。今考えたら恥ずかしいことこの上ないことをしたと思っています。おそらく誰よりも早く退出するより注目を浴びてただろうと思います。私の記憶が正しければ私は電車ごっこで遊んでいました。というのも持参した筆箱には中国で買った地下鉄の駅名が書かれたキーホルダーがついていました。私はそれを駅、そして持っていた鉛筆を電車に見立てて遊びました。一人遊びは慣れているとはいえ、所詮は小三、つい熱中してしまい、いつの間にか声が出ていました。誰の邪魔にもならないよう静かにしていようと思っていたはずなのに、電車が停車する音、電車の扉が開く音、駅員のアナウンスなどを声に出していました。当然、周りの人は気が散ると思ったに違いないと思いますが、私はもう電車ごっこに没頭してしまい、周りの反応など気にも止めていませんでした。私の一人遊びは徐々にエスカレートしていき、鉛筆がそばの壁を走るようになっていました。当然試験官の目にも止まったと思います。いつの間にか試験を終えて退出するものが現れ始めました。しかし私は夢中で電車ごっこを楽しみました。ついに試験官が私の前に立ち、何か言葉を発しました。私は理解できませんでしたがとりあえず頷きました。すると試験官はドアの方を指差しました。私は言われるがまま、筆箱に筆記用具をしまい、カバンを持って退出しました。表で私の帰りを待っていた親は”ずいぶん早かったね。ちゃんとできた?”と聞いてきました。私はまあまあかなと曖昧にしかし自慢げに答えました。もし読者の中にあの場で試験を受けていた方がいて、誰かがうるさくしていて試験に集中できず、落ちてしまった方がいましたら、十年越しぐらいにここに謝罪申し上げます。本当にご迷惑をおかけいたしました。過去の自分に代わり、今私が深くお詫びいたします。本当に申し訳ありませんでした。


試験結果がどうだか気になりますか。”もちろん”合格でした。正直なんでそうなったのか今でもわかりません。私の人生における七不思議の一つかもしれません。もしかしたら私の電車ごっこを見て、この子は天才なのかもしれないと学校職員の誰かが思い込んだのかもしれません。ここではっきり宣言します。買いかぶりすぎです。私は常識を知らない愚か者です。しかしおかげで私は無事インターに通うことになりました。

みなさん、あけましておめでとうございます。完全な私欲(孤独からの解放と自分のことをもっと褒めて欲しいという承認欲求)のために書いているこのエッセイを読んでいただいてありがとうございます。読んでくれている人がいるだけで欲求が満たされている気がします。実際今は通常の小説はストックを週一回投稿しているだけなので、今一番力を入れているのがこれです。これからも続けてまいりますのでよろしかったらお付き合いください。それでは今年もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ