十年生
十年生、日本の学校でいう高校生となると、将来のため学業に力を入れるようになりました。選択科目にしても自分の将来のことを考えて取るようになった。必須科目は変わらず、英語、社会、科学、数学。ちなみに数学は必須科目ですが、アドバンスとスタンダードは選ぶことができました。基本的に九年生の時にアドバンスにいたものはそのままアドバンスに、そうでないと九年生の時にやったことを十年生でも繰り返すことになるので。なので私は仕方なくアドバンスを選びました。選択科目は九年生と同様、日本語と音楽のセットか美術。クラスメイトの中には将来日本の大学に行きたいがためセットの方を選んだという人も、逆に日本の大学に進まないからという理由で美術を選ぶものもいました。
そしてもう一つ選択科目が増えました。それが物理か生物(学)か。科学は必須科目でそれにプラスアルファでどちらかを選ばなければいけませんでした。というのも海外の大学で理数系に進む場合は必ず高校時代に数学のアドバンスレベルと生物、物理、化学のいずれかを取っていなければいけないのです。そういう人たちのために用意された選択科目でした。分かりづらい人にもう少し詳しく説明すると必須科目の科学。結構基礎的なもので、それだけを学んでいては大学で理数系に進めません。高校のうちにもう少し専門的なことを学んでおかなければならないのです。いくらここの学校が日本にあるからといっても、カナダの高校の教育システムを取り入れているので、将来英語圏の大学に進みやすいようにこういう仕様にしたんだと思います。
化学がなかったのは単に教えられる先生がいなかったからだと思います。基本的に理数系の道に進む生徒らは物理、その他は生物と相場が決まっています。そもそも物理は数学の派生(私個人の見解です)なので、数学が得意でないと難しいと思います。インターは基本数学のレベルが低く、数学のアドバンスクラスに入っている人も少ない。というわけで大体の人が生物を取ります。生物を取る人は単純に数学が苦手な人、将来文系の道を歩む人です。ただ一つ、生物を取る上で必要なスキルがあります。もちろん必須ではないありませんが、ないと厳しいと思います。それがない故に理系でもないのに物理を取った人も多数いました。それが記憶力です。生物は覚えるものが多い。ミトコンドリアなどの細胞器官、肝臓、腎臓、膵臓などの内臓。食べ物を消化する酵素、そしてその酵素がどんな栄養素を分解するか。その他状態の変化にも一つ一つ名前がついています。それを覚えなければなりません。記憶力には多少自信があったものの、なかなか大変でした。何より物理もそうですが生物も実は十年生と十二年生が一緒に授業を受けていました。もちろん高校としては高校三年生を一番気にかけているので授業内容は彼らに合わせたものだったので、科学で基礎的なことしか習ってこなかった私たちには難しく、最初のテストでは十年生の何人かは赤点、成績が優秀な人たちも赤点ギリギリと劣勢に立たされていました。私も三番目ぐらいのテストでようやく自分で納得がいく点数をもらいました。
というわけで十年生では九年生から一教科増えて全八教科となりました。十年生の時の成績もなかなか良かったと個人的には満足しています。前から得意だった日本語や社会はもちろん、新しく追加された生物も最初こそつまずいていましたが、だんだんと授業に慣れていきました。十年生の中では一二を争えるぐらいの成績を収めていたと自負しています。科学に関してはレベルの高い生物を受けているためか、いくらか簡単に思えました。英語、体育、音楽は特別な変化もなく、九年生の時の成績をキープしました。問題はやはり数学であります。二年分の数学をこなした私でしたが、十一年生の数学は十年生のそれとは別ものだった。あの優しく、教えるのが非常にうまかった先生がいなくなってしまったからでしょうか。私の成績が急激に落ちました。塾で数学を習っている日本人や、将来大学で数学を専攻する韓国人集団からどんどんと離されました。幸い私のように単なる数学がちょっとできるからアドバンスクラスに入っている人がもう二人ほどいたので、その子たちと結託してなんとか互いを励まし合いました。おそらくこの時からだと思います、数学が本当に嫌いになり、もう一生やりたくないと思い始めたのは。




