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鮮明に残る最古の思い出

さて今から紹介するのは少し遡って一年生でまだ日本にいた時の出来事です。というのも先ほど、一年生から中国に引っ越したといいましたが、厳密に言うと小学校一年生の一学期は日本にいて、二学期に転向したと言う形になります。そんな数ヶ月間のしかなかった思い出ですが、それでも十数年経った今でも忘れていない印象に残った出来事でした。

それは下校の際の出来事です。小学一年生ですからやはり、先生の監視の目と言いましょうか、それが一番行き届いていたとおもいます。下校の時も先生が連れ添って知らない人についていかないように、横断歩道を安全に渡るように、家まで送り届けてくれていたのです。もちろん先生一人に対し生徒一人ではなく、家が近所同士もしくは変え入り道が途中まで同じ同士でグループ分けされていました。

そして先生たちは一眼でどの子がどのグループに属しているかがわかるように学校指定の帽子、それについた名札のとこに色のついたシールで判別します。私はちなみに水色だったのを覚えています。

小学一年生初日の下校の時、校庭に先生たちが紙を持って横に並んでいるのが見え、その紙にはそれぞれ行き先が書いてありました。

私はそもそも先生が生徒たちと一緒に下校するということも知らなかったし、(もしかしたら説明を受けていたのかもしれないが聞いてなかったかもしれない)、自分の帽子にその紙に貼られたシールと同じものが貼られていることも知利ませんでした。

他の学年の生徒たちは校舎から直接校門に向かっていた。

私は当時から他の人と一緒に行動するのが苦手だったため、彼らに紛れて一人で下校しようとしたのですが、そのおどおどしい挙動不審な態度が先生の目に留まったのか、はたまた帽子につけられたシールを見たためか声をかけられました。

しかしその先生は引き止めるだけで私がどのグループに属するのか誘導はしてくれませんでした。

仕方なく私は自分でどのグループに属するべきなのか考えました。小学一年生の登校初日、全員と初対面で他の同級生がどこに住んでいるのかは知らない。となれば手がかりは先生たちが持っている紙に書かれた言葉だと思いました。

その紙には行く方面場所が書かれていました。そこで私は自分の家の周りに何があるのか考え、そしてそれに該当するグループはどれか。

すると黄色いシールが貼られた紙に明らかに自分の知っている場所の名前があった。それはその当時できたばかりの大型ショッピングモールの名前、「イオン」でした。「イオン」は私の家から自転車で十分くらいのところにありました。毎週末よく家族で買い物に出かけていたのでその名前は見慣れていました。もちろん、下校は徒歩なのだから、私の行くべき道とは少し離れているのはわかっていましたが、他に目に止まる場所がなかったので私はこれだと確信し、黄色のグループに入りました。

先週話しましたが私は基本自分から人に助けを求めません。こんなことも知らないのと思われるかもしれないといつも考えてしまうのです。なので基本自分の導き出した結論に従います。それが間違っていて周りの人から笑われたこともあります。本末転倒ですよね。

グループはそれぞれ一列に並んでいて、列の先頭で紙を持っている人と列の最後尾にいる二人の教師がいました。そして後ろにいた教師が私に目をつけた。なぜなら明らかに色の違うシール貼った子が並んでいたのですから。

その先生は名前は忘れましたが太って眼鏡をかけたおじさんだったのを覚えている。

その先生が私に声をかけました。「帽子の色が違うよ、君はあっちじゃないのか」と。

指さされた方はもちろん水色のグループ。彼は続けて「団地だよ」と言いました。私はその場所がピンと来ませんでした。それもそのはず私は、その場所にいったこともなかったし、存在も知らなかったのですから。

その団地は我が家のさらに先に五分ほどいったところにあります。

ここで私の家と学校をつなぐ道をできるだけわかりやすく説明したいと思います。

学校の正門を出ると正面には家がある。つまり道は左右に分かれています。右へ行く道は大通りとつながっています。先ほどの大型ショッピングモールもこの大通り沿いにある。多くの生徒は右の道が下校ルートになっています。当然私も。正門を出て右に曲がる。まっすぐ進むと大通りに出る。大通りを出て左を向けば、その通りの突き当たりにイオンがある。大通りを突っ切ると住宅街があり、黄色のグループはその住宅街に住んでいる子達だった。私はというと、大通りには向かわずその途中にある左へ伸びている道へ曲がる。そして突き当たりでまた左に曲がる。その道をまっすぐ進むと先ほどの団地方面なのだが、少し進むと右手に空き地と右へ曲がる道があり、私の家はその道を曲がってすぐのところにあります。ここまでどんなに遅くても十分で着きます。

さて、失敗談に戻りましょう。

私は団地がなんなのか分かりませんでした。君の列は団地の方じゃないのかと言われてもその団地が自分の家の方面ということを知らない自分は断固拒否をして黄色い列にとどまりました。

先生も親が間違えたのかのかなと諦めました。

ついに列が動き出した。一列に並んだ生徒を挟むように先頭と最後尾に先生がいました。私はその最後尾にいた先生の一歩手前を歩いていた。そして正門を出てすぐ曲がるはずの道を大通り方面にまっすぐいった列を見て、私は思わず立ち止まりました。前の生徒との距離がどんどんと離れて行き、最後尾の女の先生が私に声をかけた。どうしたの、と。

家こっちと小声で言いながら指をさしたのを覚えています。

先生が私に家は本当にこっちにあるのかと確認を取ると、先頭にいる先生に声をかけた。先ほどの太った男の先生でした。「やはり、団地方面の子だったか」というとその女の先生に私に付き添うよういった。

私は先生と手を繋いで、列から離れ、列はそのまま大通りの方へ向かいました。

その先生は私の家がどこにあるのか知らない。突き当たり、道が分かれた時に毎度毎度止まり、私の家はどっちかと聞いてきた。

小学一年生とはいえ徒歩十分、走れば五分の道のりを当時の私は完璧に覚えているはずだったが、なんせいつもは家族と一緒だったので、不安になるのも無理はない。私は戸惑いながらも慎重に辺りを見回し、見慣れている道を指差しました。この際私はなんどもこの道が正しいと自分に言い聞かせていたと思います。

非常に長い時間に感じました。私の気持ちを理解したのか先生は何気ない会話で気を紛らわそうとしてくれたのを覚えています。何を話したのかは正直覚えていませんが、不安がいくらか取り除かれたことは覚えていました。そして最後の右へ曲がる道を指差したあと、私は次の危機に直面した。家がどこだかわからなかったのです。

最後の右へ曲がったら家はすぐだと先ほど説明しましたが、その通りです。しかしその道は両側全てに家が軒並みを揃えて建っています。道は覚えていても、自分の家がどんな形をしていたか、屋根はどんな色だったかいまいち覚えていなかったのです。ただ、私の家は道の右側にあるのだけは知っていました。

際ほど説明したようにその道の右側手前には空き地が広がっています。その奥に左側と同じような家屋がずらりと並んでいる。もちろん私の家は空き地ではないので前へ進みました。空き地が終わって家が見えてくると、一件一件立ち止まり自分の記憶と照らし合わせました。表札は出ていましたが当時の私は漢字が読めません。しらみつぶしに立ち止まって確認するほかありませんでした。ようやく三件ほど過ぎたところで自分の家がここだと理解し、なんとか先生に連れられてたどり着きました。達成感などはありませんでしたが安心感でようやく胸の何かが落ちた感触に浸りました。先生がインターホンを押し、その日たまたま遊びに来ていた祖母が出迎えてくれたのを覚えています。先生が事情を話し、祖母がお礼を言った。先生が帰ってから、祖母が褒めてくれたのを覚えています。さてこの失敗談から何が言いたいかというとこれが発端で私は住宅街を一人で歩くのをあまり好かなくなったということです。住宅街を歩いているとどこを見ても同じような家で特別印象に残るような建物がないので、自分がどこにいるかわからなくなり、迷ってしまうのではないかと不安を感じるようになったです。

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