貰えなかった温もりを求めて
水の平野に身を投げる。
波に全てを委ね、下へ下へと落ちていく。
目を開けば緑色の海と白色の筋がこちらを包み込む。
体が止まる。砂が制服の上に覆う。
息が苦しい。体が、脳が、動物としての本能が、生きたい生きたいと叫ぶ。
そんな気持ちを押さえ込み、目を閉じる。
光に焼かれた海水が、体に纏わり心地よい。
そして眠気が襲いかかり、心がだんだん気持ちよくなってくる。
雲に包まれたかのような気持ちが僕の心を錯覚させる。
ああ、もう何も気にしないんでいいんだ。
そう思った瞬間、強い力が僕の体を押し上げる。
丘の上、陸地へと連れていかれる。
そして最後、何も知らない人達が僕に向かって走り寄るのだ。
また、どこにも行けなかったのだ。
処女作です。現実世界での事件、筆者の生活などとは関係ありません。